世界の眺めと青き風
雪がブーツの下でかき分けられる音だけが、村の入口に近づくカインの耳に届いていた。
その柔らかな軋みが、思考を溺れさせていた。
ふと意識が戻った瞬間、ドアの両側に茶色の植木鉢が二つ置かれた小さな小屋が目に入った。赤みがかったサクラソウが植えられていた。丁寧に手をかけられているのが分かった。
近づきながら頭を振った。思考が少し軽くなっていくのを感じた。
(カゲヤの属性を感じられたうちに生かさなければ。シラミネに体内マナ制御を教えると約束したことも忘れるな)
小屋に着いて、小さな階段を上り、ドアの前で止まった。
コハルがいつも自分の部屋に来る前に三度ノックしていたことを思い出し、同じようにした。
「少々お待ちを!」
中から聞こえた声は穏やかで優しかった。少しして、穏やかな雰囲気を持つ若いネサリの女性がドアを開けた。村のほとんどの人と同じ茶色の髪が、肩の辺りまで伸びている。
「アサヒさん、お久しぶりですね。夫から回復されたと聞いていました」
(みんなと同じように話しかけてくる。カゲヤと年が近そうなのに)
「おはようございます。シラミネはいますか」
「おはようございます?」と彼女は首を傾けた。「聖花道で覚えた挨拶ですか?」
戸惑った顔を見て、カインはすぐに修正した。
「ああ……はい、使い慣れてしまって」
「一つ新しいことを知りました」と彼女はかすかに微笑んだ。「いますよ。少し待っていてください」
くるりと向きを変えて、階段の方へ歩いていった。
「シラミネ、アサヒさんがいらしたわ」
(シラミネ……?待って、なぜ苗字で呼んでいるんだ。コハルは怒っている時以外は大吾と呼んでいるのに)
シラミネが下りてきて妻に礼を言った。彼女はうなずくだけで二階へ上がっていった。
「アサヒ、こんなに早く来るとは。昼食後に会う約束だったと思ったが」
「考えたんだが、一日を無駄にしたくない。時間を惜しまないと」
シラミネが階段の方へ少しだけ顔を向けた。
「……そうだな。少し待ってくれ」
上がって、しばらくしてから戻ってきた。
「どこへ行く、アサヒ?」
「村の近くのあの小さな丘はどうかと思って。秘密にしておくために」
「悪くない。よく行ったな、あそこへ」
シラミネが丘を眺めながらため息をついた。
「行こう、アサヒ。何を教えてくれるのか楽しみだ」
カインがうなずき、二人で丘へ向かって歩き始めた。
「あの場所が恋しかった。お前が聖花道に行ってから、一度も戻っていないんだ」
「そうか」
(なぜ、と聞いたら傷つけるかもしれない)
「お前も恋しかったか?」
「ああ……」
(恋しいものはたくさんある)
村を出て、丘まで歩いた。着くと、シラミネが一つの岩へ向かった。
刻まれた跡を指でなぞった。
「この丘に俺たちがつけた名前、まだ残ってる。"世界の眺め"」
笑いながらカゲヤを振り返った。
「ここが恋しかった。大きくなるにつれて、来られる機会が減っていって。一つ告白があるんだ、カゲヤ……誰も連れてこないって約束したのに、妻を連れてこようとしたことがあった」
(変な約束だな。誰でもこの丘には来られるのに。それにいきなりカゲヤって呼んだ)
「気にするな。一緒にこの場所を分かち合いたかったんだろう」
シラミネは丘の端まで歩いて、眼下に小さく見える村を眺め始めた。
「そうんだ。でも結局来たがらなかった。あの日から、距離を置くようになった。気づいてたか?」
カインは右目を手で覆った。
(また……)
左目でシラミネを見た。彼はまだ村を見ていた。
(夫婦の問題を話しに来る相手として、俺は最も向いていない。ましてや今は)
顔を覆っていた手を下ろしてから、口を開いた。
「訓練しながら考えたらいい」
シラミネは顔を下に向けてから向き直り、カインの方へ歩いてきた。
「分かった。俺が覚えた練習を見せる。お前は俺の響導の息吹が正しいか確認してくれ」
カインは、シラミネがただうなずいたまま地面を見続けているのを観察した。
「俺から始める」
シラミネがもう一度うなずいた。こちらを向かないまま。
(こいつ……集中できないのか。気になるなら言えばいいのに)
カインは空を見上げた。雲がゆっくり流れていた。何度か深呼吸をした。
「技を説明する。練習しながら話を聞かせてくれていい」
「本当に!?」
「ああ、座って脚を組め」
カインがわずかにうめくように言った。
座ったところで、カインが基本的な技の説明を始めた。カゲヤの属性を感じた時、その感覚が核から生まれてそのまま体に解放されていったことに気づいていた。
ネサリは体の中ではなく体の外でマナを制御するのだろうと仮定して、自分がどうマナを動かすかをシラミネに教えた。
説明し終えると、シラミネは目を閉じ、カインが教えた呼吸をした。しかし集中できなかった。
「状況は良くなったんだが、ムスビガリから、ノゾミが以前と変わってしまって」
「気を散らすな」
「え?でもお前が……」
「続けて話してもいい。でも訓練には集中しろ」
シラミネが鼻を鳴らしたが、指示には従った。
(ムスビガリ……コハルがその言葉を言った時も、同じ重さを感じた)
「難しい……」
気温がわずかに上がるのを感じてカインが目を細めた。
「属性に繋ごうとするな。核からマナを制御しろ。言うことを聞かせて、行かせたいところへ動かせ」
シラミネの閉じた瞼が揺れながら、続けていた。マナが皮膚の外側に滲み出ていた。
「マナを出しているんじゃない。体の中で動かせ」
「できない」
カインは腕を組んで観察した。
(簡単だと思っていた。何の問題もなく炎を操っているのを見ていたから)
「なぜできないんだ?何が引っかかっている?」
シラミネが両腕を後ろに投げて体を預けながら、目を開けた。
「何が引っかかっているかって?やったことがないんだ。いつもやることと違う」
「もっと詳しく、シラミネ」
不満を飲み込んだため息の後、シラミネが続けた。
「まず自分のマナを感じて、次に広げて、それから繋ぐ」
(それが内真火だとほぼ確信している)
「響導の息吹をやる時が、制御と操作をする時だ。でもそれはもう体の外に出てから。なぜその前にやれと言うのか分からない」
カインの目と口が同時にゆっくり開いた。腕が解けた。
「待って……」
(俺も……似たようなことをしていたんじゃないか)
カインが手を一枚、顔の正面に持ち上げた。
(俺たちはまず体の中でマナを制御して、それを武器へ流す。そして俺は……あの爆発技を自分で見つけた)
「シラミネ……マナを操作するとき……一点に集めたいような感じか?」
「当たり前だろう」
カインの手が右目から数センチのところで止まり、唇に笑みが浮かんだ。
「試してみる」
同じ姿勢のまま、カインが両目を閉じた。
(マナを感じろ、広げろ)
数秒後、胸から湧き出たあの風を再び感じた。
(もっと、もっと広げろ)
少しずつ、エメラルドグリーンの小さな風の筋が胴体の周りを包み始めた。カインの目はシラミネへ向いていたが、その視線に彼は映っていなかった。
(繋がれ……この感覚と一つになれ。欲しくなくても関係ない。使う)
カゲヤの顔に浮かんだ表情を、シラミネは見たことがなかった。ゆっくりと立ち上がりながら、目が離せなかった。
突風が少し強くなり、カゲヤの髪と服を揺らした。
(そうだ……感じられる。もっと大きくなれば、制御できれば。ようやく帰るために必要なものが手に入る)
風の筋が制御を外れ、体の周りを回り始めた。シラミネが何かを言おうとしているのに、カインには聞こえなかった。
風がより急いで回り始めた。
「カゲヤ!核を無理に使うな!」
風の音がシラミネの声を飲み込んだ。カゲヤのマナを消耗させていることに気づかないまま、カインは笑みを深めた。
(もっと回せ。風が言うことを聞いている)
さらにマナを無理に絞り出そうとした瞬間、核に鋭い痛みが走り、片手を胸に当てた。
風が激しく散って、シラミネを地面へ押した。だからシラミネは気づかなかった——風と一緒に蒸発した、藍色のマナの細い筋を。
「うっ……!」
カインが地面へ崩れ、片膝でかろうじて止まった。表情が一気に変わった。シラミネがすぐ立ち上がって駆け寄った。
「大丈夫か!?」
息を切らしながら、カインが手を上げた。
「ああ……大丈夫だ」
こちらを向かないまま立ち上がり、呼吸を整え始めた。
「何をしていたんだ。回復してからまだそれほど経っていない。そんなふうにマナを無理に使ったら駄目だ」
「分かってる。もうしない」
シラミネが黙った。カインも地面を見たまま、黙っていた。
「座ろう。少し休んだ方がいい」
二人で丘の端に腰を下ろした。眼下に村が広がっていた。
カインの手が震えていたので、腕を組んで隠した。
(またカゲヤの体に無理をさせた。マナがいつ切れるか、本当に分かりにくい)
「もう大丈夫か」と数分の沈黙の後、シラミネが言った。
(俺の気のせいじゃなかった……確かに自分のマナを感じた)
「カゲヤ?」
「ああ、大丈夫だ。気にするな」
「もうやるな。マナを無理に使ったら、体力は戻らないんだぞ」
(そんなこと、お前より知っている)
時間が経っていたことに気づかないまま、カインが村を眺めると、狩人たちが戻ってくるのが見えた。大吾が先頭に立っていた。
それぞれが獲物を担いでいた。イワカミと大吾が鹿を一頭ずつ。残りの者たちはかなり大きな白い狼を三頭、長い木に縛りつけて担いでいた。
「今日もいい狩りだったな」シラミネが村を指差しながら言った。
カインの目が小屋を数えた。村の人口を大まかに計算しながら。
(これが普通のはずがない。大吾が隊商と帰る前、肉はそれほど食べられなかった。もし当たり前なら、余るほどあるはずだ)
若者たちが地面へ狼を置くのへ目を向けた。
(捕食者がまた増えている……狩りじゃなく、魔物の掃討をしに出ているように見える)
「普通なのか……」
(待て……これは聞けるのか)
「ん、何が普通?」
カインが少し間を置いてから続けた。
「俺がいなかったこの一年、お前は何度狩りに出た?」
「俺は……」シラミネが目を逸らして、それから自分の家の方へ視線を向けた。「十分じゃなかった」
その表情に気づいて、カインはその視線を追い、小屋に辿り着いた。
(奥さんのこととどう繋がっているんだ)
息を一つついてから、カインが立ち上がった。
「気にするな。訓練を続けるか?」
「……いや。もう家に戻らないと」
(家に、か)
「分かった。じゃあ明日の朝食後にここで」
「ああ。戻ろう、カゲヤ」
シラミネが立ち上がり、服を払ってからカインの後について下り始めた。
(まだ理解できていないことがたくさんある。目立たないためには、全部を知らないといけない)
村に近づくにつれ、働く人々の声と仕留めた獲物を処理する音が大きくなってきた。
その喧騒の中に、大吾の指示が通っていた。声を荒げることなく、ただ確かに。
(何事もなかったように振る舞って入らないといけない。昨日のことについて、まだ大吾から何も言われていない)
村に入ると、シラミネが足を止めてカインの方を向いた。
「またな、アサヒ」
「マナがお前を守るように」シラミネが言ってから背を向けて、家へ歩いていった。
カインは彼が小屋へ入るまで見送ってから、カゲヤの家へ向かって歩き始めた。
雪の道の途中に解体場があった。中では若者たちが狼に取り組んでいた。
外では、イワカミが鹿の一頭をフックにすでにかけて作業していた。その隣で大吾が大きな木の板の上でもう一頭に向かっていた。
(ここには近づかない)
ゆっくりとした動きで、その場所から距離を取ろうとした。
イワカミが額を小さな布で拭いた瞬間にカゲヤの姿に気づき、顎の動きで大吾へ伝えた。
大吾は板に置いていた刃物を置いて、息子の方へ歩き始めた。
「カゲヤ、来い」
カインが足を止めた。体全体にくすぐったいような感覚が走り、諦めたような表情になった。
「話がある」




