↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネテリア  作者: Netheria
23/44

繰り返される過ち

朝の光は、もう黄みを帯びた色に変わりきっていた。




 カインはとっくに目が覚めていた。




(この体、朝が早すぎて困る)




(おまけに夜も早くに眠くなる。最悪だ)




 木の箸が指と喧嘩をしていた。昨夜のことを思い返しながら、その細い棒を見つめた。隊商の後、家に戻ってから起きたことを。




 家に入ると、コハルは籠を机に置くよう言った。大吾は重い荷物を隣の部屋に運んだ。




 大吾は妻に近づいた。




「兎を調理してくれ」




 コハルはすでに下ごしらえされた肉を見て、微笑んだ。




「村に着く前に仕留めてきたのね」




「夕食ができたら戻る」




 大吾はドアをくぐって出ていき、家からほんの数歩のところにある物置へと真っ直ぐ向かった。




 コハルは料理を始めた。ホタルが口ずさんでいるのをカインが耳にしたのと、同じ旋律を鼻歌にしながら。




「上にいます」カインは一段目に足をかけながら言った。




 コハルは兎を持ち上げ、カインを見た。その顔には誇らしげな輝きがあった。




 カインは笑い返した。この肉が好きで嬉しいのだと理解して。




(塩辛くならなければいいが。毎日飲んでいるあのスープみたいに)




 部屋に戻って訓練を続けようと上がりかけたところで、ホタルが廊下で呼び止めた。




「お兄ちゃん、一緒に遊ぼう?」




 小さな手がクマの手を動かして、ついてくるよう誘った。




「ごめん、ちょっとほかにしたいことがあって」カインは目を逸らしながら答えた。




 ホタルは顔を伏せた。カインは自分の部屋のドア、その敷居の手前で足を止めた。




 遠ざかるホタルの足音が一歩ごとに、手のひらと背中に冷たいものを走らせた。




 後悔がコハルの声と同じ鋭さで、彼を叱りつけるようだった。




「何して遊ぶ?」




 ホタルは弾けるように振り返り、小さく跳ねた。




「ほら、ほら。クマがね、狩りに行くんだよ」




 その姿がわずかにぼやけた。カインは一瞬、幼い頃のナタンの面影を重ねた。




 ついていくと、ホタルの部屋があった。質素なベッドと、床に散らばった木の人形。ぬいぐるみはクマだけだった。




 小さな女の子が床に膝をついた。カインも同じようにした。




 最初はどうすればいいのか分からず、ただホタルの流れに乗るだけだった。




 少しすると、カインは怪物の声を出し始めた。クマが一体ずつ仕留めていく。ホタルはクマがお父さんと同じくらい強いと言った。




 カインは指輪があるはずの指を押さえた。今度は優しく。指先が素肌をなでて、金属の輪郭を描いた。あるはずのない輪郭を。




(そうすべきじゃなかった。俺は……すまない)




 ホタルが不思議そうに見てきたとき、カインはかろうじて笑ってみせた。一緒に遊びながら、あの記憶を追い払い、ゲートに向かって走り出したいという焦りを、縛り続けた。




 時間がようやく動き出したとき、コハルの声が届いた。




「夕食できたよ。お父さんを呼びに行く間に下りてきて」




 ホタルは今までで一番元気よく立ち上がった。カインは考えに沈んだまま後に続いた。




 二人が席についた。ホタルは足をぶらぶらさせ、カインは机を眺めた。




 コハルが入ってきて、大吾が続いた。全員が揃うと、夕食が並べられた。




 深い椀に、また同じスープが入っていた。カインはため息をついた。だが今日は見たことのない野菜が入っていた。




 コハルは微笑みながら、もう一枚の平たい皿を置いた。同じ削り出しの木。その上には米と麦を敷いた床に、火で炙った肉の一切れと、切り分けられたカブが載っていた。




 二つの皿から立ち上る香りは違った。どちらも香辛料で味つけされていた。




 量は多くない。配分された食事だ。それでもカインは、いつもより手をかけて作られたことが分かった。




 籠をちらりと見て、直感を確かめた——中身はさほど減っていなかった。




 全員が手を合わせ、目を閉じた。カインはこれを待っていたので、同じタイミングで合わせた。




 大吾が祈りの言葉を唱えた。




「世界のマナに感謝する。命の循環に。去るものは戻り、終わるものは再び始まる」




 コハルが同じ言葉を言うときとは違う、しわがれた重さがその声にあった。




 カインは兎に手を伸ばして、止まった。全員がスープから始めているのに気づいて。




 味は奇妙だった。見たことのない野菜が入っていた。まずくはない。ただやはり、彼には塩辛かった。




 コハルがホタルに食べさせてやる場面があった。ホタルは文句を言いながらもにっこりして、スプーンを受け入れた。




「兎が食べたい、ママ」




「スープを全部飲んだらね、坊や」




 その光景が心に刻もうとしていた。逃げたかった記憶だったから、スープを飲み終えると肉の皿を引き寄せた。




 大吾は黙って食べた。ホタルはスープを飲み干して喜んだ。




 カインは液体でないものには箸を使うべきだと覚えていた——コハルが以前、スプーンで何でもすくっているのを見てそう言ったのだ。




 米は不格好に扱い、兎には突き刺した。




 全員が食事に集中していた。大吾だけが、食べながら時折視線を向けていた。




「ふざけるな、カゲヤ」その声が夕食を断ち切った。




 その言葉にカインは戸惑い、同時に不快感が走った。




(分かってる、分かってるよ。ふざけるなという言葉が嫌いなんだな。何度も思い知らせるな、カゲヤ)




「ふざけてない」肉を一切れ持ち上げながら言った。「お父さんの獲物を、味わってる」




 その言葉と動作が、食卓を静寂で覆った。コハルが動きを止め、ホタルも箸を置いた。




 大吾はゆっくりと、ぶっきらぼうに箸を置いた。




「では礼儀正しく食え。お前は相変わらず、しきたりを敬わない甘やかされた子どもだ」




(どんなしきたりだ?これを正しく使えということか……?)




 カインは歯を食いしばり、机を見つめた。




「正しい使い方を忘れた」




 大吾がゆっくりと息を吐いた。




「言い訳は尽きない」




 カインは箸を強く握り、喉の奥から勝手に生まれかけた謝罪を飲み込んだ。




 立ち上がり、箸を机に落とした。




「俺は一度も言い訳などしていない」ほとんど聞こえないほどの声でつぶやいた。




 カインの目が大吾を捉えた。大吾がこれまで見たことのない強さだった。その視線を受けて、大吾も立ち上がった。




「もういい」カインは言って、背を向け、階段へ向かった。




 大吾が二歩踏み出して口を開こうとした瞬間、手が机を叩く音が二人を止めた。




「今すぐ戻りなさい、カゲヤ!」




 振り返りたくなかった。だがそのトーンが体を回した。




 コハルの表情を見て、血が冷えた。大吾も同じだったのではないかと、横目で確かめた。




「お父さんがこの兎を持ってきたのはあなたのためよ!」彼女は叫んだ。「その気持ちを踏みにじるな!」




 カインの視線が床に落ちた。机へと歩き戻った。一歩ごとに脚が重くなっていくのを感じながら。




 席について、皿を引き寄せた。コハルは大吾の方を向いた。




「あなたも、もう責めないで。ちゃんと食べられるように、私が教える」




「明日を余計に難しくするな」




 大吾は黙って座り、食事を続けた。




 ホタルは固まっていた。コハルが微笑みかけて、全部食べなくていい、兎だけ食べればいいと言い聞かせた。




 夕食はそのままの温度では終わらなかった。カインが作ったと分かっている沈黙の中で続いた。




 大吾が最初に食べ終えて部屋へ引き上げた。カインが続いて、コハルに夕食の礼を言った。




 彼女は朝になったら父にも礼を言うようにと言った。




 上がる前に、箸を一膳手に取って部屋へ持っていった。




 思い返し終えて、カインは指と喧嘩を続けている箸を見た。




(行動で人を傷つけることを、やめなければ……)




(自分の家族にさんざんそれをしてきた。今また、繰り返している)




(もっと自分を抑えなければ)






 コハルの声が思考を断ち切った。




「朝ごはんできてるよ、カゲヤ!」




 箸を引き出しにしまって、台所へ下りた。大吾はすでにそこにいた。大きな斧と、弓を二本、片手剣を一本持っていた。




「はい、どうぞ」コハルが木箱を二つ渡した。




「無理しないで。お父さんの言うことを聞いて、変なことしないように」




 コハルが抱きしめた。




「また怪我して帰ってこないで」




「気をつける」カインは肩に軽く触れながら言った。




 大吾がドアから出ていった。開けたままにして。カインも続いて、振り返りながらポケットに手が伸びた。習慣で。




(そうか、ここには鍵がない)




 大吾に続いて村の外れまで歩いた。




(どこへ行くんだ。狩りだろうと思うが)




 イワカミを見つけた。五人のネサリに囲まれていた。昨日井戸で挨拶してきた若者もいた。




 全員が武器を持っていた——弓、片手剣、短剣。イワカミは大吾と似た形の双頭の斧を持っていた。




 その中に一人、態度が鼻についた者がいた。




「アサヒ、準備はできています。選抜を始められます」




(選抜?)




「よし。イワカミ、試験を始めろ」




「これを」大吾は片手剣と弓をカインに渡した。




(嫌だ……なんで短剣なんだ)




(落ち着け、カイン。弓を使えばいい。あんな鋭い封切り刃には触れなくていい)




 カインは不満を飲み込んで片手剣を腰に結んだ。弓を手にした瞬間、思考が流れていった。




(エラーラに使い方を教えたのを覚えてる。何ヶ月も一緒に練習した)




「では弓から始める」イワカミが木に的を取り付け終えて言った。




 カインの笑みが薄れていった。五人の若者が並ぶのを観察してから、目をこすって同じように並んだ。




 一人ずつ的を射た。誰も中心には当たらなかった。的そのものを外した者さえいた。




「次はあなたです、アサヒさん」




 カインの構えは違った。他の誰よりも強く弦を引いた。矢を放つと、空気を切り裂いて、中心のすぐそばに刺さった。




(中心じゃなかった……)




 振り返った瞬間、全員が不思議そうな目を向けているのに気づいた。




「ははっ、見たか、アサヒ。聖花道での一年が実を結んだな」




 大吾は答えなかった。ただ静かに見ていた。




「では次の回を」イワカミが手を叩いた。




(今度は中心に当てる)




 順番は同じだった。始まる前に、カインの体に緊張を走らせた言葉が交わされた。




「さっきの矢の勢い、見たか?」




「ああ。属性を纏わせたときの速さが楽しみだ」




(ネテリアにいることを忘れていた)




 一本目の矢は炎を纏っていたが、的に届く前に燃え尽きた。




 次の者の矢も炎を纏ったが、半分しか覆えていなかった。中ほどで炎が小さく爆ぜ、急加速したが的を外れた。




 三本目は穂先が水で覆われ、的の下部に当たった後も止まらず、木を貫通した。




 気取った態度のネサリが次だった。カゲヤを横目で見てから矢を放った。技術は粗かったが、矢に風が纏い、回転した。




 最も中心に近かった。跡には五本の矢が入るほどの大穴が開いた。




(まずい。カゲヤがどの属性だったか分からない。分かったとしても、俺には使えない)




 最後の者は穂先に薄い石の層を纏わせた。放つと、一メートルも飛ばずに落ちた。




 若者が二人笑った。




「石は矢には使うなって言っただろ、ミヤマ」




「試してたんだよ!」




「マナを操れる者と、操れるふりをする者の差だな」風を使ったネサリが上から言った。




(こいつはルカンとタロスを足して二で割ったような奴だ)




「どうした、アサヒ」イワカミが言った。




 カインは的の前に立った。




(賭けに出るしかない……)




 目を閉じて弦を引いた。マナを矢尻だけに集中させることはできないと分かっていたから、矢全体を包んだ。ぼんやりと光った。




 目を開けて放った。矢は真っ直ぐ的へ飛んでいった。触れた瞬間、マナが解放されて的が粉々に弾け飛んだ。




 破片が落ち切って、沈黙が訪れた。




 カインは木を見つめたまま、姿勢を崩さなかった。




(なぜ誰も何も言わない)




 大吾が最初に近づいた。




「なぜ風を使わなかった」




「必要なかった」




 大吾の視線がカゲヤの体全体を舐めるように走った。それからもとの場所へ戻った。




「選抜を続けろ、イワカミ」




(まだあるのか)




 ひげ面の男が咳払いをしながら近づいた。




「よし、二人組を作れ」




「シラミネとフユゾラ。ミヤマとユキシロ。クロサワとアサヒは最後だ」




 カインはじっとして、クロサワが近づいてくるのを待った。誰のことか分からなかった。




「ちょうどいい機会をもらった。なぜお前が次の村の長になるべきではないか、みんなに教えてやる」




(風のやつか。やっぱりルカンに似てる)




「それだけか、五番手」




「五番手?」




 イワカミが強く手を叩いた。




「木刀を取れ。俺が勝者を宣言するまで戦闘は続ける」




(組み手か。この体で大丈夫か)




 最初のペアが始まった。




 カインは右目を手で覆いながら、口角を上げた。




(関係ない。溜まったものを吐き出す、ちょうどいい機会だ)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。