このチャンスを逃すな
ディランはあてどもなく歩いた。ただ時間が過ぎるのを待っていた。
太陽は空を上り続けながら彼に寄り添っているようだった。
アルカノーヴァの鐘が二度鳴り、最初の授業の終わりを告げた。
生徒たちが教室から出て、少しずつ新しい日課に馴染んでいった。
棟の一つで、会話が突然止まった。
指揮官が確かな足取りで廊下を歩いていた。生徒たちは黙って学院の敬礼を取り、視線を逸らさずに北へ向かう彼女を見送った。
建物を出ると安堵のため息が聞こえ、それが唇に小さな微笑みを引き出した。
訓練室へと歩みを続けた。
近づくと、入口の近くで待っている学生が見えた。
「ダウンフォール」つぶやいた。
「授業まで二十分あります」指揮官が言った。
カインは振り返り、学院の敬礼を取った。「他にやることがないので」
マエナは彼の横を通り過ぎ、扉に着いた。
「何かやることを与えましょう」扉を開けながら言った。「準備を手伝って」
「はい、指揮官」カインは続いて入った。
中に入った瞬間、驚いた。場所全体は他の訓練室より質素でシンプルだった。壁は黒い石で作られ、鋼鉄で強化されていた。床も同様だった。
実戦に特化したエリアだと感じ取れた。目的はただ一つ — 立ち続けること。
「倉庫にある的を持ってきてください、ダウンフォール」マエナが扉を指差しながら命じた。
カインは頷き、部屋へ向かった。中にはアルドリックの授業で見慣れたデザインのものがあったが、素材が違った。
底から掴もうとかがんで、持ち上げようとしたとき……そのままの姿勢で止まった。
(何でこんなに重いんだ!?)何度か試みながら心の中で思った。もっと力を込めた。
手をマナで包んで掴み、背中を強化して持ち上げ、脚を強化して歩いた。
マエナには事故が繰り返されているように聞こえ、倉庫の扉を振り返った。一歩ごとに足をバタつかせながら的を運ぶカインが見えた。
「やめなさい、間違えた」マエナは彼のほうへ歩きながら言った。
カインはそのアーティファクトを落とした。落下は埃を舞い上がらせたが、アーティファクトにダメージはなかった。
マエナは息を切らしたカインの横に立った。「中にあるのが木の的です」
カインはエラーラに向けるような顔で彼女を見た。(どの的を持ってくるか言ってくれなかった)
指揮官の目と視線が合った瞬間、すぐに表情を変えた。
「このアーティファクトの目的はマナの訓練です」マエナはアーティファクトを指差しながら説明した。「ずっと頑丈で、マナで操作するのも簡単ではありません」
マエナは近づき、両手でアーティファクトを持ち上げた。子供を持つかのように。
「これが持ち上げられたのは驚きです」独り言を言った。
「時間を無駄にしないで正しい的を持ってきなさい」アーティファクトをしまいながら続けた。
「はい」カインは息を整えながら言った。
「はい?」マエナはまだアーティファクトを手に持ちながら聞いた。
「はい、指揮官!」
カインはマエナと一緒に倉庫へ戻った。正しい的を出し、訓練室に設置した。
一歩後ろへ引いた。
「早く終わったわね、ありがとう」マエナは部屋の端へ向かいながら言った。
マントを脱いでベンチに置いた。
「授業まで十分。武器を取って一緒にウォームアップをして」
カインは微笑んだ、体が震えた。速足で奥へ向かった。あらゆる種類の武器が壁に埋め込まれていた。
最も気に入ったものを選び、腰のサーベルを外して蹴り一発で壁に立てかけた。
「思った通り」カインを見ながらつぶやいた。
カインは指揮官から十分な距離を取って立った。
「構えて」マエナは長剣を抜きながら言った。
カインはアルドリックと使った同じ構えを取った。選んだ大剣は柄を含めると自分の背丈とほぼ同じだった。
刃の幅が体の右半分と顔の右側を覆った。
「遠慮するな」指揮官は自信に満ちたトーンで言った。「もし何かあれば、私自身が医務室に連れていく」
カインは迷わなかった。指揮官が話し終えた瞬間、足の下でマナを爆発させ、激しく接近した。
マエナは目を見開き、後方へ跳んだ。
その反応に気づき、カインは微笑みながら地面を力強く蹴り、指揮官の左側へ斜めに踏み込んだ。
マエナはカインの速さについて向きを変えたが、終わった時には彼はすでに再び地面を蹴り、彼女の隣で空中に立っていた。
速さがあっても、マエナはカインが右側からの斬撃を準備しているのに気づき、剣を振り彼の剣に当てた。
「そこまでして単純な一撃」マエナはつぶやいた。
彼女が予期していた衝撃は来なかった。
カインは空中でマナを爆発させて静止していた。
続いてのひらめきで大剣を一瞬で逆側に回し、もう一つのひらめきで突然加速した斬撃を放った。
マエナは攻撃が当たらなかった瞬間に姿勢を崩していたため、腕甲をマナで包み、力強く攻撃を受け止めた。
衝撃で大剣がカインの手からほとんど飛んでいった。
指揮官は力を使いすぎたかと思ったが、それは長くは続かなかった。
カインは武器を強く掴み直し、マエナの激しいはじき返しを利用し、体を回転させて剣の重さを使った。
態勢を整え終えると、もう一つの爆発を使い、全ての力をマエナへ向けて落とした。
指揮官は経験だけで剣をマナで包んで持ち上げた。
両刃がぶつかり合い、空気とマエナの体を揺らした。風圧が髪を押しのけ、顔があらわになった。
カインはまっすぐ自分を見つめる指揮官の驚いた目が見えた。
マエナは力強い動きで応じ、指揮官が剣からマナを放出しながらカインを押し返した。
カインの視線は指揮官からまったく離れなかった。まだ元の場所から動いていない。
「攻撃の仕方が素晴らしい」剣を目の高さまで持ち上げながら言った。振動しているように見えた。
「では防御に移りましょう」
マエナが一瞬で距離を詰めた。
指揮官が生み出したプレッシャーがカインをその場に縫い付けた。構えを取ることしかできなかった。
マエナは単純な斬撃を繰り出し始めた。カインは大剣を盾として使うことで防ぐしかなかった。
一撃ごとの重さは大剣のように感じられた。
マエナはリズムを保ちながら、カインの反応を注意深く分析した。斜め斬りを放つと、彼の姿勢の変化に気づいた。
指揮官の剣がわずかに跳ね返り、その連打が止まった。
マエナは攻撃を続けた。予想していなかったのは攻撃が反撃され始めたことで、そのためリズムを上げた。複雑さは上げなかった。
カインが大剣の重さに体でついていくのを観察した。目の中では武器と踊っているように見えた。
「よし……攻撃だけでなく防御もできる」
指揮官は攻撃する角度を変えてみた。カインが単に一連の動作を覚えただけでないかを確かめるために。
戦闘が奇妙な感覚を帯び始めた。少しずつ彼は力と速さを増していった。
両剣の衝突がより力強くなっていった。
マエナはカインに何か変わったものを感じた。「お前……」
計算された動きで、マエナはカインの手首を掴み、急停止させた。
完全に不意をつかれ、その目は完全に混乱していた。
「休んでいなさい、授業がもうすぐ始まるから」マエナは大剣を取り上げながら言った。
「はい、指揮官」カインは深く息を吸いながら答え、迷わずロッカー室へ歩いていった。
マエナは大剣の柄に残る薄い血の跡を見た。
「気のせいじゃなかった、マナを使い果たしていた」
「痛みをマナで無視していたの?」
指揮官は部屋の奥へつぶやきながら歩いた。
「いや……脚が疲れているようだった」
大剣を壁に立てかけた。
「ダウンフォール。授業が終わったら……」
カインがロッカー室に入ると、足取りがどんどん重くなり、急いで息を切らし始めた。
天井を見ながら、汗が額と背中を流れ始めるのを感じた。
(マナを使いすぎた、なんて馬鹿なんだ)
家具に手をついて体を支えようとしたとき、制御を失って崩れ落ち、床に叩きつけられた。
床を転がって仰向けになり、右腕を見た。
(そうだ……お前と一緒では何も感じない)
持ち上げようとしたら、ただ手がゆっくりと震えながら上がるのを見るだけだった。
「チッ」舌打ちをした。「手のひらが出血していたことに気づかなかった……だから指揮官は止めたんだ」
視線が天井に戻り、作るのが辛かった笑みを浮かべてつぶやいた。「少なくとも俺のマナ容量は以前の半分まで戻った」
……
(三十分以内に出られない。指揮官に何か言われたら、お腹が痛かったと言えばいい)
(選抜に影響しないといいな)
考えに続いて鐘の音が聞こえた。ロッカー室に弱く届いた。
その後、他の四人の選抜者が訓練室に入ってくるのが感じ取れた。
「始めましょう!」マエナの声が権威を持って迎えた。「それぞれ的に向かってウォームアップを始めて」
生徒たちは的へ走った。
全員がサーベルを抜いた。指揮官が遮った。
「規定のサーベルは使いません。奥へ行って、一番慣れた武器を取りなさい」
全員が無言で壁に埋め込まれた棚へ向かった。
ディランは槍を掴んだ。
セラは二本の剣を選んだ。
トリンは大きなメイスを壁から取った。
エルドレンは盾を取り、すでに持っていたサーベルのままにした。
「何を待っているの?」マエナは言い、全員すぐにウォームアップを始めた。
的の周りを動きながら単純な攻撃から始めた。
指揮官がそのうちの一人に近づいた。「そのメイスはお前の技術には大きすぎる、もっと小さいものに変えなさい」
トリンが走って武器を取り替えに行く間、マエナは他の者たちへ続いた。
少しの後、指揮官がまた指示を出した。「リズムを上げて。モンスターと戦うつもりで動きを見せて」
セラとディランは武器をマナで包んだ。トリンは体全体を包んだ。エルドレンは盾を強化することにした。
「私が命じるまで止まらないこと」マエナは声を上げた。
五分間黙って観察し、二人のリズムが落ちているのに気づいた。
「ノックスとブレイズフォール、止まらないで。マナを使い果たすギリギリまで使いなさい」
「でも……マナが切れると体が危険になります」セラが彼女を見ながら言った。
「限界を超える前に私が止めます」指揮官は目を合わせながら答えた。
セラは目に戻し、その視線に感じた恐れを隠した。
時間が経つにつれ、打撃は不格好になり、マナのコントロールが乱れていった。
「止まりなさい、バックヴェイル」マエナは全員から視線を離さないまま言った。
エルドレンは素早く呼吸しながら地面に倒れ込んだ。
数分後、セラとトリンも止めた。
視線がディランだけに固定された。「もっとマナを使って、今使っている少量ではダメージを与えられない」
「はい、指揮官」穂先だけでなく槍全体を包みながら答えた。
指揮官は訂正しようとしたが、止まった。
ディランはより強く的を攻撃し始めた。その指摘が影響しているのは明らかだった。
それまでのコントロールは消えていた。衝動だけが感じ取れた。
その熱狂は長くは続かなかった。指揮官が彼に向かった。
「十分よ、ラストライト」
言葉はかろうじてディランに届いたため、マエナが止めた。
マエナが離れると、ディランは前傾みになって脚に手をつき、額の汗を落とした。
マエナは疲れてあえぐ生徒たちのほうへゆっくりと歩いた。
「よし、これでやっと訓練に入れます」彼女は生徒たちの前に立ちながら言った。
「えっ……」セラは思わず答えた。
目を開き、口を塞いだ。「指揮官」声はほとんど聞こえなかった。
マエナは腕を組み、まだ地面に転がっている生徒たちを見下ろした。
「成長する時間は少ない。だから安全でいるために、そしてアルカノーヴァの名を担うために最も重要なことを訓練します」
「マナのコントロールです」
マエナは特定の生徒に視線を向けた。「バックヴェイル、盾をずっと強化し続けていた。マナを無駄遣いしています」
「ブレイズフォール、お前の間違いは体全体を強化すること。体を不必要に消耗させているだけです」
「ノックス、お前の間違いも似ている。攻撃に多すぎるマナを使っている。もっとまばらに、特定のポイントに使うことを学ばなければなりません」
指揮官はディランのほうへ向いた。「ラストライト、お前のマナ使用の精度は消耗への恐れを表している」
ディランは視線を落とし、ただ拳を握った。
「だからこの一週間、全てのトレーニングはほぼ全てのマナを消費した後で行います」
トリンが手を上げ、指揮官が頷くのを待った。
「目的は何ですか、指揮官?休んでマナ回復に集中すれば、一時間で半分近く回復できます」
「では戦闘の中で休めると思う?」マエナは聞いた。
腕を離し、真剣なトーンで続けた。「忘れないで、ネテリアへの旅は帰るまで終わらない。その前にマナを使い切ることは死への道を歩むことです」
「マナの残量がない時に使うことは、生死に関わる瞬間のみ許されます。少しずつ生命力を破壊します」
「適切に使えないなら、この職業を続けることは愚かです」
ゆっくりと一度まばたきした。
「他に質問がなければ、今すぐ立ちなさい」
全員がメッセージを理解した。ただ立つ速さは人それぞれだった。
ディランはカインがロッカー室から出てくるのを見た。指揮官もその視線を追った。
「三分あります」彼女は言い、カインへ向かった。
権威を放ちながら近づいてくるのを見て、カインはこれから言おうとしていた嘘を疑いだした。
それでも、ただ微笑んだ。
指揮官はカインの前に立った。
「なぜそんなに時間がかかったの?」マエナが聞いた。
「申し訳ありません、指揮官」カインは学院の敬礼を取りながら答えた。「お腹が痛くて早く出られませんでした」
マエナは二歩踏み出した。「嘘をつけないなら、黙っていなさいと言ったはずです」
「訓練が終わったら、あなたは残りなさい」
カインは答えられなかった。指揮官はすでに向きを変えていた。
「他の人たちのところへ行って準備しなさい」
「マナをこれ以上消費する必要がないことはわかっています」マエナは囁いた。
カインは指揮官の言葉が理解できなかった。
それでも、離れない冷たい抱擁を感じた。




