表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~  作者: 雪野みゆ
第三部:カリュオン王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/54

2章-3

 市場を抜けると、街はさらに高い場所へと続いていた。


 巨木と巨木を繋ぐ太い枝の上に白い石畳が敷かれ、脇には花々が咲き誇り、風にそよそよと揺れている。


「ここは『風見の回廊』という」

「街が一望できるのね。すごいわ!」

「王宮へ向かう道の中でも一番景色が良い」


 先ほどカテリアーナたちが歩いてきた道が遥か彼方に見える。


 さほど離れていないところに、護衛たちの姿が見えた。不穏な動きを察知したフィンラスが、警戒して呼び寄せたのだ。


「広いけれど、ここも吊り橋になっているのね」

「カティ、あまり端へ寄るな」

「どうなっているのか、少し見るだけよ」

「全く好奇心の塊だな。其方は……」


 諦めるようにフィンラスがため息を吐いた瞬間だった。


 ――カツン。


 どこかで小石を蹴ったような音がした。


 フィンラスの耳がぴくりと動く。妖精猫である彼の鋭い聴覚が、風に紛れた僅かな物音を捉えた。


「……何者だ?」


 低く呟いた次の瞬間。


 近くを歩いていた一人のハーピィが、突然体勢を崩した。


「きゃっ!」


 彼女が手にしていた荷物が宙を舞う。荷物の中身は果物だ。果物はゴロゴロと転がり、通行人たちが驚いて声を上げた。


「危ない!」


 人々の視線は一斉にそちらへ向く。


 それはほんの一瞬の隙だった。


 黒い外套を纏った人影が、橋の支柱の陰から音もなく現れる。顔は仮面で隠されていた。


 迷いのない足取りでカテリアーナの背後へ近づき――


 ドンッ!


 強く彼女の背中を突き飛ばした。


「え?」


 足から床の感触が消えて、そして視界が傾いた。


 体が浮かぶ感覚とともに、空が横目に流れる。


 遥か遠くに見えていた森が眼前に広がった。


「きゃあああああっ!」


 カテリアーナの悲鳴が空に吸い込まれていく。


「カティ!」


 フィンラスは反射的に駆け出し、腕を伸ばすが届かない。


 迷う暇などなく、彼はそのまま橋の欄干を蹴り、空中へと身を躍らせる。


「フィル!」

「カテリアーナ様!」


 王宮から駆けつけてきたカルスとエルシーが同時に二人の名を叫ぶが、彼らの姿はぐんぐん遠ざかっていく。


「エルシー! 女王陛下へ知らせに行ってくれ! 私は陛下たちを追う!」

「は、はい!」


 エルシーがケットシーの姿に変わり王宮へ駆け出すのを見ると、カルスは鳥に姿を変え翼を広げる。


 周囲のハーピィたちも互いに頷き合い、飛び立とうとした。


 だが、黒衣の男が小さな水晶を投げる。水晶がパリンと乾いた音をたて割れると、辺り一面が黒く濃い霧に包まれる。


「視界が!?」


 カルスを始めとするハーピィたちの翼が重くなり、飛び立つことができない。


 変化が解けたカルスは舌打ちをする。


「くそっ! 魔封じの霧か!?」


◇◇◇


 一方。


 落下するカテリアーナは必死に目を開けていた。風圧で息をすることができない。体が言うことを聞かない。今にも気を失ってしまいそうだ。怖い。


 だが、彼女の視界がフィンラスの姿を捉える。


「フィル!」


 自分を追ってきたであろう彼は、カテリアーナ目がけて一直線に向かってきた。


「どうして!?」


 涙がにじむ。なぜ来たのかという思いと、来てくれたうれしさがないまぜになる。


「捕まえた!」


 力強い腕が彼女を抱き寄せる。


 フィンラスは体勢を変え、片腕でカテリアーナを抱えると、もう片方の手を空へ向ける。


「風よ!」


 淡い光を放った魔法陣が空中に浮かび、落下速度が僅かに緩む。


 しかし、あまりにも高度がありすぎた。


 完全に速度を落とすには、地面が間近に迫りすぎている。


 フィンラスは静かに目を閉じると、決意した。


「……カティ、俺にしっかり掴まっていろ」


 カテリアーナを腕に抱きこみ、反転して自分の背中を地面に向ける。


「嫌よ!」


 フィンラスの体をしっかりと掴みながらもカテリアーナは叫ぶ。


「そんなことはしないでちょうだい!」

「君だけは守る」

「貴方が傷つくのは嫌!」


「大丈夫だ」というようにフィンラスは優しく微笑む。


 その笑顔を見た瞬間、カテリアーナは激しく首を振ったが、フィンラスに頭ごと抱えこまれる。


「嫌! フィル!」


 叫びは風にかき消される。


 地面はすぐそこまで迫っていた。

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ