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チャリオット  作者: さだきち
第二十章:荒野の激突、散りゆく鋼鉄

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第98話:限界の爆砕、荒野の執念


土埃が舞い散る広大なアリュナス荒野。その上空では、ふたつのパワードスーツが距離を保ったまま睨み合っていた。


ふと、魔将軍バロールの唇が吊り上がり、不敵な笑みが浮かぶ。

鋭い眼光で捉えていたクリストフは、一瞬だけ意外そうな表情を見せた。


――次の瞬間だった。


ドォンッ!! と音速を超える衝撃波を置き去りにし、バロールが光の剣を振りかぶって直進してきた。


「なっ……!?」


完全に虚を突かれ、面食らうクリストフ。咄嗟にエクスカリバーを交差させて受け止めるが、伝わってきたのは常軌を逸した質量と魔力の奔流だった。


「ぐわあぁぁっ!?」


凄まじい衝撃波が炸裂し、クリストフの巨体は旋回しながら遥か後方へと吹き飛ばされた。


クリストフを弾き飛ばしたバロールは、空中で素早く反転すると、地上に留まる残りの2台のチャリオットへ冷徹な視線を向ける。


「させるかッ!」


グラスホッパーのシートを高く引き上げたトリスタンが、即座に二本の魔導矢を射ち放った。


だが、バロールは矢が直撃して生じた爆風も、激しく飛び散る自身の「魔導障壁(バウンダリー・ハル)」すらも全く意に介さず、正面突破で突進してくる。


「まずい……!!」


死の危険を察知したトリスタンは高所のシートから迷わず飛び降り、大地を無我夢中でゴロゴロと転がった。

直後、バロールが一閃させた光の剣がグラスホッパーのバウンダリー・ハルを根こそぎ削り取る。間髪入れずに繰り出された二太刀目が車体を真っ二つに両断し、グラスホッパーは爆発を起こして粉々に吹き飛んだ。


一方、離れた位置で冷徹に機動を観察していたフリントは、ティーガーの主砲をバロールの着地軌道へ精密に照準した。


「喰らい……やがれぇぇっ!!」


フリントが主砲を叩き込む。音速を超えて迫る高威力の砲弾――しかしバロールは、紙一重の滑らかな機動でそれを軽々と回避してみせた。


爆発的な超音速加速。一瞬でティーガーの頭上へ肉薄したバロールは、初手の一撃で大量のバウンダリー・ハルを剥ぎ取っていく。


「くっそう! もう無理だッ!!」


フリントは一切の躊躇なく、座席下の緊急脱出用レバーを力任せに引いた。天井ハッチが跳ね飛び、フリントの身体が上空へ射出される。

直後、バロールの凄まじい滅多切りがティーガーを襲った。シャシーごと叩き切られたティーガーは激しい爆発を起こし、荒野の露と消えた。


2台のチャリオットを完膚なきまでに破壊し、満足げに高笑いを上げるバロール。


だがその時――遥か彼方から、直進してくる一筋の閃光があった。

破壊された仲間の機体を目撃し、怒りを爆発させたクリストフの「カタナ」である。


「トリスタン……! フリント……ッ!」


「ふざけんじゃねぇぇぇッ!! このバロールがあぁぁぁッ!!」


咆哮とともに、クリストフは全力の推進力を乗せてエクスカリバーを振り抜いた。


「なにっ!?」


バロールは咄嗟に光の剣で防ぐが、叩き付けられた怒りの質量を受け止めきれず、激しく回転しながら吹き飛ばされた。


「ほう……なかなかやるな……!」


バロールは空中で冷静に体制を立て直し、高度を上げて迎え撃つ。

だが、クリストフの追撃は止まらない。飛翔しながら縦横無尽に斬りかかっていく。


バロールは光の剣を振り回して応戦しようとするが、クリストフは空中の慣れぬ挙動を物ともせず、機敏な体さばきでそれらをことごとく回避。すれ違いざまにバロールの装甲を切り刻み、バウンダリー・ハルを猛烈な勢いで削り落としていく。


「く……くそッ!」


バロールの光の剣が虚しく空を切る。

本来、パワードスーツの狭隘な可動域で、パーツを壊さないように、バロールはスーツ内部で自身の肉体や関節を変形させて操縦していた。


その驚異的な適応力をもってすればミサイルや機銃の操作に支障はなかったが、繊細な間合いと速度が求められる剣戟戦においては、変形させた関節が裏目に出てぎこちなさを生んでいたのだ。


対するクリストフは、全身の無数の傷が物語る通りの歴戦の猛者。

初体験であるはずの空中戦闘ですら、打ち合いの中で瞬時にコツを掴み取り、その攻撃は回を追うごとに容赦なく熾烈なものへと進化していた。


「ぐぬぬ……この私が押し込まれるだと……!? ええい、仕方ないッ!」


劣勢を悟ったバロールは悔しげに歯噛みすると、光の剣を納め、両手で固く拳を握りしめた。体内から溢れ出る全魔力を強引にスーツへ流し込む。


――バチバチバチッ!!


過剰供給に耐えかね、バロールのパワードスーツ各部から爆発的な魔導火花が連射するように吹き出し始めた。


「甘ぇんだよッ!!」


構わずエクスカリバーを振り下ろすクリストフ。

その瞬間――臨界点を超えたバロールのパワードスーツが凄まじい閃光を放ち、空中で大爆発を起こした。


「うわあぁぁぁッ!?」


超至近距離での爆発に巻き込まれたクリストフは、大量のバウンダリー・ハルを閃光となって撒き散らしながら、上空へと猛スピードで吹き飛ばされていく。


そして、破砕したスーツの残骸とともに、バロールの巨体が荒野の土煙の中へ激しく叩きつけられた。


「……チャンスだ!!」


煙の向こうで倒れ伏すバロールの姿を視界に捉えたトリスタンが叫ぶ。

彼はロングソードを抜き放つと、迷うことなくバロール目掛けて駆け出した。


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