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チャリオット  作者: さだきち
第十九章:輝石の帰還、託されし双刃

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第94話:飛翔の鋼鉄、不穏の報せ


爽やかな風がそよぎ、どこまでも広がる広大な高原。

トリスタン、フリント、バレルの3人が並んで歩いていた。


3人の歩く速度に合わせ、その隣をゆっくりと並走するのは、改修を経た愛機「ブロード・カタナ-TR」である。


「今回は結構遠くまで来ましたが……この広さなら、思う存分新兵器を試せそうですね!」

フリントが高原を見回して頷く。その隣でトリスタンは新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、深呼吸した。


「よし、いっちょおっぱじめるか、クリストフ!?」

バレルがニヤリと笑い、車上のクリストフに声をかける。


――ブオォォォン!


クリストフがハンドルから手を離して立ち上がると同時に、重厚なエンジン音が轟いた。

直後、カタナは従来の常識を覆す異様な挙動を見せる。なんと車体がカチャカチャと音を立てて分解し、前輪部分と後輪部分、各パーツが独立して散開したのだ。


バラバラになったパーツ群は、クリストフの周囲をぐるぐると旋回する。やがて各パーツから可動式ノズルが展開し、甲高いジェット噴射音とともに上昇を開始した。


「いいぜ、いいぜ! いい感じだ……そのまま来い!」

両手を広げて大空を見上げ、クリストフが叫ぶ。


その声に応えるかのように、パーツたちが一斉にクリストフへ向けて殺到した。

頭部、胸部、腕、胴回り――精密な機構音を響かせながら、クリストフの肉体へと順次装着されていく。


飛来した右脚パーツが噛み合い、レッグガードが完璧に装着される。しかし、左脚用のパーツはタイミングがズレ、クリストフの脇を通り抜けて向こう側へ飛んで行ってしまった。


「くそうっ!」

クリストフは脳内のサイコドライブで飛んで行ったパーツを力ずくで呼び戻す。今度は飛来するパーツを迎え蹴るようにして合わせ、力技で全パーツの装着を完了させた。


「うわあぁ! カッコいい……!!」

全身に重厚なパワードスーツを纏ったクリストフの雄姿に、トリスタンは目を輝かせる。


だが、当のクリストフは不満げに首を振った。

「いや……納得いかねえな。やり直しだ!」


クリストフが両手を広げると、装着されたパーツ群が一斉に外れ、再び上空へと散開した。

クリストフは全速力で高原を駆け出す。追尾するパーツたちがジェット噴射を吹き上げ、走るクリストフを追いかける。


やがて追いついたパーツが、頭部、胸部、両腕、胴、両脚――今度は一切の滞りなく、一瞬の隙もなく完璧なシームレスさで完全装着された。


「どんなもんだ!!」


クリストフはそのまま力強く大地を蹴った。

レッグガードと背部ノズルから爆風が放たれ、その巨体が推進力によって一気に大空へと躍り出る。


「うおぉぉぉッ!? すげえ……飛んでる、飛んでるぜぇぇ!!」

クリストフは大はしゃぎで歓声を上げながら、広大な上空を悠々と旋回した。


「すごい! すごいよ、クリストフ!!」

大空を自在に舞うパワードスーツを見上げ、フリントも興奮を隠せない。


クリストフは背部ラックから大剣「エクスカリバー」を引き抜いた。

2メートルを優に超える光の刃が展開される。縦横無尽に大空を駆け巡り、機敏な旋回を見せながら、動作確認のためにエクスカリバーを豪快に振り抜いてみせた。


「こりゃあ、全く問題なさそうだな。安心して見ていられるぜ。おめでとうフリント、大成功だ」

バレルが隣のフリントの肩をぽんと叩く。フリントは満面の笑みで大きく頷いた。


やがてクリストフが地上へ滑らかに着地すると、スーツのパーツ群が瞬時に離脱。空中でスムーズに組み合わさり、一瞬で元のカタナの形状へと戻った。

満足げな表情で再びカタナに跨るクリストフ。4人はテストを終え、プラウデンの要塞を目指して歩き出した。


「しかし……こういう時に、みんなで乗れるヴリトラがないと不便だな。ヴァレリアはいつ帰ってくるんだ?」

クリストフが尋ねる。


「わかりません……ですが、ヴリトラの遠隔魔力反応自体は捉えていたので、問題ないとは思います。戻ったら詳細を確認しますね」


---


しばらくして、4人はようやくプラウデンの要塞へと帰還した。

クリストフはカタナを収めるため、フリントはヴリトラの反応を精査するために格納庫へと向かう。


「大変だ―――っ!!」


突如、フリントの顔が真っ青になり、悲鳴のような絶叫が響き渡った。


「どうしたっ!?」

クリストフが驚いて駆け寄る。


「ヴリトラの反応が……大破しています!!」


「なっ……!?」

フリントの報告に、クリストフは言葉を失った。

(大破……? まさか、ヴァレリアが……)


慌ててモニターを覗き込んだバレルが、眉間にしわを寄せて言った。

「そういえば……あいつ、クラウディッツ渓谷のことを俺に聞いてきてたな……」


「クラウディッツ渓谷……!?」

クリストフが反芻する。


「行こう!!」

トリスタンが迷わず愛機「グラスホッパー」へ飛び乗った。


フリントも慌てて「ティーガー」へ走り込み、ハッチを開けて乗り込む。クリストフも再びカタナへ跨がった。


「すまない、バレル! 後は頼んだぜ!」


「わかった! 何か分かったらすぐ連絡してくれ!」


カタナ、グラスホッパー、ティーガー――3台のチャリオットが重厚な駆動音を爆発させ、緊迫した空気のなか、鋼鉄の要塞から飛び出していった。


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