第88話:要塞の篝火、繋ぎ合わされる絆
プラウデンに広がる巨大な広場を、突如として巨大な影が覆い尽くす。
やがてそれは風を激しく切り裂くプロペラ音とともに、重厚な音を立てて静かに大地へと降り立った。
「おかえりなさい!」
はつらつとした声を上げて出迎えたのは、作業の手を止めて駆け寄ってきた頑強な鎧姿の兵士――バルドだった。
周りには、無数のP-LOTたちが寸分の狂いもなく整然と並んでいる。それとは別に、街のあちこちでは腕利きの職人たちが手を休めることなく、建物の建設を着々と進めていた。
飛空艇からゆっくりとタラップが降ろされる。
「おう! バルド! 頑張ってるじゃねえか!」
快活な声を響かせ、タラップを降りてきたのはバレルだった。
「はいっ! 見てくださいよ、だいぶ作業も進んでます! ……よし、お前ら! 作業に戻るぞ!」
バルドが大声を張り上げると、P-LOTたちを引き連れて威勢よく持ち場へと戻っていった。
鋼鉄の要塞の重厚な門を開け、クリストフ、トリスタン、フリント、ヴァレリアの4人が足を踏み入れる。
「俺、早速カタナの解体作業に取り掛かります!」
フリントは威勢よく言うなり、格納庫へ向かって走り出した。
「お、張り切ってるなあ、フリントのやつ」
クリストフはその背中に笑みをこぼす。
「何か美味しいものでも作って持っていってあげようよ」
トリスタンがクリストフの顔を見上げた。
「おお、いいアイデアだな! じゃあ、いっちょ作ってくるか!」
クリストフはトリスタンの肩をポンと叩くと、二人揃って要塞の奥へと向かっていった。
一方、バレルは門の近くで無線機を片手に、カイエンとの通信を終えたところだった。
腕組みをしながらその様子を静かに眺めていたヴァレリアの存在に気づき、バレルは驚いたように肩を揺らす。
「うわっ! 要塞の中に入っていったんじゃなかったのかよ?」
「……あの、カイエンとかいう人たちと話していたんでしょ?」
「ああ、そうだが……何かあったか?」
「申し訳ないけれど……彼らの詳細な行き先を教えてくれないかしら?」
「別に構わんが……」
バレルはわずかに違和感を覚えつつも、カイエンたちが向かった「クラウディッツ渓谷」の詳細な位置をヴァレリアに伝えた。
その後、バレルが要塞の中へ足を進めると、調理場に明かりが灯っているのが見えた。
「いい匂いをさせてるな。早速ごちそうか?」
「ああ。フリントが格納庫で例のカタナの改造を頑張ってくれてるからさ。後でこのごちそうを持っていくから、フリントの手伝いをしてやってくれないか?」
クリストフが包丁を握りながらバレルに声をかける。
「おう、分かった」
バレルは右手をひらひらと上げ、調理場を後にした。
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その頃、フリントがカタナの解体作業に没頭している脇を、ヴァレリアが静かに通り過ぎた。
彼女は愛機「ヴリトラ」のシートに乗り込み、エンジンを始動させる。重厚な駆動音に驚いたフリントが、慌てて運転席へと駆け寄った。
「え? ヴァレリア、どこか出かけるの?」
「悪いけれど……少し用事があるの。大したことじゃないんだけど……すぐに戻るわ。いいでしょ?」
「あ……うん、分かった」
フリントは少し呆気に取られながらも、深く追求せずに承諾した。
やがてヴリトラは甲高い排気音を残し、鋼鉄の要塞を後にして走り去っていった。
作業に戻ったフリントが解体を進めていると、しばらくしてバレルが格納庫にやってきた。
「よう、進んでいるか?」
「はい! 解体作業はもうすぐ終わりそうです。外したパーツはそこに並べてあります」
「どれどれ……もう一度精密にサイズを採寸し直す必要があるな。設計図はこれからか?」
「大体のイメージは頭に入っているんですが……まだ図面には手を付けていません」
「じゃあ、パーツの採寸は俺がやって後で持っていくから、お前は書けるところから設計を始めろ」
「はい! 残り二つのパーツをバラしたら、すぐ取り掛かります!」
「図面が出来たら……あれだ、魔法電池も新しく作らなきゃいけない。それも考慮して書いておいてくれよ」
「はいっ!」
フリントは嬉しそうに大きく頷いた。
夜が更け、作業の熱気が増す格納庫へと、クリストフとトリスタンが大きな机を運んできた。
たくさんの椅子が並べられ、机の上には大きな鍋が三つも持ち込まれる。
「いくらなんでも、こんなに食えねえだろ!」
駆け寄ってきたバレルが目を丸くする。
クリストフは呆れ顔で笑った。
「何言ってるんだよ。お前があの人たちを呼び寄せておいたんだろ?」
「あの人たちって……ああ!」
要塞の門の外から、大勢の足音が近づいてくる。
「わあ! いい匂いだ! 俺たちも混ざっていいすっか!?」
バルドが満面の笑みで格納庫に顔を出した。
「おう、いいぜ! さあ、そっちの作業員のみんなも遠慮しないで座って座って!」
クリストフが賑やかに手招きする。
大きな机の周りは、フリントやバレル、バルドに職人たちですぐさま埋め尽くされた。
クリストフとトリスタンが心を込めて作った温かい料理が次々と並べられていく。
プラウデンの鋼鉄の要塞は、熱気と歓声に包まれながら、夜遅くまで賑やかに盛り上がり続けていた。




