↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャリオット  作者: さだきち
第十七章:潮風の交差点、交わる軌跡

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
85/115

第85話:運命の交差点、二つの刃


波の音が静かに響く、港の近くに佇む広い倉庫。

バレルが臨時に借り受けた作業場には大きな作業机が置かれ、そこに向かい合う形で一同が会していた。


「悪いな、こんな場所しかなかったんだ」

バレルが口を開き、集まった一同をぐるりと見回す。


左手にはカイエン、デイル、エルム、サヤの4人。

右手にはクリストフ、トリスタン、フリント、ヴァレリアの4人。

中央の座席に座るバレルを挟み、両陣営が静かに対峙していた。


「クリストフと言います。どうぞ、よろしく」

クリストフが勢いよく立ち上がり、爽やかに手を差し伸ばした。


「俺は、カイエンだ。よろしくな」

カイエンも立ち上がり、その無骨な手をしっかりと握り返す。


(あなたが……カイエン……)

クリストフがカイエンの佇まいをまじまじと見つめていると、カイエンは顎で示して座るよう促した。


「お前……討伐隊か?」


「はい、そうですが」


「どうやって、レイドールを見つけた?」

カイエンの眼光が鋭く光る。


「え? どうやってって言うか……」

突如放たれた鋭いプレッシャーに、クリストフが言葉に詰まる。


その横から、ヴァレリアが冷徹な視線を打ち返した。

「私たちは、アイゼンを倒しに行っただけよ。そっちこそ、どうやってアイゼンを見つけて倒したの?」


「いえ……私たちは数ヶ月あのあたりを捜索して、ようやくアイゼンの居城を突き止めたのです。私とエルムの二人でね」

デイルは穏やかな笑みを崩さず、静かに答えた。

「カイエンさんたちには、私とエルムから声をかけたと言いますか……」


「そうじゃないわ」

ヴァレリアの視線が一層険しくなる。


「え?」


「どうやってアイゼンを倒したの? あなたたちは一体何者?」


「古代の極大呪文……いわゆる『ハイエイシェント』と呼ばれる術です。お聞きになったことはありますか?」

デイルは穏やかな瞳でヴァレリアを見つめた。


「あるけど……魔将軍を倒せるほどの威力があるっていうの!?」


「魔将軍と言っても、所詮は精霊世界の下僕に過ぎません。それを上回る魔力をもってすれば……倒せます」


デイルのあまりにも淡々とした、しかし揺るぎない言葉に、ヴァレリアは「そんな……」と絶句した。


「まあ、ともかく……お前らがアイゼンを倒しに行ったら、なぜかそこにレイドールがいたってことか?」

カイエンが腕組みをしながら尋ねる。


「ああ。俺たちはドラゴンをも倒せる『チャリオット』っていう兵器を持ってる。それを使って何とか勝ったよ」

クリストフが胸を張る。


「なるほどな……」

カイエンは深く息を吐き出すと、苦々しく言葉を続けた。

「俺が先に見つけられなかったからだ……うまいことヴァルガスに逃げられちまったか」


「なあ……ヴァルガスは、何を恐れて逃げているんだ?」

バレルが尋ねるが、その問いを遮るようにデイルが割って入った。


「おそらく、我々が目指している『クロイツ』でしょうね……」


「クロイツ……? ああ……何かで聞いたことがあるな……」

バレルが頭を抱え、天井を見上げて記憶を掘り起こそうとする。


「さすがですね……精霊工学の粋を集めて作られた伝説の武器です。『運命の羅針盤』が引き起こす脅威の対策として用意されました」


「う、運命の羅針盤……!? あんなものが実在するっていうのか!? わかったぞ、確か精霊に対抗できる唯一の武器の名前……御伽噺じゃなかったのか、あれは!?」

バレルが驚愕の声を張り上げた。


「ふふふ……精霊工学の最高技術でありながら、それは精霊術の最高峰の魔力結界によって厳重に守られています」

デイルの眼光に深みが宿る。

「仮にその場所に辿り着けたとしても、真に『ふさわしい者』でなければ手にすることは出来ません。……何者かはわかりませんが、おそらくこの中に、鍵となる人物がいます」


デイルは、静かにそこにいる全員の顔を順番に見回した。


「とにかく、残る魔将軍はプレアデスとバロール……これが最大の脅威のはずよ」

ヴァレリアが我に返り、声を張る。


「私の炎の魔力と、そちらのチャリオットという兵器……いまのところ、このまま二手に分かれて対応したほうが良いかもしれませんね」

デイルがカイエンとクリストフを交互に見つめた。


「そうだな。何とか連絡を取り合って、このまま二手に分かれて進もう」

カイエンが静かに立ち上がる。


それを機に、場にいた全員がゆっくりと腰を上げた。二組のチームとしての進路が、ここに定まった。


「……すみません。お嫌じゃなければ、そのマントの中を見せていただけませんか?」

立ち上がりかけたデイルが、ふとトリスタンに声をかけた。


「え? 僕……? いいですけど……」

戸惑いながらも、トリスタンは肩のマントを少しはだけ、隠されていた2本の右腕を露わにした。


「なるほど……『鍵』となる人物……」

デイルが満足そうに小さく呟く。


「え?」

エルムが首を傾げてデイルを見る。


「いえいえ。……ですがいずれ、あなたが必要になるかもしれません。その時はまた会いに行きますよ」

デイルはトリスタンに温かく微笑みかけた。


「では、行きましょう」

デイルが声をかけると、カイエン、エルム、サヤの4人は静かに倉庫の扉を開け、先に出て行った。


「じゃあ、俺たちも出るか」

バレルの言葉に促され、クリストフ、トリスタン、フリント、ヴァレリアもまた、新たなる決意を胸に後に続くのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。