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チャリオット  作者: さだきち
第十六章:天空の禍威(かい)、蠢く黒き技術

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第77話:深層の暗流、権限の行使


魔法協会の最奥に位置する、特に秘匿性の高い会議室の一室。

重厚な防音障壁が施された広い室内の大きなテーブルの隅に、ドワーフのバレルと、威厳を纏った執行官オズワルドが向かい合って座っていた。


「レイドールが、殺されただと……?」

オズワルドが神妙な面持ちで、目の前のバレルに事実を確認する。


「ああ。クリストフ率いる4人の手によってな。あいつらは、例のランドリエからイゾルデの案内で、かなり強力な『チャリオット』という兵器を手に入れたんだ」


「なるほど……それで、あのレイドールを討伐できたというわけか……」

オズワルドは顎に手を当て、複雑な眼差しで高い天井を見上げた。


「問題は、なぜレイドールがアイゼンの城にいたか、ってことだよな」

バレルが腕組みをし、深く鼻を鳴らす。


「それで……その当の魔将軍アイゼンはどこへ行ったんだ?」

オズワルドがバレルを力強く見つめる。


「それがな……あのカイエンが、アイゼンの城に乗り込んできたらしいんだ」


「カイエンが……!?」


「まあ、クリストフ自身が直接それを見たわけじゃないんだが……どうやらカイエンが先に城へ着いてアイゼンを倒して……」


「それで、すれ違いでレイドールを殺したと……?」

オズワルドの目が大きく見開かれた。


「ま、まあ……そうなんだよ。アイゼンはともかく、なぜレイドールがそこにいたんだっていう疑問が残るがな……」

バレルは腕組みをしたまま、伏し目になり深く考え込む。


「……まあ、これでヴァルガスへの手がかりは、完全に潰えたように思えるな」

――オズワルドがぼそりと呟く。


「ま、待ってくれ! クリストフたちは悪気があってやったわけじゃないぞ! やらなきゃ殺されていた極限状態の――」

思わず感情を高ぶらせ、椅子を蹴るように立ち上がって声を荒げるバレル。


その言葉が終わる前に、オズワルドも静かに立ち上がり、掌を向けてそれを制した。

「まあまあ、落ち着けよ。何もクリストフたちを責めているわけじゃない。むしろ魔法教会にとっちゃ大手柄だ。十分すぎる報酬を用意している」


言われたバレルは荒い息を吐き、再び二人は会議室の椅子に深く腰を下ろした。


「ただな……どうにも引っかかるんだよ。あれほど蜜月だった腹心の部下を、そんな風にあっさり死なせるものだろうか」


「ただの偶然じゃない、と……?」

バレルがオズワルドの表情を探るように見つめる。


「もし……ヴァルガスが何かを恐れているとしたら……? わざと自分に繋がる腹心の部下を、切り捨てたのではないか……」


「まさか……! あのヴァルガスが何を恐れるってんだ!?」


「さあな。……ところで、そのカイエンはアイゼンを倒した後、どこへ向かったんだ?」


「それは……わからん。相変わらず足取りがつかめねえよ」

バレルが困惑混じりに首を振る。


「うーん、あいつが今何を追っているかが最大の鍵なんだがな……」

オズワルドが苦々しげに頭を掻いた。


「オズワルド……魔法教会の特別権限を行使できる状況か?」

バレルが鋭い眼光を向ける。


「強制権限なら、いくらでも発動していい状況だが……そんなものを使ってどうするんだ?」

オズワルドが訝しげな顔をする。


「実はな、俺の弟子のロンが、カイエンに物資や金を送り続けているんだよ。魔法教会の連絡所宛てにな」


「えっ!? じゃあ、それでカイエンの足取りが掴めるじゃないか!!」

オズワルドの声が跳ね上がり、少し興奮した口調になった。


「まあ……しかし、連絡が不定期でな。物資や金は送っているが、奴がいつ受け取ったかまでは確認できていねえんだ」

バレルは腕組みをしたまま、上目遣いにオズワルドを見る。


オズワルドは迷いなく頷いた。

「よし、お前に無制限の特別捜査権限を与える。全ての連絡所の情報取得、立ち入りを許可しよう。……それで、お前の弟子のロンからは何か聞いていないのか? カイエンから連絡があったとか」


「さあな。なにせ、いつ連絡があるかもわからない状態だからな。だが、自分の工房に戻ったら早速聞いてみるよ」


秘匿された会議室の中で、二人の男は同時に立ち上がり、互いの手を固く握りしめた。


「じゃあ頼んだぞ、バレル。俺はアルフレート議長に事態を報告してくる。とにかく、お前だけが頼りだ」


「まあ、任せておけよ。何か進展があったらすぐに連絡する」


固い誓いを交わすと、二人の男はそれぞれの任務を果たすため、静かに動き出したのだった。


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