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チャリオット  作者: さだきち
第十五章:虚構の魔城、狂乱の旋律

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第73話:男たちの誓い、狙撃の構え


城門から息せき切って駆け出してくる少年の姿があった。トリスタンだ。


「トリスタン!」

ティーガーのハッチを開け、身を乗り出したフリントが大きな声を張り上げる。


トリスタンはフリントのもとへ駆け寄ると、ティーガーの重厚な装甲に両手をつき、荒い息を吐きながら肩を上下させた。


「クリストフはどうした!?」


「城の中に……っ! 今、すごく危険な状態なんだ! 早く助けに行かないと!!」

トリスタンが悲痛な声を上げる。


「状況を話せ」

フリントは冷静な眼差しを崩さず、トリスタンに問うた。


「城の中に……レイドールっていう真っ黒で巨大なドラゴンがいたんだ! その灼熱のブレスから、命からがら逃げてきた……! 今もクリストフはあのドラゴンに追われてるんだよ! 早く助けないと殺されちゃう!!」


トリスタンは切実な眼差しで救出を訴えかける。


「ま、待て……クリストフは、何か言ってなかったか!?」

フリントはトリスタンを制するように、言葉を重ねた。


「さ、作戦だって言ってた……」


「作戦!? クリストフが確かに『作戦だ』と言ったんだな!?」

フリントの目が鋭く光る。


「そんなの嘘に決まってるだろ!! 僕を逃がすための方便だよ! クリストフは……あいつはそういう奴なんだ!!」


トリスタンが声を荒らげた瞬間、フリントはティーガーの車体から飛び降りると、トリスタンの両肩を力強く掴み、まっすぐに見つめつめた。


「何してるんだよ! 早く、早く助けに行かないと……!」

トリスタンは溢れんばかりの焦燥感を抱え、城の奥を強く指さす。


「トリスタン、聞け!!」

フリントは肩を掴んだまま、まっすぐにトリスタンの目を見据えた。

「クリストフは……俺たちに『生きろ』と言ったんだ。ここで待てと。それが……あいつの作戦なんだよ!」


「そ、そんな……っ!」

切なさに満ちた視線を向けるトリスタンに、フリントは静かに語りかける。


「落ち着いてくれ、トリスタン……ここは戦場なんだ。わかってくれ。俺だってクリストフを無駄死にさせたくはない……!」


フリントは言葉を噛み締めるように続けた。

「戦場では時に、個人の命の優先度を下げなければならない瞬間がある。だがそれは、崇高な目的を何としてもやり遂げるためだ。俺たちが感情任せに城へ突っ込んで、全員で無駄死にする……それがクリストフの望んだことだと思うか? 頼む……頼むからわかってくれ、トリスタン」


トリスタンの目から、ぽろぽろと涙が溢れ出した。その涙は止まることを知らなかったが、フリントの痛切な言葉を受け止め、静かに、深く頷いた。


「ぼ、僕は何を……何をすればいい……?」

弱々しい声を、トリスタンはようやく絞り出した。


「ティーガーで、城から飛び出してきたドラゴンを叩く。ここで迎撃準備をするんだ。……グラスホッパーを移動させてくれ」


フリントの言葉に頷くと、トリスタンは涙を拭い、グラスホッパーへと乗り込んだ。


一方、フリントはカタナに乗り込むと、城壁のすぐ近くまで機体を操縦して移動させた。


グラスホッパーを移動させ、機体から降りてきたトリスタンがフリントに尋ねる。

「そのカタナは……どうするの?」


「さあな……どうなるかはわからない。だが、カタナのサイコドライブなら、10メートル前後離れていてもクリストフの意思に反応するはずだ。……俺たちは、クリストフを信じて待つしかない」


トリスタンはフリントの力強い言葉に、深く頷いた。


駆け出したフリントは素早くティーガーへ乗り込むと、機体を好条件の位置へと移動させ、主砲の角度を城の出口に向かってぴったりと合わせた。


トリスタンも静かに歩み寄ると、ティーガーの傍らに佇む。

そして大きく深呼吸をして息を整えると、完全に落ち着いた手つきでロングボウに魔導矢を番え、まっすぐに城の方角へ向かって弓を引き絞った。


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