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チャリオット  作者: さだきち
第十一章:覚醒の連鎖(チェイン)と新生の鉄騎士たち

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第53話:一閃と重砲(じゅうほう)、完璧なる連鎖(チェイン)


「オラオラオラァッ!!」

咆哮と共に、クリストフが駆る流線形の三輪モービル『ブロード・カタナ-TR』が、光の尾を引きながら敵の『クイーン・シャーク』と『バルフィート』の陣列へと猛烈な勢いで突っ込んだ。


「くそっ、怯むな! 打ち倒せッ!」

敵の動揺をかき消すように、バルフィートの95mm魔導榴弾砲が、肉薄するカタナに向けて至近距離で火を噴いた。

――ズガァァァーンッ!!

凄まじい爆炎が上がる。しかし、その砲弾はカタナに直撃することはなかった。寸前にヴリトラの後部デッキから放たれたビームブラスターが、超高速で弾道を捉え、空中で完璧に撃ち落としたのだ。


「私の目の前で大砲を撃とうなんて、百年早いのよっ!」

ヴリトラのコックピットで、ヴァレリアがハンドルを握りながら勝ち誇ったように吠える。


「い、いや……それヴリトラの『全自動』高速迎撃システムが勝手にやったことで、あなたの操縦の成果ではないんですがね……」

助手席のバレルが、引きつった顔でボソッとツッコミを入れた。


「なっ……! 迎撃だけじゃなく、あの距離の味方への援護射撃まで同時にこなすというのか!?」

敵の搭乗員たちが驚愕に顔を歪める。「ええい、機銃だ! 機銃で叩き落として追い払え!」


バルフィートの銃座から激しい魔導銃の連射が浴びせられる。カタナの周囲で、『バウンダリー・ハル』が派手に光の粒子を飛び散らせた。だが、サイコ・ドライブで機体と精神を同調させているクリストフは、そんな火花を物ともせず、神速の身のこなしでバルフィートの側面へと回り込む。


「行っけぇぇぇ!!! エクスカリバーーーッ!!」


クリストフは直立姿勢のまま、両手に構えた二メートルを超える光の大剣『エクスカリバー』を全力で一閃した。光の刃が、バルフィートの分厚い装甲を容赦なく切り裂く。

バリバリバリッ!!! と、夥しい数の四角形の幾何学的な光が弾け飛び、戦場に凄まじい眩さを放った。


「な、何だあの一撃は!? あの光の剣、威力が無茶苦茶すぎるだろ!」

「報告! い、今の一撃だけで、我が方のバウンダリー・ハルを50%以上も削り取られました! 防御障壁が保ちません!」


「まだまだァ!」

バルフィートの完全な背後――死角へと回り込んだクリストフは、なおもエクスカリバーを激しく振り回し、凄まじい質量で敵のバウンダリー・ハルをガリガリと削り取り続けていく。


その様子を、最後尾から進む重戦車『ティーガー-IV』のコックピットから、フリントは極めて冷静に観察していた。モニターに表示されるカタナと敵機の魔力波形を瞬時に分析し、その正確な三次元位置情報を掴み取る。


(クリストフのカタナは右に旋回中……よし、ここだ!)

フリントはティーガーの巨大な主砲の仰角と旋回角を、魔導端末でミリ単位で微調整した。そして、背後で動き回るカタナに微塵も被害を与えない完璧な射線を割り出し、ついにその超大口径の主砲から必殺の一発を放った。

――ドゴォォォォォンッ!!!


凄まじい風圧と轟音。そして網膜を焼き尽くすほどの弾道光。かつてのロンカ帝国の主力戦車の名に恥じぬ、圧倒的に重厚な一撃が唸りを上げて空間を裂いた。

カタナによってすでにバウンダリー・ハルを極限まで削り取られていた敵のバルフィートは、その一撃をまともに喰らい、光の障壁ごと木っ端微塵に大破・爆発した。


「そ、そんな馬鹿な……! たったの一発で、我が方の重装甲駆逐車が!?」

クイーン・シャークの搭乗員たちが、カタナの圧倒的な近接削りと、ティーガーの正確無比な狙撃による恐るべき連携コンビネーションに戦慄する。


「お次は、そこのデカブツ(クイーン・シャーク)だぁ!」

完全に乗りに乗ったクリストフが、今度はクイーン・シャークの背後へと回り込み、再びエクスカリバーでバウンダリー・ハルを猛烈に削り始めた。

そこへ、流れるような動作でティーガーの次弾がクイーン・シャークの装甲を正確に撃ち抜き、敵をさらに絶望の淵へと追い込んでいく。


「ひいぃぃ! やめろ、来るなァ!」

クイーン・シャークのバウンダリー・ハル残量は、一瞬のうちに10%を下回った。


その隣の戦域では、トリスタンがその真価を発揮していた。

バギー『グラスホッパー-E4』のシートを高くせり上げたトリスタンは、遮るもののない高所から、ロングボウで無数に放たれた魔導矢の雨を、残る1台のバルフィートへと集中砲火していた。

バルフィートも必死に装備された魔導銃を撃ち返し、グラスホッパーやヴリトラのバウンダリー・ハルをわずかに削ってはいたが、すぐさまその3倍以上の圧倒的な反撃火力でヴリトラの魔導銃がやり返す。


そして――ドンッ! と、ティーガーの主砲が三度みたび火を噴いた。

直撃を受けた敵のフラッグシップ機、クイーン・シャークは、ついに巨大な爆炎を巻き上げて大破し、山道に崩れ落ちた。


「残るは、あのバルフィート1台……!」

フリントはすかさず最後の敵の魔力波形を分析する。しかし、現在の位置からティーガーの主砲を直射すると、前線で交戦中のグラスホッパーとヴリトラを爆風に巻き込むリスクがあることが判明した。


(だったら……これだ!)

フリントは即座にバルフィートの正確な座標情報をロックオンすると、別の兵装の起動スイッチを押した。

ガシャリ、とティーガーの車体側面に装備された特殊砲――ミサイルポッドのハッチが跳ね上がる。そこから、シュバババッ!と上空に向けて、数発の魔導ミサイルが鋭い煙の尾を引いて射出された。


魔導矢の集中砲火とヴリトラの魔導銃によって、すでに瀕死の全方位射撃を浴びていた最後のバルフィート。その頭上から、放物線を描いた止めの魔導ミサイルが、容赦なく垂直に降り注いだ。

――ドゴォォォォンッ!!!

最後のバルフィートが激しい爆炎を上げて粉々に砕け散り、ブランゼル王国の誇る精鋭駆逐部隊は、傷一つ負わない少年たちの前に完全全滅した。


「何だよ……こりゃあ。すごいもんを見ちまったぜ……」

急ごしらえの車両部隊とはとても思えない、それぞれの特性を極限まで活かした見事な連携に、バレルは驚嘆の声を漏らして呆然としていた。


その時、ヴリトラの居住区画に繋がる後ろの扉が音を立てて開き、イゾルデが悠然と姿を現した。

「ふん……珍しく、私の手助けは必要なかったみたいね」

イゾルデは美しい指先で、懐から取り出した逆時計のチェーンを弄びながら、つまらなそうに呟いた。


「あら、お姉さま? 私の運転はとっても安全ですので、後ろのベッドでそのままお休みになられていて結構ですのよ?」

ヴァレリアがルームミラー越しに、トゲのある不敵な笑みを浮かべる。


「もうここを出たら、私たちの飛空艇はすぐそこでしょ? だったらここで待たせてもらうわ」

イゾルデはふっと鼻で笑うと、クリストフたちが座っていた横向きのベンチシートに優雅に腰掛けた。


「そ、そうだな! 敵の増援が来る前にズラかるぞ。お前ら! また整列して飛空艇に戻るぞ!」

バレルが慌ててヴリトラの通信スピーカーから各車へ呼びかけた。


「了解!」

ガシャン! と小気味良い音を立てて、トリスタンがシートのレバーを戻し、グラスホッパーの座席を元の高さへと下げる。彼は充実感に満ちた顔でハンドルに手をかけた。


クリストフは光の刃を消したエクスカリバーを後ろのスロットへと収めると、愛機となったカタナのハンドルを愛おしそうにポンポンと叩いた。

「最高だな、こいつは……」

クリストフの顔からは、ニヤニヤとした笑みがどうしても止まらなかった。


4台のチャリオットは、再び砂煙のなかに静かに整列すると、巨大な飛空艇が静かに待つリングベル領の広場へ向かって、誇らしげにゆっくりと進路を戻していった。


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