表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャリオット  作者: さだきち
第一章:母の背中、遠き日の食卓

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/60

第2話:戦士たちの集い


村の広場は、夜の静寂の中に異様な熱を孕んでいた。

カトリーナがトリスタンの手を引いて向かうと、そこには彼女と同じ紋章を掲げた、四人の男たちが待ち構えていた。


「へえ、子連れってのは本当なんだな。まさか戦場にまで連れていくのか?」


声を掛けてきたのは、頭に鮮やかな青い布を巻き、乱れた金髪を覗かせた男だった。その視線は、カトリーナの背後に隠れる少年に注がれている。


「この子も一緒に戦うわ。悪い?」


カトリーナは、射抜くような鋭い視線を男に向けた。守るべき者がそばにいる時、彼女の警戒心は戦場そのものに変貌する。


「ダメに決まってんだろ! どっかに置いてけ。足手まといだ!」


横から声を荒らげたのは、やや背の低い、狡猾そうなキツネ目の男だった。トリスタンはその男を真っ向から睨みつける。三本の腕を持つ少年には、大人たちの侮蔑の気配を察知する野生のような鋭さがあった。


「まあ……いいじゃないか。連れていくと言うなら、彼女に任せよう。それなりの理由があるんだろうしな」


金髪の男が、キツネ目の男を制した。その声には、場を収める不思議な落ち着きがあった。


「さすがね、グレイ。話は聞いているわ。相当な剣の使い手だそうね。よろしく」


カトリーナが差し出した手を、グレイと呼ばれた男は静かに握り返した。


「おいおい、このスティック様を知らねえのか?」


キツネ目の男が、面白くなさそうに腕組みをする。だがカトリーナは、一瞥もくれずに言い放った。


「誰? そんな男、聞いたこともないわね」

「ふ、ふん! 無知な女だぜ」


鼻であしらわれたスティックは、顔を赤くしてそっぽを向いた。


「俺はライルだ。よろしくな」


もう一人の大柄な男、ライルが気さくに手を差し出し、カトリーナもそれを握り返した。


「じゃあ、これで全員か? 俺はジギー。悪いが、みんな付いてきてくれ」


年長の雰囲気を纏ったジギーが一行を促す。彼が案内した先には、村の外れにある巨大な洞窟があった。そこでは、怯えた表情の村人たちが身を寄せ合って待っていた。


「じゃ、私たちはここに隠れますので……」


洞窟の脇には、人の背丈を優に超える巨大な岩が転がっていた。村人が中に入ったら、その岩で入り口を塞いでくれというのだ。


「いいのか? こんな大きな岩で塞いだら、閉じ込められちまうんじゃ……」


グレイが懸念を示すと、村人の代表が申し訳なさそうに答えた。


「い、いや、中にも若い男たちが残っておりまして……内側から押して出るのは大丈夫なのです。ですが、この重い岩を引っ張って持ってくるのは、私たちだけでは無理でして……」


「なるほどな。で、あんたらを隠した後、俺たちはどうすりゃいいんだ?」


ライルの問いに、村人は頷いた。


「はい……村の集会所に、手付の金貨と食料を置いてあります。それは好きにしてください。残りの礼金は、バロールを倒した後にお渡しします」


その言葉を聞き、ジギーがパンと手を叩いた。


「よし、不満はないな。それじゃ、岩を動かすぞ! 手を貸してくれ」


男たちが一斉に肩を入れ、唸りを上げながら巨大な岩を押し転がした。ズズズ……と地響きを立てて、洞窟の入り口は完全に塞がれた。


「ふう、うまく隠れるもんだ」


スティックが額の汗を拭い、感心したように岩を見上げた。


やがて、トリスタンを含めた六人は、村の中央にある集会所へと足を踏み入れた。

広々とした室内には、焼きたての肉や酒が並べられ、テーブルの上には金貨の詰まった五つの革袋が置かれていた。


「せっかくだ、いただくか!」


ライルが待ちきれない様子で肉にかぶりつき、ジギーがグラスに酒を注ぐ。だが、カトリーナは自分の袋を一つ手に取ると、そのまま出口へと向かった。


「おい! どこに行くんだ?」


スティックが声を掛ける。


「私もトリスタンも食事は済ませたわ。どこかの空き家で、先に休ませてもらうわ」

「……やめたほうがいいと思うぜ?」


スティックが、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。カトリーナが眉を潜める。


「なんでよ?」

「本当に俺を知らないんだな。俺は『トラッパー』だ。村のそこらじゅうに、踏めばお陀仏の火薬を仕掛けてある。やみくもに動き回るより、まず俺の話を聞いてからにしたらどうだ?」


カトリーナは心底面倒だと言わんばかりに、大きなため息をついた。そして、手にした金貨の袋を無造作にテーブルに戻す。


「で? 早く話せば?」


椅子の背を蹴るようにして座ったカトリーナを囲み、即席の討伐隊たちは、明日訪れる「死神」を迎え撃つための作戦会議を始めた。

夜の帳が、さらに深く村を飲み込んでいく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ