第8話 臨時収入20万アデナの使い道は超節約!?【第1章 完】
いつも「エターナル・コネクト(エタコネ)」をご愛読いただき、ありがとうございます。
第1章の完結回となる第8話をお届けします。
どん底の現実から、ゲーム世界へ。
最強の力を手にしたケイと、相方のハル。
二人の「本当の冒険」がここから始まります。
腕相撲での臨時収入、そして……二人の距離が急接近(?)する、魔法の暴走をお楽しみください!
冒険者ギルドを後にしたケイとハルは、レーンの街の露店街へとやってきていた。
石畳のメインストリート沿いには、食料品から衣料品、怪しげな骨董品まで、ジャンルを問わず様々な露店がずらりと並び、まるで毎日のようにお祭りをやっているかのような、賑やかさだった。
先ほどの腕相撲の賭けで『20万アデナ』という思わぬ臨時収入が入ったため、二人はまず、当面の生活必需品を揃えるためにここへ来たのだ。
活気ある通りを歩きながら、ハルは目星をつけた店に片っ端から突撃し、大人顔負けの交渉術でガンガン値引きを迫っていた。
「おじさ〜ん、これ二つ買うから、もう少しおまけしてよ〜!」
「う〜ん、お嬢ちゃんには敵わないなぁ。よし、これでどうだい?」
可愛らしい8歳の容姿と、どこで覚えたのかという見事な話術のコンボ。その様子を後ろから眺めながら、(思ったよりもしっかりしてるんだな……)と、ケイは相方の頼もしさに感心しきりだった。
結局、二人は丈夫そうなリュックサックと革の財布を一つずつ、それに洗い替え用の衣服を何セットか購入した。あれだけ買い込んでも、ハルの値切りのおかげで合計は2万アデナほどで収まった。
街の物価を見るに、感覚的に『1アデナ=1円』相当の価値があるようだ。
もちろん、ケイのユニークスキルである『万物創造』を使えば、服やカバンを魔石から作り出すことも可能ではあった。
しかし、先ほどスライムの魔石を素材にして作ったシャツとズボンは、耐久性はあるものの生地がゴワゴワしており、肌に擦れてひどく着心地が悪かったのだ。
腕相撲の司会の男によれば、スライムの魔石の相場は1個10アデナ。現在二人が着ているシャツとズボンは、一組で魔石5個——つまり、たったの50アデナ分の価値で作られたものなのだから、着心地が悪いのも仕方がないと言えるだろう。
買い物の終盤、ハルが何やらケイに隠れるようにして、布屋で個別に買い物をしていたが、ケイは特に追及をしなかった。
元を正せば、この20万アデナはハルの規格外の【STR】によって稼ぎ出したお金だ。彼女の使い道に文句を言う権利など、自分にはないと思っていたからだ。
買い物を無事に済ませた二人は、今夜の宿をとるために、再び『コッコ亭』へと向かった。
* * *
「はい! いらっしゃい!」
『コッコ亭』の扉を開けると、女将さんの威勢のいい声が響き渡った。
夕時を迎えた1階の酒場は、昼間以上の大賑わいで、あちこちからジョッキをぶつける音や笑い声が聞こえてくる。
「おや、さっきのお嬢ちゃんたち! 泊まりかい? ちょっと待ってなよ!」
女将さんは二人を見るなりパッと顔を輝かせ、忙しく立ち回りながらも声をかけてくれた。
邪魔をしては悪いと思い、二人はカウンターの隅でおとなしく待つことにした。しばらくして客の手が空いたのか、額の汗を拭いながら女将さんがやってくる。
「お待たせ! 泊まりだね? 部屋は一緒でいいかい? 食事はどうする?」
相変わらずの豪快なマシンガントークで、女将さんが問いかけてくる。
「えっと、部屋は別々で、食事付きでお願いし——」
ケイが財布を取り出しながら答えようとした、その時だった。
「部屋は一緒でいいです!」
ハルが、ケイの言葉を遮るように大声で被せてきたのだ。
「えっ? ハル、どうして? お金ならいっぱいあるんだしさ……」
思わず問い返すケイ。しかし、ハルはジロリと彼を睨みつけ、ビシッと指を突きつけた。
「ケイ、贅沢はダメよ! 今日大金が稼げたのは、たまたま運が良かっただけなんだから! これからこの世界で生きていくのに、どれだけお金がかかるかわからないのよ? 節約できるところは、しっかり節約するの! わかった!?」
「は、はい……」
有無を言わさぬ迫力と、あまりに正論すぎる主張に、ケイは思わずタジタジになって首を縦に振った。
こうして、ケイとハルの『相部屋』での宿泊が確定したのだった。
* * *
「はい、ここがあんたたちの部屋だよ!」
女将さんに案内されたのは、2階の奥にある部屋だった。
広さは8畳ほど。質素だが清潔に保たれており、部屋の中央には大人サイズのベッドが『一つ』だけ備え付けられていた。お風呂とトイレは共同のものが廊下にあるので、そこを使っていいそうだ。
「食事は食べたくなったら、いつでも1階の酒場に降りてきな! すぐに温かいのを出してやるからね!」
女将さんは豪快に笑いながらそう言うと、バタンとドアを閉めて仕事に戻っていった。
長旅と慣れない環境での疲れもあり、二人は早速1階の酒場へと降りて夕食をご馳走になった。
メニューは、大きな煮魚に具沢山のスープ、新鮮なサラダ、そして焼き立てのパンのセットだった。何の魚かはわからなかったが、ホロホロとした白身は脂が乗っていて、味はかなりいけた。
(欲を言えば、パンよりもふっくら炊けた白いご飯が欲しいなぁ……)と、ケイは生粋の日本人らしいことを思いながらも、出された食事を平らげた。
食事の後は、共同浴場でそれぞれお風呂に入り、部屋へと戻った。
ホッと一息ついたのも束の間。ベッドに腰掛けていたハルが、急に深刻そうな顔つきになってケイを呼び止めた。
「え、えっと、ケイ……パ、……くれ……かな?」
「え? ごめん、何?」
声が小さすぎて聞き取れなかったので、ケイが聞き直す。
すると、ハルはボフンッと音がしそうなほど顔を真っ赤に染め上げ、両手で顔を覆いながら大声で叫んだ。
「パ、パンツを作ってって言ってるの!!」
「……え?」
ケイが固まっていると、ハルは今日露店街でコソコソと買っていた『肌触りの良さそうな白い生地』をベッドの上にバサッと広げた。
話を聞くと、一応市場で下着も購入したらしいのだが、この世界の大量生産品は麻などの粗悪な素材が多く、肌触りが最悪だったらしい。そこでハルは機転を利かせ、上質な生地だけを購入し、ケイの『万物創造』の力で着心地の良い下着を作ってもらおうと考えたのだ。
「わ、わかった。やってみるよ」
ケイは震える手で白い生地を受け取った。
(女の子の下着……女の子の下着……!)
冷静になれと自分に言い聞かせるが、中身は健全な17歳の男子高校生である。当然ながら、生の女の子の下着などマジマジと見たことなどない。
テンパったケイの脳裏に浮かんだのは、深夜アニメや漫画のラッキースケベシーンで見たことのある、いかにも『そういう』デザインの下着だった。
「万物創造!」
ボンッ、という軽い音と共に、生地が一瞬にして下着へと姿を変える。
「こ、これでいいかな……」
ケイは目を逸らしながら、出来上がった下着をハルに差し出した。
それを受け取ったハルは、わなわなと肩を震わせ、今度は怒りで顔を真っ赤にした。
「な、なによ、これぇぇっ!? いくらなんでも際どすぎでしょー!!」
ハルが手にしていたのは、黒のレースがふんだんにあしらわれた、面積の極端に少ないスケスケの勝負下着だった。
「バカ! 変態! むっつりスケベ!」
「ご、ごめん! わざとじゃないんだ!!」
その後、ケイは泣きそうになりながら何度もスキルを発動させられ、最終的には何の装飾もない『無地の純白のパンツ』を作ることで、ようやくハルの許しを得たのだった。
しかし、真の問題はここからだった。
部屋には、ベッドが一つしかないのだ。
「え、えっと……僕は床で寝るから、ベッドはハルが使ってよ」
ケイは男として、ここは女性に譲るべきだろうと気を利かせて提案した。
「何言ってるのよ。二人でベッドを使ったらいいでしょ? 今の私たちの体は小さいんだから、一緒に寝ても十分な広さよ」
「えっ!?」
まさかの返答に、ケイの心臓が大きく跳ねた。
「ほら、さっさと寝る!」
強引に腕を引かれ、結局反論しても無駄だと悟ったケイは、大人しく二人でベッドを使うことを了承した。
一つの毛布を被り、ベッドの中で背中合わせになって横になる二人。意識してしまって全く眠気が訪れないケイの後ろから、ふわりと柔らかい感触が押し付けられた。
ハルが、ケイの背中にぴったりと抱きついてきたのだ。
「ねぇ、ケイ」
「な、なに……?」
「ハルが『お姉ちゃん』として、これからずっと、ケイの事を守ってあげるからね」
「…………」
(一体いつから、ハルがお姉ちゃんになったんだろうか……)
背中から伝わる小さな体温と、少しだけ震えているハルの声。
彼女も強がっているだけで、本当は見知らぬ世界に放り出されて不安でいっぱいなのだろう。
(……俺も、もっと強くならないとな)
ケイはそっと目を閉じながら、相方の寝息を背中で聞きつつ、ゆっくりと眠りについた。
ケイとハル、たった二人きりの異世界生活は、こうして幕を開けたのだった。
——第1章 完——
第1章を最後までお読みいただきありがとうございました!
腕相撲で稼いだハルに、まさかの「勝負下着」を作ってしまうケイ。
二人の前途多難(?)な冒険は、まだ始まったばかりです。
次回からは、いよいよギルドの初依頼に挑む「第2章」がスタートします。
ケイとハルのコンビを応援したい!と思ってくださった方は、
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これからも二人の絆の物語を、よろしくお願いいたします!




