第7話 D級から始まる英雄の再来。受付嬢もギルドマスターも冷や汗を流す、規格外の冒険者登録
お読みいただきありがとうございます!
今回はついにギルド登録です。
8歳の子供二人が見せる「規格外」のステータスに、大人たちの反応は……?
いよいよ物語が大きく動き出します!
腕相撲の熱狂も冷めやらぬまま、ケイとハルは冒険者ギルドの登録カウンターへと向かい、列に並んだ。
ギルドで正式な冒険者登録を済ませなければ、依頼を受注してお金を稼ぐことができないからだ。二人の前には、これから登録をするであろう若者が三人ほど順番を待っていた。
体格や顔立ちから察するに、三人とも高校生くらい——転生前のケイやハルと同年代だろう。
その中に混じる8歳の幼女と少年は、どう見ても浮いていた。流石に、8歳での冒険者登録は早すぎるのだろうか。
そんな不安を抱きながら待っていると、思いのほか早く二人の順番が回ってきた。
「あら〜。可愛いボクとお嬢ちゃん! 何の用かにゃ?」
カウンター越しに愛想よく対応してくれたのは、頭にピンと立った猫耳を持つお姉さんだった。胸元の名札には『シンディ』と書かれている。お姉さんの名前だろう。
『エタコネ』の世界では、人間だけでなく獣人もごく普通に生活している。ケイにとってはゲームでお馴染みの光景だが、現実となると少しばかり感動があった。
登録カウンターに並んでいるのだから目的は明白なはずだが、やはり8歳の子供が本気で冒険者になりに来たとは思われていないようだ。
「えっと、冒険者登録をしたいの!」
ハルが元気よくシンディに告げる。
シンディは、ハルとその後ろにいるケイを交互に見比べた。
「え、えっとね〜。冒険者登録は8歳以上じゃないと出来ないんだにゃ。お嬢ちゃんはいけるかもしれないけど、そっちのボクはちょっと厳しいかにゃ……」
シンディは困ったように眉を下げ、言いにくそうに伝えてきた。
どうやら、ケイは8歳にすら見えなかったらしい。
確かにケイは、8歳という年齢を加味してもかなり小柄な体格をしていた。隣に立つハルと比べても身長は明らかに低い。
『低身長』というのは、現実世界におけるケイにとっても、長年抱え続けてきた深刻なコンプレックスだった。
(ステータスだけじゃなくて、そんなところまで忠実に現実を再現しなくてもいいのに……っ)
ケイは内心でシステムに対する理不尽さを呪った。
「ぼ、僕はちゃんと8歳ですよ!」
ケイは思わずムッとして反論した。
その不満げな態度を見て、シンディも自分が失礼な態度をとってしまったと気づいたらしい。
「あ、そうなんだ、ごめんね〜。じゃあ、さっそく冒険者登録の手続きをするから、二人とも順番にこの水晶に手をかざしてくれるかにゃ!」
シンディがカウンターの上に置かれた、透明な水晶玉を指差す。
まずは、ハルが元気よく水晶に手をかざした。
直後、水晶が一瞬だけ強い光を放つ。シンディは手元の資料から目を離し、光る水晶の奥を覗き込んだ。
「…………っ!」
一瞬、シンディの猫目が極限まで見開かれ、尻尾の毛がブワッと逆立った。しかし、ギルド職員としてのプロ意識か、彼女はすぐに平常の表情を取り戻す。
「は、はい! オーケーにゃ! ハルちゃん8歳、レベルは4にゃ! 登録完了にゃ!」
どうやら無事にハルの登録は完了したようだ。この水晶は手をかざすだけで、対象者の名前、年齢、そして現在のレベルが正確に読み取れる魔道具らしい。
「じゃあ、次は僕の番ですね」
続いてケイが水晶に手をかざす。
再び水晶が光り、シンディがその数値を覗き込む。
「…………っ!!」
またしても、シンディは大きく目を見開き、今度は息を呑む音まで聞こえた。しかし、彼女は小さく深呼吸をして、すぐに平常心を装った。
「は、はい! オーケーにゃ! ケイ君8歳、レベルは4にゃ! 登録完了にゃ!」
「ありがとうございます」
シンディはすぐに平常心に戻り、ケイの冒険者登録完了を告げた。
「じゃあ、まずは二人とも、この冒険者カードを受け取ってにゃ!」
シンディはそう言いながら、真新しいカードを一枚ずつケイとハルに手渡した。
ケイが受け取ったカードの表面には、こう記載されていた。
【名前】ケイ
【年齢】8
【レベル】4
【ランク】D
【賞罰】なし
「冒険者カードは身分証明証にもなるから、絶対に無くさないように注意してにゃ!」
シンディはさらに詳しいギルドの規則について説明をしてくれた。
この世界では、冒険者ギルドなら『冒険者カード』、商人ギルドなら『商人カード』といった具合に、各ギルドが発行するカードが公式な身分証明証として機能するらしい。そして、街の出入りにはこれらの身分証が必須となる。
つまり、先ほどハルがケイをお姫様抱っこして城壁を飛び越えて入ったのは、結果的に大正解だったというわけだ。もしあのまま真面目に城門まで回り込んでいれば、身分証を持たない不審者として、街の中に入れてもらうことすらできなかっただろう。
「じゃあ次は、ギルドのシステムの話をするにゃ! 大事な話だから、お姉さんの話をしっかり聞いとくのにゃ!」
次はギルドのシステムについての話だ。
ギルドのランクは下から順に、D、C、B、A、Sと分かれているらしい。新人は全員D級から始まり、依頼をこなして一定の貢献をすると、上のランクに上がれるそうだ。
ただし、ランクを上げるには専用の昇級試験を受けて合格する必要がある。また、安全面の理由から、受注できる依頼は自身の現在のランク以下のものに限られるという。
この辺りのシステムは、ゲームのエタコネとほぼ同じ仕様だった。
ランクを上げるために、面倒な昇級クエストを何度も受けていたことを思い出すケイとハルだった。ちなみに、ゲーム内での二人は当然ながら最高位のS級冒険者だった。
「「ありがとうございました!」」
一通りの説明を受け終えたケイとハルは、親切にしてくれたシンディにお礼を言い、冒険者ギルドを後にした。
* * *
ケイとハルが冒険者ギルドを後にした、10分後。
冒険者ギルドの最奥に位置するマスター室では、一人の男が黙々と腕立て伏せに励んでいた。
「ふぅ……! これで我が体に、一段と磨きがかかったな!」
流れ落ちる汗を拭いながら満足げに笑う男。立派な鬣を持つライオンの獣人であり、元A級冒険者にして、現在は冒険者ギルド・レーンの街支部のギルドマスターを務めるライオットである。
コンコン!
部屋の扉がノックされる。だが、ライオットが返事をするよりも前に、勢いよく部屋の扉は開かれた。
「むぅ〜! 相変わらず、汗臭い部屋にゃ〜!」
鼻をつまみながら入ってきたのは、先ほどケイとハルの冒険者登録をしたシンディだった。
「シンディ……その部屋のノック、何も意味ないだろ?」
ノックされた瞬間に部屋のドアが開いたのだ。確かに意味は全くないだろう。
「それよりもマスター! 大変な話なのにゃ!」
ライオットの話を聞く気など全くないのか、シンディは血相を変えて話し始める。
「さっき、ケイとハルって8歳の子の冒険者登録をしたにゃ!」
「それがどうした? 確かに8歳で冒険者登録は早い気もするが、たまにいるだろ?」
「登録した時に表示されたステータスが、とんでもなかったにゃ!」
ただ事ではないシンディの様子に、ライオットも真剣な顔つきになる。
「ほぅ? 詳しく話してみろ」
「まず、ハルって子にゃ! レベルは4だったけど……ステータスはレベル100相当、中でもSTRとAGIは数値が高すぎて見えなかったにゃ!」
「何? あの水晶は999まで見れるはずだろ? と、いうことはSTRとAGIは1000以上ということか?」
「そ、そうなるにゃ! 次にケイって子もレベル4でステータスはレベル100相当、で、こっちはINTとDEXの数値が見えなかったにゃ!」
歴戦の猛者であるライオットの額に、タラリと冷や汗が伝う。
「ほぅ……二人揃ってか。しかし、レベル100相当とはな。世界でもトップクラスのステータスということだな」
「ど、どうするにゃ?」
「どうするも何も、どうにも出来んだろ。害をなす者でなければ、それでよし! 害する者ならば……S級冒険者への依頼が必要かもな。とりあえずは様子を見ることにしよう」
「わ、わかったにゃ!」
慌ただしく報告を終え、シンディが部屋を出た後。
誰もいなくなったマスター室で、ライオットは一人静かに呟いた。
「ケイとハル……100年前の英雄の再来か?」
第7話をお読みいただきありがとうございました。
レベル4なのにステータスが測定不能(999オーバー)……。
ここから二人の本当の冒険が始まります!
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