第4話 ステータスは自己鍛錬!? 立ち塞がる城壁!
第4話をお読みいただきありがとうございます!
「レーンの街」に到着した二人。
目の前に立ちはだかる高い城壁を前に、二人はある決断をします。
元プレイヤーならではの(?)大胆な街への入り方とは……。
どうぞお楽しみください!
最初の目的地であるレーンの村へと向かいながら、ケイは頭の中で現在の自分たちの能力値について考察を巡らせていた。
『エタコネ』のゲームシステムでは、レベルが上がると各ステータスに一定の基礎値が自動で振り分けられる。それに加え、プレイヤー自身が任意のポイントを消費して、好きなステータスを底上げできる自由度の高い育成システムが採用されていた。
後衛で魔法攻撃を主体としていたケイは、魔法の威力が直結するINT(賢さ)と、詠唱速度を極限まで早めるDEX(器用さ)にポイントを一点集中させていた。
対して、前衛の物理アタッカーであったハルは、純粋な物理攻撃力を高めるSTR(力)と、攻撃回数や回避力に影響するAGI(素早さ)を徹底的に強化していたのだ。
先ほどハルがスライムを乱獲したおかげで、二人のレベルはすでに4まで上がっている。もしゲーム時代と同じ仕様なら、任意のステータスポイントが溜まっているはずだが——ケイがいくら念じても、ポイントを振り分ける画面はおろか、自身のステータスを、詳細な「数値」として確認する項目すら見当たらなかった。
「ん〜、やっぱないな〜」
「何が?」
思わずこぼれたケイの独り言に、隣を歩いていたハルが首を傾げるので、ケイは自分の考えていた事を彼女に伝えた。
「やっぱ、ここはもう現実世界なんだよ。レベルアップによる基礎値の底上げはあるにしても、それ以上の『+α』の部分は、自分たちの努力で伸ばせってことじゃないかな? STRを上げたければ筋トレや素振りをしたり、INTを上げたければ魔導書を読んで勉強したりって感じでさ」
「なるほど……!」
ハルの考察を聞き、ケイはポンと手を打って納得した。
確かに、ステータスの数値が『レベルアップのポイント割り振り』だけで決まってしまうなら、魔物を狩る以外に己を鍛え、成長させる手段が存在しないことになる。ここはリアルな異世界なのだ。自らの肉体と頭脳を使った鍛錬こそが、最強への道標になるのだろう。
そんな考察を交わしながらしばらく歩き続けると、ようやく二人の眼前にレーンの村らしき建造物が見えてきた。
「ねぇケイ……ここ、本当にレーンの村?」
「ち、違うかも……」
二人が足を止めて絶句するのも無理はなかった。
目の前には、高さ3メートルは優にある頑丈な城壁がぐるりと立ち塞がっていたのだ。
3メートルといえば、巨大な要塞の城壁と呼ぶには決して高くはない。だが、スライムなどの低級魔物や不審者の侵入を物理的に防ぐには、十分すぎるほどの防壁である。
二人の記憶にある『レーンの村』は、決してこんな物々しい城壁に囲まれた場所ではなかった。緑豊かで、のどかで平和な始まりの村——それが二人の共通認識だったのだ。
「えっと、入れる場所を探して、城門まで回り込まないといけないのかな?」
見上げるような壁を前に、ケイが途方に暮れたように呟く。
高さ3メートル。成人した大人であっても、道具なしでこれを乗り越えるのは至難の業だ。ましてや、今のケイとハルの体は8歳の子供サイズである。普通に考えれば、この壁をよじ登るのは不可能に近い。
しかし、ここから左右を見渡しても、村の入り口となる城門の場所は確認できなかった。壁沿いに歩くとなれば、まだかなりの距離を移動する必要がありそうだ。
ケイが今後のルートを考え始めた、その時だった。
「面倒だから、ここから入ろうよ!」
ハルがそう明るく言い放つなり、軽く助走をつけて城壁に向かって跳躍した。
ケイは自分の目を疑った。
ハルの小さな体は、まるで重力を無視したかのようにふわりと宙を舞い、5メートル近い高さを軽々と跳び上がって、そのまま城壁の上へと見事に着地してみせたのだ。
「行けたよ! ケイもおいでよー!」
城壁の上から、ハルが屈託のない笑顔で手を振っている。
「う、うん……っ」
強化されたステータスなら、自分にもいけるかもしれない。
そう考えたケイは、ハルの動きを真似て強く地面を蹴り、城壁へと向かってジャンプした。
しかし——虚しく宙を掻いたケイの体が到達したのは、せいぜい2メートルほどの高さまでだった。そのまま重力に従い、ズサッと無様に地面へ着地する。
8歳の子供が垂直跳びで2メートル跳躍したと考えれば、常識外れの驚異的な身体能力であることには違いない。腐っても、レベル200の半分のステータスを受け継いでいるのだから。
だが、前衛特化でSTRとAGIを極限まで高めていたハルの超人的な身体能力と比べると、後衛特化だったケイの筋力・瞬発力は明らかに劣っていた。後衛のジャンプ力では、自力でこの城壁を越えることは不可能なのだ。
「もう、仕方ないな〜」
下で悪戦苦闘するケイを見て、ハルは呆れたように笑うと、躊躇いもなく3メートルの城壁から飛び降りた。
そして、唖然とするケイの体にスッと腕を回すと、なんとそのままヒョイッと『お姫様抱っこ』の体勢で抱え上げたのだ。
「えっ、ちょっ……!?」
「しっかり、つかまっててね!」
中身は17歳の男子高校生である。それを、8歳の幼女(中身は同級生の女子)が事もなげに抱え上げているという異常な構図。ケイが羞恥に顔を真っ赤にして抗議する間もなく、ハルは再び城壁に向かって力強く跳躍した。
ストンッ!
ケイを抱えた状態でも、ハルは全くバランスを崩すことなく見事に城壁の上へと着地する。そして休む間もなく、そのまま村の敷地内へと向かって軽やかに飛び降りた。
「ふぅ、上手くいったね!」
ケイを地面に下ろしたハルは、一切息を切らすこともなく、清々しい笑顔で汗を拭った。
「じゃあ、行こうか!」
「う、うん……」
(この子……絶対に怒らせちゃダメだ……)
ケイは、ハルの規格外のパワーと圧倒的な身体能力を前に、本能的な恐怖と畏敬の念を抱きながら、スタスタと先を歩く相方の背中を大人しく追いかけるのだった。
第4話までお読みいただきありがとうございました!
まさかの「正面突破」ならぬ「頭上突破」。
ハルの前衛特化ステータスが、思わぬ形でお披露目となりました。
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