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エターナル・コネクト 〜陰キャの俺がゲーム世界に転生したら〜  作者: K
第2章 レーンの街編

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第21話 水辺の修羅場と、ハルの厨二病新スキル

第21話です。

水辺で巻き起こる(自業自得な)修羅場と、ハルの新しい「中二病全開」なスキルにもご注目ください!



「何、何、何、何事!?」


 森の静寂を切り裂くような甲高い悲鳴を聞きつけ、ハルは血相を変えて茂みを飛び出した。

 何か強力な魔物に襲われたのか。それとも罠にかかったのか。最悪の事態を想定して魔力を練り上げていたハルだったが、水辺にたどり着いた彼女の目に最初に飛び込んできたのは——一糸纏わぬ姿で胸元を隠し、顔を真っ赤にしているルカの姿だった。


(えっ? ルカ……女の子だったの?)


 整った顔立ちや華奢な体つきから、中性的な美少年だとは思っていた。しかし、水面に照らされたその身体は、紛れもなく女性のものだった。

 だが、今のハルにとっての最大の問題はそこではない。


 ルカのすぐ目の前。

 同じく一糸纏わぬ全裸の姿で、ぽかんと口を開けて立ち尽くしているケイの存在だ。


「ケ、イっ! あんた何やってるのよ!!」


 パシィィィィンッ!!


 森中に響き渡るような、痛烈にして完璧な平手打ち。

 ハルの右手が、ケイの頬にクリーンヒットした。

 どんな事情があろうとも、この絶対的な状況下においては、男であるケイが悪者になる運命(さだめ)だった。


* * *


「ひどいよ、ハル……。いくらなんでも理不尽じゃないか。ハルだって、さっきまでルカのこと男だと思ってたんだろ……?」


 真っ赤に腫れ上がった左頬をさすりながら、服を着終えたケイがぐちぐちと文句を垂れる。

 だが、ハルは腕を組んで冷ややかな視線を下ろした。


「何よ! 男だと思ってたのは事実だけど、あんた、ジロジロとルカの体を見てたじゃない! あんなに見つめる必要がどこにあるのよ!」


「うっ……」


 ハルの痛いところを突く反論に、ケイは言葉に詰まった。

 ジロジロと見ていたのは、紛れもない事実だったからだ。ケイの精神年齢は十七歳。思春期真っ只中、しかも健康優良な男子高校生である。同い年くらいの美少女が目の前に一糸纏わぬ姿で現れれば、本能的に視線が釘付けになってしまうのは、悲しいかな男の(さが)というやつだった。


「まぁまぁ、二人とも落ち着いてよ」


 険悪な空気を発する二人の間に、苦笑いを浮かべたルカが割って入った。

 彼女もすっかり服を着込み、いつもの「美少年」の出で立ちに戻っている。


「あの時は不意打ちでびっくりして叫んじゃったけど、ボクは全然気にしてないからさ。それに……」


 ルカはケイの小さな身体を上から下まで眺めると、クスッと笑った。


「ケイはまだ8歳の子供だしね。弟に見られたようなものだから、平気平気」


(うぐっ……!)


 気にしていないというフォローはありがたいが、その理由が「子供だから(=恋愛対象外だから)」というのは、精神年齢十七歳のケイにとって、ビンタとは別の意味で心に深く突き刺さる一撃だった。


* * *


「ルカは、『グルナの迷宮』には行ったことがあるの?」


 気まずい空気を誤魔化すように、森の奥へと進みながらハルが話題を振った。


「うん。迷宮の中は宝箱が定期的に復活するから美味しいんだよね。中身を回収しても、迷宮自体の魔力濃度が高いから、一定時間が経過するとまた新しいアイテムやお金が入った宝箱が現れるんだ。ボクは金策のために、何度か通ったことがあるよ」


 ルカの言葉に、ケイとハルは感心した。

 ゲーム『エタコネ』でも、ダンジョンの宝箱が時間経過で復活するシステム(いわゆるリポップ)は存在していたが、この現実世界でもそれが適用されているらしい。冒険者にとって迷宮が危険でありながらも魅力的な理由がよくわかる。


「ルカ、ここから迷宮まではあとどれくらいかかるの?」


「ん〜。ここからだと、あと二時間くらい歩くかな」


「えっ……結構かかるね……」


 ハルがげんなりとした声を漏らす。

 依頼や金策で訪れる冒険者が多いため、『グルナの迷宮』までの道は、雑ながらも一応の舗装がされており、森の中の道なき道を進むよりは遥かに歩きやすかった。

 それでも、「徒歩二時間」という物理的な距離の壁はあまりにも大きい。


((やっぱ、ゲームみたいに簡単にはいかないんだよね……))


 ゲームであれば、コントローラーのスティックを倒して数分、あるいはファストトラベルで一瞬で到着する場所だ。しかし現実の肉体で進むとなると、かなりの時間と体力を削られる。二人は改めて、現実世界の厳しさを痛感していた。


「あ! いい事思いついた!」


 その時、突然ハルがポンと手を打った。

 彼女の目が、悪戯を思いついた子供のようにキラキラと輝いている。


「二人とも、ちょっと待っててね! 顕現せよ——『魔法の絨毯(マジック・カーペット)』!!」


 ハルが厨二病全開のオリジナルスキル名を高らかに叫ぶ。

 次の瞬間、彼女の周囲をフワフワと浮遊していた『虹彩の種子(プリズム・シード)』が凄まじい勢いで集束し始めた。何十、何百という光の種子が空中で平たく編み込まれ、あっという間に一枚の巨大な光の絨毯を形成する。


「さぁ、乗って!」


 ハルが身軽に飛び乗ると、絨毯は彼女の体重をしっかりと支えて宙に浮いたままだった。

 ケイとルカも、恐る恐るその不思議な絨毯の上に腰を下ろす。


「しっかり掴まっててね。——出発!」


 ハルの号令と共に、絨毯はふわりと上空高くへと舞い上がった。

 木々の梢を抜け、森を見下ろす高度に達したかと思うと、強烈なG(重力加速度)を伴って一気に前進を開始した。


「ひゃあああああっ!?」


 ルカが悲鳴を上げ、ケイは必死に絨毯の端にしがみつく。

 凄まじい風切り音と共に、森の景色が後方へと飛ぶように流れていく。ハルが思いつきで生み出した移動手段は、常識を軽く置き去りにするスピードを誇っていた。


 そして——わずか五分後。


「到着!」


 猛スピードで空を駆け抜けた魔法の絨毯は、『グルナの迷宮』の入り口にあたる巨大な石造りの門の真ん前に、ピタリと音もなく着陸した。

 徒歩で二時間かかるはずの距離を、たったの五分で走破してしまったのだ。


「……ハル。これ、便利すぎるけど、危なくないかな?」


 風でボサボサになった髪を押さえながらケイが呟くと、ハルは得意げにピースサインを作って見せたのだった。


第21話を読んでいただきありがとうございます!


ハルの強烈なビンタ……ケイにはちょっと同情しますが、あそこは「不可抗力」ということで(笑)。

そして新スキルの『魔法の絨毯』。移動が格段に楽になりそうですね。


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