第2話 8歳の姿でサバイバル開始!
前回のラスト、無慈悲に異世界へと放り出された圭と陽菜。
気がつくと、そこは見渡す限りの平原。
しかも、二人の姿は……!?
17歳の精神と、8歳の肉体。
そして「全裸」という最悪のコンディションから、二人のサバイバルがいよいよ幕を開けます!
次に圭が目を覚ました時、視界に広がっていたのは見渡す限りの青い平原だった。
爽やかな風が吹き抜け、遥か遠くには小さな村らしき影も見える。
体を起こして自身を見下ろすと、妖精リリィの宣言通り、圭の肉体は8歳の頃の姿へと若返っていた。
だが、最も深刻な問題はそこではない。
圭の体は相変わらず一糸纏わぬ状態——つまり全裸のままだったのだ。
「……やっぱりか」
ため息をつきながら周囲を見渡すと、すぐ近くの草むらに一人の少女が倒れていた。
それは8歳の姿まで若返った七瀬 陽菜だった。圭と陽菜は小学校も同じだったため、幼い頃の面影を残すその姿を見ればすぐに彼女だと分かった。
彼女もまた、圭と同じく一糸纏わぬ姿である。しかし、圭の姿は8歳だが、精神年齢は17歳。さすがに8歳の少女の裸体を見ても変な感情は湧いてこなかった。
「ん……」
不意に、陽菜の睫毛が揺れ、ゆっくりと目が開く。
そして、自分を見下ろしている圭の姿と、スースーする自身の状態に気づいた瞬間——。
「キャーーーーッ! 何見てるのよ! あっち向いてよ!」
「ご、ごめん、七瀬さん」
圭は慌てて背を向けた。
見る側としては特に感情が湧かなくとも、見られる側である陽菜からすれば堪ったものではないのだろう。
しばらく時間が経ち、ようやく陽菜が落ち着きを取り戻した。
二人は背中合わせのまま、体育座りで話し合いを始める。
「佐藤くん、これからどうしよう……? こんな格好じゃ、どこにも行けないし」
陽菜の声は涙ぐんでいた。リア充だった彼女にとって、全裸で野原に放り出されるなどという状況は絶望でしかない。
「えっと……ここが『エタコネ』の世界なら、ステータスとか見れるのかな? スキルや魔法で魔物を倒して、毛皮でも手に入れて身につけるのはどうだろう」
圭が冷静に提案すると、陽菜も鼻をすすりながら同意した。
圭は心の中で強く『ステータス』と念じた。
なぜそうすればいいのかという根拠はなかったが、長年のゲーマーとしての直感がそう告げていたのだ。
すると、圭の脳内に半透明のウィンドウが浮かび上がった。
「「できた!」」
二人の声が見事に重なる。どうやら陽菜も同じようにステータス画面を開けたようだ。
頭の中に表示されたウィンドウには、名前は『ケイ』、年齢は『8歳』と記載されている。
その横にはコマンドらしき項目があり、【魔法】、【スキル】、【その他】と書かれていた。
ゲーム時代にあったはずの『道具』や『装備』のコマンドは見当たらない。道具は直接手に取って使い、装備は実際に服として着ろということなのだろう。より現実的になった証拠だ。
圭はまず、【魔法】と念じてみた。
——見事なまでに空欄だった。
転生前の圭は全ての魔法を網羅していたが、完全に初期化されている。
『エタコネ』において、魔法やスキルはレベルアップで自動的に覚えるものではない。魔導書を読み解くか、誰かに師事してもらい修行することで初めて習得できるのだ。また一から覚え直すとなると、かなり骨が折れる作業になる。
次に、【スキル】と念じてみた。
——こちらも完全に空欄。
どうやら通常のスキルも全て失われているようだ。妖精リリィは『ユニークスキルを覚える』と言っていたが、どういうことだろうか。
最後に、圭は【その他】の項目を開いた。
【加護】
リリィの加護
【ユニークスキル】
万物創造
「ようやく出てきた……」
圭は安堵の息を吐き、詳細を確認するためにそれぞれの項目を念じた。
『リリィの加護』は、取得経験値が3倍になるという破格の効果だった。これから一からレベリングをしなければならない状況を考えると、非常にありがたい恩恵だ。
そして、最も重要なユニークスキル『万物創造』。
詳細はこうだ。自身の想像した物体を創り出すことができる。ただし、生成には何らかの『触媒』が必要であり、創り出せる物の規模や質は使用者の『魔力量』に依存するらしい。
現在レベルは1だが、転生前のレベル200だった頃のステータスが半分引き継がれているはずだ。圭の魔力量は、レベル1の常識を遥かに凌駕しているはずだ。間違いなく、このサバイバルにおいて非常に有用なスキルとなるだろう。
「七瀬さん、確認した?」
「うん」
お互いに情報交換を行う。
陽菜も圭と同じく魔法とスキルは空欄で、経験値3倍の『リリィの加護』がついていた。
そして彼女のユニークスキルは『虹彩の種子』。あらゆる形状に変化可能な魔法の種子を飛ばすという能力らしい。今はまだ具体的な使い道は分からないが、ユニークスキルである以上、間違いなく強力な切り札になるはずだ。
そして、もう一つ確認しておかなければならないことがあった。
「え、えっと……七瀬さん。パーティーって組めるのかな?」
「わからない。申請、送れる?」
「やってみるね」
『エタコネ』ではパーティーを組むことで経験値が公平に分配され、パーティーチャットが使用可能になる。これから行動を共にするなら必須のシステムだ。
圭は心の中で『パーティー申請』と念じてみた。
「……どう?」
「ううん、何も起きないね」
システムが機能していないのだろうか。
「もしかしたら、相手の姿を直接見ながら念じないとダメなのかな?」
「ち、ちょっと待って! こっち見ちゃダメ! ハルが申請送るから!」
圭が振り返ろうとするのを、陽菜が必死の声で制止する。
(七瀬さんがこっちを見るのはいいんだ)
圭がそう思った直後、頭の中にシステムメッセージが響いた。
『ハルからパーティー申請が届きました。受諾しますか?』
圭が『はい』と念じると、視界の左上に小さく『ハル』という名前とHPバー、MPバーが表示された。どうやら無事にパーティーを組めたようだ。
しかし、ゲーム時代のように念話でのパーティーチャットは使えなかった。どうやら、純粋に経験値を共有するだけの機能に制限されているらしい。
とりあえずシステム的な準備は整った。
しかし、二人が『全裸の8歳児』であるという根本的な問題は何も解決していない。
どこまでも広がる青い空の下、この絶望的な状況からどうやって生き延びるべきか。草むらの中で背中合わせに座りながら、圭と陽菜は深く頭を抱えるのだった。
第2話をお読みいただき、ありがとうございます!
まさかの全裸スタート……。8歳の二人には過酷すぎますが、ここで判明したそれぞれのユニークスキルがどう活かされていくのか、ぜひご注目ください。
圭の『万物創造』で最初に創り出すものは何なのか……?
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