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エターナル・コネクト 〜陰キャの俺がゲーム世界に転生したら〜  作者: K
第1章 プロローグ

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第1話 転生の宝玉と利用規約の罠。ログアウト不可の本当のエタコネ世界へ

初めまして、あるいは『エタコネ』の世界へようこそ。

本作を手に取っていただき、ありがとうございます。


現実では過酷な環境に耐える高校生の圭。

けれどゲームの中では最強のトッププレイヤー「ケイ」。

相方の「ハル」と共に、ついに『転生の宝玉』を使う決意を固めるが……。


「利用規約」の裏側に隠された、残酷で、けれどワクワクが止まらない冒険の幕開けです。

どうぞ最後までお楽しみください!



『エターナル・コネクト』——通称『エタコネ』。

全世界で爆発的な大ヒットを記録している、MMORPG(多人数同時参加型たにんずうどうじさんかがたオンラインRPG)である。

高校2年生の佐藤(さとう) (けい)は、その世界に毎日ログインしていた。


現実世界での彼の生活は、控えめに言っても(みじ)めなものだ。中学時代はただの目立たない陰キャであったが、高校に入学してからは状況が一変した。毎日のように殴る蹴るの理不尽な暴行を受け、時には全裸で廊下を走らされるといった、悪質極まりないイジメを受けていたのである。


しかし、そんな彼でも『エタコネ』の世界では眩いほどに輝いていた。

レベルは当然のごとく上限の200(カンスト)。装備も最上級品を揃え、全プレイヤーの中でもトップ5に名を連ねるほどの圧倒的な実力者だった。


「おはよー、ケイ!」


エタコネのログイン広場で、屈託のない明るい声が響く。声の主はハル。ケイの相方とも呼べる存在だ。

ちなみにケイとは、佐藤 圭のゲーム内でのキャラクターネームである。以前、野良のパーティーで一緒になった際、驚くほど息が合い、それ以来行動を共にしている。


中身は恰幅(かっぷく)の良いおっさんかもしれない——そんな一抹の不安はあえて思考の隅に追いやる。きっと可愛らしい女の子に違いないと、圭は密かに信じ込んでいた。一方のハルも、ディスプレイの向こう側で現実の圭が酷いイジメに遭っていることなど露知らず、頼もしい相方との冒険に無邪気な胸を躍らせているのだった。


本日の二人の目的は、エタコネ内でも最難関と名高いダンジョン『アビス・ホール』の攻略だ。

難易度に比例して報酬も破格である。今日も順調に敵を討伐し、かなりの額を稼ぎ出していた。

そして、激闘の末に中ボスを見事撃破。

巨大な魔物のポリゴンが砕け散り、跡には大量のドロップアイテムが散乱した。


「うまー!」


ハルが歓喜の声を上げる。彼女の機嫌は最高潮に達していた。

二人は手分けしてアイテムを回収していく。その最中、ケイは見慣れない一つのアイテムを発見した。

名称は『????』。ケイは即座に【鑑定(かんてい)】スキルを発動した。


転生(てんせい)宝玉(ほうぎょく)

効果:使用すると転生する。

(転生後はレベルが1になり、ステータスは半減する。ユニークスキルを獲得)


それは、常識を覆すほどに強力なアイテムだった。

レベルが1に戻るデメリットは痛いが、初期ステータスが現在の半分もある状態でレベルを上げ直せば、最終的には今とは比較にならないほどの強さを手に入れられる。何より『ユニークスキルを獲得』という一文が目を引いた。

ユニークスキルとは、一部の強力なNPCノンプレイヤーキャラクターのみが(あやつ)る絶大な力を持つスキルだ。プレイヤーが取得できたという報告は、未だかつて存在しない。


「ケイ、これなんだろー?」


少し離れた場所から、ハルももう一つの『転生の宝玉』を見つけ出していた。

二人は顔を見合わせる。とりあえず、その場で使用するのは控え、アイテムを持ち帰ることにした。こんな危険地帯でレベル1になってしまえば、帰りの道中でモンスターの餌食になるのは明白だからだ。


安全圏の街へと戻った二人は、密談用の個室に入った。


「これ、どうする、ケイ?」

「やっぱ、使ったほうがいいよね」


相談の結果、二人の意見は一致した。これほどのロマン(あふ)れるアイテムを使わない手はない。


「じゃあ、使うね!」

「待って!」


早々にアイテムを使おうとするハルを、ケイが慌てて制止する。


「もしかしたら、装備品をロストする可能性もある。だから装備全部外してから使おう!」


念には念を入れるべきだ。ケイの提案にハルも大きく頷いた。

『エタコネ』はグラフィックが無駄にリアルで、装備品は下着の部位まで詳細に設定されている。全てを外せば当然一糸纏わぬ姿になるが、システム上の配慮として局部には不可視のモザイク処理が施されるため、その点は安心であった。


装備を完全に外し、生まれたままの姿ただしモザイクありになった二人は、いよいよ『転生の宝玉』を使用する。

すると、目の前に半透明のウィンドウが出現した。


「なにこれ?」


それは長々とした利用規約のような文章だった。一番下に『同意しますか?』というチェックボックスがあり、そこを埋めないとアイテムは発動しない仕組みのようだ。レベルが1に初期化されるという重大なペナルティがあるため、システム側で同意を求めているのだろう。


「大丈夫だよ! 同意して使おう!」

「うん!」


何の疑いもなく、二人はチェックボックスに印を入れ、承諾ボタンを押した。

直後、システム音が鳴り響き——圭の意識は、深い闇の底へと急速に遠のいていった。


ーーーーーーーーーー


 圭が意識を取り戻すと、そこは壁も床も真っ白な無機質な空間だった。

窓も照明器具もないというのに、空間全体が不思議な明るさに満ちている。

そして何より異常なのは、己の体が一糸纏わぬ状態——つまり全裸であることだった。


「……っ!」


自身の状況を把握するよりも先に、圭の目に飛び込んできたのは、目の前の床に倒れている一人の少女の姿だ。

見間違えるはずもない。七瀬(ななせ) 陽菜(はるな)——圭の中学時代の同級生である。

明るく天真爛漫な性格で、剣道部に所属し全国大会で優勝したこともあるほどの猛者。学校での人気は非常に高く、陰キャな圭からすれば、まさに高嶺の花と呼ぶべき存在だった。

彼女とは中学の三年間、ずっと同じクラスだった。とはいえ、住んでいるカーストが違いすぎたため、ただの一度も口を利いたことはなかったのだが。


その七瀬陽菜が今、目の前で一糸纏わぬ姿で倒れている。

圭は陰キャとはいえ、健康的な17歳の男子だ。異性の体に興味がないわけがない。

ゴクリと唾を飲み込み、吸い寄せられるように陽菜へと近づく。剣道で鍛えられたしなやかで美しい肢体が、無防備に晒されていた。


(少しだけなら……)


魔が差したのだろう。圭がその白い肌に触れようと手を伸ばした、まさにその瞬間——陽菜の長い睫毛(まつげ)が揺れ、ゆっくりと目が開いた。


「ん……んん……?」


陽菜は寝ぼけ眼を擦りながら、ゆっくりと上体を起こす。

そして、目の前に立つ圭の姿を、上から下へとゆっくり見上げていき——最後に圭の股間へと視線が止まった瞬間、彼女の顔が茹でダコのように真っ赤に染まった。


「きゃあああああああっ!?」


鼓膜が破れんばかりの悲鳴が真っ白な部屋に響き渡る。一瞬でシラフに戻った陽菜は、同時に自身の『涼しすぎる状態』にも気づいたようだ。


「う、うそっ!? きゃあああっ!」


さらに顔を赤くし、陽菜は慌てて両腕と膝で己の体を隠すようにうずくまる。心臓が早鐘のように打ち鳴らされ、パニックで頭が真っ白になっていた。


「え、えっと、確か……佐藤くん!? なんなのこれ!? てか、あっち向いてよ、変態っ!」


どうやら陽菜は、陰キャである圭のことをしっかりと覚えていたようだ。三年間も同じクラスにいれば、いくら言葉を交わさなくとも名前と顔くらいは記憶に残っているものらしい。


「ご、ごめん……っ!」


圭は弾かれたように背を向けた。

お互いに背を向け合い、赤面しながらもどうにか状況を整理していく。

ゲーム内で最強の相方だった『ハル』の中身が、まさかあの大人気の同級生、七瀬陽菜だったとは。

陽菜もまた、圭と同じく『転生の宝玉』を使ったら意識を失い、気づけばこの謎の空間に全裸で転がっていたのだという。


「……なるほど。そういうことだったんだ」

「ちょっと、まだこっち見ないでよ!」


そんな風に、背中合わせでぎこちなく状況を整理していると。


「コホン!」


不意に、可愛らしい咳払いが聞こえた。

二人が声のした方向へ恐る恐る視線を向けると、そこには宙に浮かぶ小さな妖精がいた。


「そろそろいいかな? てか、二人ともなんで服を着てないの? もしかして、わざわざ装備を全部脱いでから『転生の宝玉』を使った?」


呆れたような妖精の言葉に、二人は首を傾げる。


「えっと、どういうことかな?」


戸惑いながら陽菜が尋ねた。


「んとね、ここには『エタコネ』で身につけてた装備品をそのまま着て来ることになるからさ。服を着てないってことは、アイテムを使った時に何も装備してなかったってことでしょ?」


なるほど、と圭は合点がいった。ロストを恐れて下着まで律儀に外したことが、完全に裏目に出てしまったのだ。

だが、今聞きたいのはそんなシステム上の裏話ではない。


「じゃなくて、ここはどこなの!? あなたは誰なのよ!」


羞恥心と混乱から、陽菜が声を荒らげて問いただす。


「んとね、まずは自己紹介から! 私の名前はリリィ。二人を今から『エタコネ』の世界に転移させるのが仕事かな!」

「……は? 言ってる意味がわからないんだけど。いいから元の場所に帰してよ!」

「ん〜〜。それは無理かな。二人はもう、元の現実世界では肉体が消滅しちゃってるから。ちゃんと利用規約に同意したよね?」


リリィの言葉を聞いて、圭はハッと思い出した。

確かに最後に『同意する』のチェックボックスを埋めて宝玉を使用した。あれはレベルが1に戻ることへの同意ではなく、現実世界における『自身の消滅』への同意だったというのか。


「でもね、安心してよ! レベルは1に戻っちゃうけど、初期ステータスは今までの半分を引き継げるから、普通にレベルを上げたら転生前より遥かに強くなれるよ。それに強力なユニークスキルも覚えるしね。特別に私、リリィの加護もつけてあげる!」


妖精リリィは得意げに胸を張る。


「えっと……転生したら、僕たちは『エタコネ』の世界に行くってこと? ユニークスキルって、何を覚えるの?」


圭は冷静に、最も気になる点を確認した。

学校で理不尽なイジメを受け、惨めな日々を送っていた圭にとって、現実世界への未練など微塵もなかったのだ。むしろ、自分が輝ける『エタコネ』の世界に行けるのなら、願ってもない話である。


「そういうこと! これからは『エタコネ』の世界で頑張って生きていってね! で、ユニークスキルは……転生してからのお楽しみかな!」

「ちなみに、年齢はどうなるの?」

「年齢は『エタコネ』で使ってたアバターの年齢になるから、二人とも8歳からのリスタートになるのかな」


圭も陽菜も、エタコネのキャラメイクでは『どうせなら若い方がいい』という安直な理由で、設定可能な最年少である8歳を選択していた。


「じ、冗談じゃないわよ! 帰してよ! ハルの青春を返してよ!」


陽菜は涙目で抗議する。圭とは違い、現実世界でカースト上位の『リア充』だった彼女にとって、今の人生を強制終了させられるのは到底受け入れがたい事実だった。


「だからさ〜、無理って言ったじゃない。あーもう、説明するの面倒になってきたから飛ばすよ〜。いってらっさーい!」

「えっ、ちょっと待っ——」


リリィが手に持った小さな杖をくるりと回した瞬間。

抗議の声を上げようとした陽菜と、静かに目を閉じた圭の意識は、再び深い闇の中へと吸い込まれていった。


第1話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

全裸で再会、しかも8歳……前途多難な二人の冒険がここから始まります。


「リリィ」と名乗る妖精が告げた、衝撃の事実。

元の世界に肉体がなくなった二人は、これからどうなってしまうのか。


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