第10話 トラウマ必至の初依頼!
いよいよ冒険者としての初仕事。
しかし、そこで二人を待ち受けていたのは、魔物よりも恐ろしい「視覚的暴力」でした……。
ハルちゃんの奮闘(?)にご注目ください!
ケイとハルは、レーンの街の北側に広がる『新緑の森』へと足を踏み入れていた。
受付嬢のシンディから、この森にターゲットであるゴブリンが出現するという情報を得たからだ。
「やっぱり、ゲームの『エタコネ』とは少し違うみたいだね」
鬱蒼と茂る木々を見上げながら、ケイが独り言のように呟く。
そもそも、ゲーム内ではレーンの『村』だった場所がレーンの『街』へと発展している。さらに、ケイの記憶にあるエタコネでは、レーンの北側は見渡す限りの平原が広がっており、このような森は存在しなかったはずなのだ。
そんな違和感について思考を巡らせていると、前方の茂みから突如として物音が響いた。
ガサガサッ。
「どうやらお出ましみたいね。『虹彩の種子』!」
ハルが素早く反応し、自身の頭上に五つの光る種子を出現させる。
直後、茂みを掻き分けて三匹のゴブリンが姿を現した。
しかし、その魔物を見た途端、ハルの顔がボンッと音を立てるように真っ赤に染まった。
ゴブリンは人型の低脳な魔物である。それは間違いないのだが、現れたゴブリンたちは衣類を一切身につけていなかったのだ。
そして人型であるということは、当然ながらその股間には、人間そっくりの『アレ』がむき出しでぶら下がっているわけで――。
「いやあああああああっ!?」
ハルの悲鳴が森に木霊する。
ケイはここに来てようやく、シンディが『若い女の子にはおすすめ出来ない』と忠告してきた本当の意味を理解した。
「いや! いや! いや! いやぁっ!」
ハルは半狂乱で叫びながら、頭上の種子を凄まじい勢いでゴブリンたちに向けて撃ち放った。
光の弾丸となった種子は、ゴブリンたちの股間へと見事に命中。魔物たちは断末魔の叫びを上げる間もなく、股間を押さえて悶絶しながら光の粒子となって消滅していった。
(……見ているこっちまで痛くなってくる)
そのあまりにもエグい光景に、ケイは思わず自分の股間を両手で覆い隠した。
「こ、こんなの聞いてないわよ……っ」
涙目で座り込むハル。
そこから先の討伐は、まさに作業だった。魔物の気配を察知するや否や、ハルは姿を視認する前に『虹彩の種子』を木々の向こうへ放ち、ゴブリンを貫き倒していく。
現実となったこの世界でも、魔物を倒せば死体は残らず消滅する。それなら『見てしまう前に倒す』という極端な結論に至ったようだ。
ケイは戦闘に参加する間もなく、ハルが倒した後にコロンと落ちている魔石をただひたすら回収していく係となった。
「こんなものでいいかな……」
疲労困憊といった様子のハルが呟く。
すでに回収した魔石の数は100個に達していた。帰って報告すれば、基本報酬も合わせてかなりの額になる計算だ。
さらに、この討伐を通して二人のレベルは4から7へと上がっていた。
しかし、この世界はゲームのエタコネと比べると、レベルが極端に上がりにくいとケイは感じていた。
ゴブリンを100匹も倒したのだ。ゲームであれば、とうにレベル10近くには達しているはずである。ましてや今の二人には『リリィの加護』という、取得経験値が3倍になるチート級のバフが付与されているのだ。
それでもレベルが7止まりということは、現実世界と化したここでは、成長のハードルが格段に跳ね上がっているのだろう。
ひとまず目的の数は十分に達成したため、ケイとハルはレーンの街へと帰還することにした。
* * *
「「ただいまです!」」
冒険者ギルドに戻ってきた二人は、まっすぐに【受注カウンター】へと向かい、担当のシンディに声をかけた。
「あら、もう帰って来たかにゃ? もしかしてハルちゃん、変なものを見て泣きながら逃げ帰って来たかにゃ?」
シンディが、からかうようなニヤニヤ笑いを浮かべて言う。
「ち、ちゃんと狩って来たわよ! わかっているなら、最初からちゃんと教えてよね!」
ハルは顔を真っ赤にして抗議する。
「お姉さんは、最初にちゃんと『おすすめできない』って止めたんだけどにゃ〜」
シンディの言うことは間違ってはいない。確かに忠告はしてくれたが、まさかあんなストレートな理由だとは思いもしなかったのだ。
「とりあえず精算するから、魔石を出してくれるかにゃ?」
促されるまま、ケイは背負っていたリュックサックから集めた魔石をカウンターの上へとドサドサと広げた。
「こ、こんなにあるのにゃ!?」
シンディは目を見開いて驚愕した。
現在の時刻はまだ昼を過ぎたばかりだ。それなのに、カウンターには100個以上の魔石が積まれている。
ハルが姿を見る前に『瞬殺』を繰り返したからこそのペースであり、通常であればもっと時間がかかるはずの量なのだ。
「少し待っているのにゃ。すぐに確認するのにゃ」
シンディは表情を引き締めると、虫眼鏡のような魔道具を取り出し、手際よく魔石を一つずつ鑑定していく。
「ん? これは……ゴブリンメイジの魔石にゃ」
どうやら、ハルが視認せずに無差別に倒した魔物の中に、魔法を操る上位種『ゴブリンメイジ』が混ざっていたらしい。
ゴブリンがレベル5程度の魔物であるのに対し、メイジはレベル10を超える手強い相手だ。しかし、ハルが瞬殺したせいでケイは全く気づかなかった。
「むむっ、こっちはゴブリンジェネラルの魔石もあるにゃ!」
シンディがさらに声を上げる。
ゴブリンジェネラルとなれば、レベル20を超える上位のボス格だ。どう考えても、初期の街の周辺に生息している魔物ではないはずなのだが。
「えっと、ゴブリンの魔石が全部で97個、ゴブリンメイジの魔石が4個、ゴブリンジェネラルの魔石が2個あったにゃ。メイジもジェネラルも『ゴブリン1匹』としてカウントされるから、合計で103体。10体ごとに2000アデナの報酬だから、基本報酬は2万アデナになるにゃ」
そう言うと、シンディは革袋に入った2万アデナをケイに手渡した。
「次に魔石の買取にゃ。ゴブリンの魔石が1個50アデナで97個だから4850アデナ。ゴブリンメイジの魔石が1個200アデナで4個だから800アデナ。ゴブリンジェネラルの魔石が1個1万アデナで2個だから2万アデナ。合計で、2万5650アデナにゃ!」
予想外に高価だったゴブリンジェネラルの魔石のおかげで、思った以上の大金を手に入れることになった。
シンディの話によれば、『新緑の森』にゴブリンメイジやゴブリンジェネラルが出現することなど、今まで一度もなかったという。
(……何かのフラグを踏んだ気がする)
ケイとハルは顔を見合わせ、得体の知れない予感に身震いした。
ともあれ、こうして二人の初依頼であるゴブリン討伐は、無事に大成功で幕を閉じたのだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!
まさかの「全裸」ゴブリン軍団……。
乙女なハルちゃんにとっては、ある意味ドラゴンよりも強敵だったかもしれません。
お陰で「虹彩の種子」による超長距離スナイプという、とんでもない攻略法が編み出されてしまいました(笑)。
結果としてLv7へのレベルアップと、45,650アデナという大金を手にした二人。
ここから二人の冒険がどう加速していくのか、ぜひブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです!




