当たらない攻撃
ジエルが再び飛び出す。雷を纏った拳を、怒りのままに何度もエイリワスへ叩き込もうとする。雷撃が走り、刃が閃く。だが。そのすべてが通り抜ける。当たらない。感触すらない。
「くそっ!!」
ジエルが歯を食いしばる。あり得ない。目の前にいる。存在している。見えている。それなのに、触れられない。亜爆も横から爆弾を投げ込む。炎と煙が室内に広がる。しかし、その中から現れるエイリワスは無傷。
「……っ」
亜爆の表情が険しくなる。ドロイも攻撃を続けていた。鉄の槍。鉄塊。刃。次々と生成し、射出する。だが結果は同じ。全部、すり抜ける。
「……」
ドロイの思考だけが高速で回転していた。
(エイリ星人はラベジニウムの持つ身体への負荷を強く受けるため、ラベジニウムを使うことができない。エイリワスがラベジニウムの能力を使用出来ているのは、人間の体を介してラベジニウムを装着しているからか?……)
もしそうならば。
(必ず、インターフェースがある。それを破壊すれば……)
能力は止まる。少なくとも、弱体化はできる。だが、そもそも攻撃が当たらない。破壊以前の問題。さらに。
(見当たらない……)
視線を走らせる。首。腕。胸部。頭部。どこにもインターフェースらしきものがない。服の中に隠している可能性もあるが、それらしき膨らみもなく、ドロイは困惑する。
その間にも、エイリワスは攻撃を避けようともしない。ただ立っている。そしてジエルを見る。
「……速度は以前より上昇」
静かな声。
「出力も増している……」
視線が、ジエルの雷へ向く。
「だが、まだ不安定だ」
分析。評価。戦っているというより、“観察”している。その態度が、ジエルの怒りをさらに煽る。
「エイリワス!!」
雷の刃を振るう。だが、また抜ける。
その時、鬼爆が、また石を拾い、軽く放る。
鬼爆が投げた石が、エイリワスのすぐ横で炸裂する。轟音が鳴る。民家全体が揺れる。床板が砕け、木片が宙を舞った。爆風が室内を荒れ狂い、壁に新たな亀裂を刻んでいく。ジエルは腕で顔を庇う。亜爆も思わず目を細める。だが、その爆炎の中心。エイリワスだけは、変わらずそこに立っていた。揺らぎもしない。まるで爆風そのものが存在していないかのように。静かに煙の中から姿を現す。
「……観察に、邪魔だな」
落ち着いた声だった。怒鳴りもしない。感情を荒げもしない。ただ、“鬱陶しい”と言うように。そして。エイリワスが、ゆっくりと片手を振るった。その瞬間。何かが、空気を裂いた。
「……っ!?」
ジエルの視界を、影が高速で横切る。速すぎる。何が飛んだのか、一瞬分からなかった。次の瞬間。
「おっと――」
鬼爆の声。避け切れずにぶつかる。凄まじい衝突音が起き、鬼爆の身体が、“何か”に叩きつけられる。そのまま一直線に吹き飛んだ。壁をぶち抜く。民家の外壁が粉砕され、鬼爆ごと外へ消える。土煙が舞い上がる。
「…な!?」
亜爆が反射的に叫ぶ。ドロイの視線が、飛んできた“それ”へ向く。エイリ星人が床に転がっていた。死んでいる。しかし、崩壊していない。
「……あの進化個体と同じ?」
ドロイの声に、わずかな驚きが混じる。エイリワスの死体操作はエイリ星人も操ることが出来る。だが、エイリワスは、単純な操り人形としてではなく。“武器”として扱っている。エイリワスは静かに鬼爆が吹き飛んだ穴を見つめる。
「騒がしい者から排除するべきだったか」
まるで、本当に研究の邪魔をされた研究者のような口調。そこに怒りはない。あるのは、冷たい合理性だけ。ジエルの雷が、さらに激しく弾ける。
「てめぇ……!」
ジエルの怒りが増幅していく。




