爆撃手と起爆手
爆発の余韻が、まだ空気に残っていた。抉れた地面。焦げた匂い。揺れ続ける木々。ほんの数秒前までそこにいたはずのエイリ星人は、跡形もなく消えている。静まり返った山道で、ジエルはゆっくりと息を吐いた。
ドロイは、わずかに視線を落としながら分析を続けている。
「爆発エネルギー量……推定値を大きく超過。接触起点型能力の可能性が高い」
理屈は組み立てられる。だが、その規模と速さは、常識の枠から外れていた。その空気を割るように、ポトスがいつもの調子で口を開く。
「カレの能力はね~、“起爆手”」
柔らかい声。だが、その内容は単純でいて恐ろしい。
「手で触ったところを爆発させる力さ~」
その説明を聞いた瞬間、ジエルは思わず眉を上げた。
(……触ったところを、爆発?)
さっきの光景が頭の中で再生される。掴む。投げる。そして――爆発。無駄がない。単純すぎるほど単純な能力。だが、それをあの精度と威力で扱えるなら、話は別だ。ジエルの視線が、自然と隣にいる亜爆へと向く。亜爆の能力は、爆弾を“作り出す”もの。そして鬼爆は、“触れたものを爆発させる”。似ている。方向性が、あまりにも近い。
「……なんか」
ジエルはぽつりと呟いた。
「似てんな、お前ら」
「……」
亜爆は無言。
「爆弾作るやつと、触ったら爆発するやつって……」
ジエルは少しだけ口元を歪める。
「兄弟にもなると、能力も似るんだな」
軽口のつもりだった。場の緊張を少しでも和らげるような、そんな一言。だが――
「やめてください」
即答だった。
「気持ち悪い」
一切の迷いも、遠慮もない拒絶。
「……は?」
ジエルの表情が固まる。横を見ると、亜爆は本気で嫌そうな顔をしていた。眉を寄せ、わずかに距離を取っている。
「いや、そこまで言うか?」
「言います」
食い気味に返される。その温度差に、ジエルは思わず引いた。一方で、当の鬼爆はというと――
「えー、そんなこと言うなよ~」
どこか楽しそうに笑いながら、またラムネを口に放り込んでいる。全く気にしていない。むしろ、このやり取り自体を面白がっているようだった。ドロイはその様子を静かに観察していた。
「……能力の類似性は確認できますが、発現形式は異なります。偶然の可能性も否定できません」
淡々とした分析。だが、その言葉の裏には「兄弟だから似るとは限らない」という冷静な視点も含まれていた。
「お前も真面目かよ……」
ジエルは頭を掻く。軽く流したかっただけの話題が、思った以上に鋭く返ってきた。山道の空気は、再び静けさを取り戻しつつある。だが、その静けさの中には先ほどとは違う感覚があった。Sランクという圧倒的な存在。その力の一端。そして、亜爆との微妙な関係性。
「……めんどくせぇな」
小さく呟きながらも、ジエルは前を向く。山道はまだ続いている。その先にあるのは、レインダ村。そして、エリア・オズ。風が吹く。冷たいその風の中で、ジエルの意識は再び研ぎ澄まされていった。




