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エデン  作者: ko-da
6章 エリア・オズ編

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特訓観察

訓練室の扉が、静かに閉まる。無機質な金属音が、やけに大きく響いた。室内には、冷たい空気とわずかな機械音。壁際に並ぶ訓練器具。強化素材で作られた標的。床には幾度もの衝撃を受けた痕跡が刻まれている。ECO隊員たちが日々己を鍛える場所――その空間に、エデンは一人立っていた。まだ身体は重い。完全に回復したわけではない。一歩踏み込むだけでも、筋肉の奥に鈍い痛みが残る。それでも、エデンは前へ進む。

(……何もしないままは、嫌だ)

その思いだけだった。ゆっくりと訓練用のグローブへ手を伸ばす。

だが――

「おい」

背後から、呆れを隠そうともしない声が飛んだ。エデンの肩が、びくりと揺れる。聞き覚えしかない。恐る恐る振り返ると、案の定そこにはジエルが立っていた。

「……何してんだ、お前」

呆れ。そして少しの怒り。完全に見つかった。

「いや、その……」

言葉に詰まる。

ジエルは深くため息を吐いた。

「病室抜け出したと思ったら案の定だな」

ずかずかと近づいてくる。

「戻るぞ」

即答だった。反論の余地を感じさせない勢い。エデンは一瞬たじろぐ。だが、そのまま黙って戻る気にはなれなかった。拳を握る。

「……分かった」

ジエルの動きが少し止まる。エデンは続けた。

「特訓はしない」

予想外だったのか、ジエルがわずかに眉を動かす。

「でも」

その声には、確かな意志があった。

「何もしないのは、嫌なんだ」

真っ直ぐな言葉。

「だから……せめて」

一拍。

「ジエルの特訓、見せてほしい」

静かだった。訓練室の空気が、一瞬だけ止まる。ジエルは数秒、何も言わずにエデンを見る。冗談ではない。言い訳でもない。ただ、焦りと悔しさを抱えたまま、それでも何かを得ようとしている目。

「……はぁ」

長いため息。

「仕方ねぇな……」

折れた。だがすぐに、鋭く釘を刺す。

「絶対動くなよ」

一歩近づく。

「怪我するから」

その声音は、軽くはない。エデンは素直に頷いた。

「……うん」

ジエルはそれを確認すると、訓練場中央へ向かう。そこには、強化鉄製の訓練棒。通常の打撃程度では歪みすらしない高耐久仕様。ジエルは軽く首を鳴らし、肩を回す。

「ちゃんと見とけよ」

次の瞬間。踏み込み。

「――っ!」

空気が弾ける。拳が鉄棒へ叩き込まれ、鈍い衝突音が訓練室全体へ響く。続けざまに蹴り。肘。回し蹴り。無駄がない。速い。重い。エデンの目が、自然と見開かれる。

(……速い)

単純な力任せではない。洗練されている。そして。ジエルは少し後方へ下がった。右手を構える。空気が、変わる。バチ、と青白い電流が走る。雷。エネルギーが収束していく。

怒雷刃(ドライバー)!」

振り抜く。雷が、刃となって放たれた。轟音。一直線に走った雷撃の刃が鉄棒を切り裂くように叩き、激しい火花が散る。衝撃。焦げた匂い。エデンは思わず息を呑んだ。少しの沈黙の後、エデンは前々から気になっていたことを口にする。

「前々から気になってたんだけど」

ジエルが振り返る。

「その技って、どうやってんの?」

ジエルは少し考えた後、肩をすくめた。

「感覚でやってるから、わかんねぇ」

「えぇ……」

あまりにもジエルらしい答えだった。

だが、そのまま補足する。

「でも天記さんが言うには、雷にエネルギーの刃をまとわせてるらしい」

エデンは目を瞬かせる。

「エネルギーを……まとわせる?」

未知の感覚だった。

「そんなこと出来るの?」

ジエルは当然のように答える。

「それ用の装置と、エネルギーを操作する技術さえあれば誰でも出来るぞ」

一拍。

「俺はなんか装置なくても出来るけど」

エデンはしばらく黙った。そして、ぽつりと言う。

「……ジエルって天才だったんだ」

間。

「意外」

「うるせーよ」

即答だった。

ジエルは少し不機嫌そうに眉を寄せる。だが、そのやり取りはどこかいつも通りで――ほんの少しだけ、重かった空気が和らぐ。やがて一通りの特訓を終え、ジエルはタオルで汗を拭きながらエデンの方を見る。

「……ん?」

違和感。さっきまで真っ直ぐ見ていたエデンが、少し俯いていた。表情は見えない。だが何かを考えている。深く。もっと静かな何か。ジエルは眉をひそめる。

「……エデン」

その声に、エデンはすぐには応えなかった。

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