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エデン  作者: ko-da
5章 エリア・アスタロス編

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危険じゃないエイリ星人

風黒の背中を追いながら、エデンたちはさらに奥へと進んでいた。洞窟の空気は重く、どこか張り詰めている。先ほどの戦闘の余韻が、まだ微かに残っていた。その時だった。

――ゴゴゴゴ、と。

低い振動が足元から伝わる。

「……っ!?」

エデンが顔を上げる。次の瞬間、洞窟全体が大きく揺れた。天井の岩が軋み、砂がぱらぱらと降り落ちる。足場が崩れ、視界が揺れる。

「まずい、崩れるぞ!」

カイトが叫ぶ。

直後――

轟音。

前方と後方、両方から岩が崩れ落ちる。逃げ場を塞ぐように、巨大な岩塊が通路を埋め尽くした。

「くそっ……!」

エデンは振り返る。

だが、そこにあったはずの風黒の姿は――ない。

「風黒さん!?」

声を張る。返答はない。分断された。その事実が、遅れて理解として落ちてくる。その時、通信機が小さく音を立てた。

『――ああ、聞こえますか?』

いつもの調子の声。風黒だった。ノイズ混じりだが、はっきりと届く。

『どうやら分断されたようですね~』

まるで他人事のような口調。だが、その奥には冷静さがある。

『私は問題ありませんので』

一拍。

『皆さんは一度、入口まで戻ってください』

指示は明確だった。

『熔煉隊員たちには、こちらから連絡を入れておきます』

通信が途切れる。静寂が戻る。カイトが舌打ちをする。

「……マジか」

リナはすぐに状況を整理する。

「ここに留まり続けるのは危険かも、来た道を引き返そうよ」

冷静な判断。エデンも頷く。三人は来た道を引き返し始めた。

だが――

数歩進んだ、その時。足が止まる。前方。通路の先。

そこに――“いた”。

巨大な影。岩のような皮膚。長く太い尾。そして、低く構えたその姿は、トカゲのような異形の生物。

(……こんなの、さっきはいなかった)

エデンの背中に冷たいものが走る。カイトとリナは即座に構えた。

「新手か……!」

緊張が一気に高まる。その時。リナが、わずかに眉をひそめた。

「……もしかして」

小さく呟く。

「エイリ星人の……進化個体?」

その言葉に、空気がさらに重くなる。次の瞬間。その異形が、口を開いた。

「……そ、そうです」

か細い声。震えている。

「わたしのなまえは……エイリポル」

ゆっくりと、言葉を紡ぐ。敵意は感じられない。むしろ――怯えている。

「わたしは……わるいエイリ星人じゃないです」

その声は弱々しく、今にも消えそうだった。

「ほかのエイリ星人に……いじめられてるんです」

巨大な体とは不釣り合いな言葉。

「……みのがしてください」

頭をわずかに下げる。懇願。その姿に、違和感が広がる。だが、カイトは一切緩めない。

「騙されるな」

低く言う。

「エイリ星人に危険性の無い個体なんていない」

リナも頷く。冷静な分析。二人とも、戦闘態勢を崩さない。いつでも動ける距離。だがエデンだけは、動かなかった。じっと、その生物を見つめている。エデンは違和感を感じる。視線を、体へと向ける。身体のあちこちに刻まれた、無数の傷跡。新しいものもあれば、古いものもある。

(……本当に、いじめられてるのか?)

胸の奥が、わずかにざわつく。オルのことを思い出す。“危険じゃないエイリ星人”が存在する可能性。

目の前の存在は敵か。それとも。エデンは、ゆっくりと一歩前に出た。

「エデン!?」

カイトが声を上げる。

だが、エデンは止まらない。その目は、真っ直ぐエイリポルを見ていた。

(もし……)

ほんのわずかでも。助けられる可能性があるなら。見捨てたらきっと、後悔する。エデンは、静かに口を開いた。

「……本当に、敵じゃないんだな?」

洞窟の中で。

緊張と疑念が、静かに交錯していた。

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