続ける理由
エデンは静かに目を閉じた。
夕陽先生の最後の言葉が、頭の中で何度も響いていた。
――悔いの無いように生きろ。
あの時、重症を負った友達。助けられなかった先生。
あの日から、自分の中にはずっと後悔が残っている。
エデンはゆっくりと目を開け、大山を見る。
「俺がECOを続ける理由は、悔いの無いように生きたいからです」
静かな声だった。しかし、その言葉には強い意志があった。
「自分が助けられたかもしれない人を助けなかったら、死ぬよりも後悔する」
大山は黙って聞いている。
「だから俺は、例え寿命が減ろうと、危険な任務があろうと、ECOをやめません」
エデンは真っ直ぐ前を見る。
「助けられる人がいるからです」
沈黙が流れる。
しばらくして、大山は小さく笑った。
「……はは」
腕を組みながら、軽く息を吐く。
「悔いの無いように生きたい……か」
エデンを見る。
「いい理由だな」
少しだけ優しい顔になる。
その時、ECOの職員が現れた。
「失礼します。大山隊員。次の任務について報告です」
職員は書類を開く。
「次のエリア・アスタロス任務ですが……」
大山の表情が少し引き締まる。
「アモリス支部からは」
職員が読み上げる。
「大山隊員、風黒支部長、ジエル隊員」
ここまでは予想通りだった。
だが、次の言葉で空気が変わる。
「そして……」
一瞬の間。
「エデン隊員が任務に着きます」
「……は?」
大山が驚く。
エデンも目を見開いた。
「俺が……?」
大山はすぐに言う。
「待て。エデンはまだランクが足りないはずだ」
職員は落ち着いて答える。
「はい。しかし――」
書類を見ながら説明する。
「エデン隊員は、その戦闘能力と実績が評価されました」
「実績?」
「はい」
職員は続ける。
「支部襲撃事件での進化個体との戦闘と、休日中に事件解決のために警察に助力したという活躍が認められました」
大山の表情が変わる。
「その結果」
職員ははっきりと言った。
「エデン隊員は、ランクD-3へ昇格しました」
「……D-3だと?」
大山が驚く。
エデンも言葉を失っていた。
「昇格は本日付です」
職員は丁寧に頭を下げる。
「後ほど隊員証を更新しますので、隊員証の提示をお願いします」
エデンは静かに自分の隊員証を見る。
まだ実感が湧かない。だが、大山が小さく笑う。
「……やるじゃないか、エデン」
肩を軽く叩く。
「もう、新人じゃないな」
エデンはゆっくりと頷いた。
「……はい」
エリア・アスタロス任務。
それは、これまでよりも危険な任務になる。
だが、エデンはもう迷わない。
その目には、少しだけ覚悟が宿っていた。




