小さなエイリ星人
朝。
柔らかな光が部屋の中に差し込んでいた。エデンは玄関で靴を履いている。
「行ってきます」
そう言うと、母親がキッチンから顔を出した。
「もう行くの?」
少し寂しそうな顔。
「もう少しここにいてもいいのよ」
エデンは少し笑う。
「ずっと休んでるわけにもいかないよ」
リビングの奥から、リュートが新聞を見ながら言う。
「仕事は大事だ。だが、無理はするな」
エデンはうなずく。
「分かってる」
母親が近づいてくる。
「気をつけてね」
「うん」
エデンは軽く手を振り、家を出た。
朝の空気が心地いい。
「……行くか」
アモリス支部へ向かう。
ECOアモリス支部。
寮の部屋。
エデンはベッドに座り、天井を見上げていた。
「……」
休日に起きた出来事が頭をよぎる。
死神事件。
ドクター・グレイ。
ドロイのサイボーグの体。
そして――
最後の違和感。
「エイリワス……」
小さく呟く。
その時。
コンコン。
ドアが叩かれる。
「エデンいるかー!」
聞き慣れた声。
「いたらパトロールしようぜー!」
ジエルの声だった。
エデンは立ち上がる。
「今行く」
ドアを開ける。
ジエルが笑う。
「よし、暇だろ?」
「パトロール行こうぜ」
エデンは少し考えた後、うなずく。
「いいよ」
支部の受付。
パトロール申請を提出する。
「アモリス地区、巡回パトロール」
許可が下りる。
二人は外へ出た。
朝の街は穏やかだった。散歩をしているおじいさんや、買い物に向かうおばあさんがいる。
「おはようございます」
エデンが挨拶する。
「おはよう」
「今日も頑張ってね」
住民が笑顔で返す。
ジエルが言う。
「平和だな」
エデンもうなずく。
「特に危険はなさそうだ」
ジエルが伸びをする。
「このまま何もなきゃいいんだけどなー」
その時だった。
草むらの方から声がする。
「た、助けてですぞー……」
二人が止まる。
「……?」
「今、声しなかったか?」
「した」
エデンが草むらへ向かう。
草をかき分ける。
そこにいたのは――
手に収まるほどの小さな生き物。
丸い体。
黒い目。
不思議な見た目。
「助けてですぞー!」
生き物が言う。
「狙われてるですぞー!」
エデンが驚く。
「喋った……?」
ジエルが近づく。
「なんだこいつ?」
しゃがんで見る。
「新種の生き物か?」
少し考える。
「でも喋れるってことは……」
空気が変わる。
「エイリ星人の進化個体?」
緊張が走る。
エデンも構える。
危険かもしれない。
その時。
ガサッ。
草むらが揺れ、もう一体現れる。
黒い体。
異形の姿。
いつも戦っている――エイリ星人。
ジエルが叫ぶ。
「エデン!」
「エイリ星人だ!」
構える。
エデンも前に出る。
「周りに人はいないな」
リミットフォースの出力を抑える。
「一撃で終わらせる」
踏み込む。
「はぁっ!」
ドゴン!!
一撃。
エイリ星人の体が崩れる。
形が崩れ、粒子となって消えていく。
静寂。
ジエルが息を吐く、エデンが小さい生き物を見る。生き物は怯えて震えている。
エデンがしゃがむ。
「俺はエデン……君は誰?」
優しく聞く。
「エイリ星人?」
小さい生き物が言う。
「名前は……オ……オル?」
首をかしげる。
「何だったか忘れちゃったですぞ……」
エデンが少し笑う。
「じゃあ、オルでいいんじゃない?」
ジエルがすぐにツッコむ。
「適当すぎんだろ!」
だが、生き物は目を輝かせる。
「オル!いい名前ですぞ!」
「それがいいですぞ!」
ジエルがあきれる。
「ええ……」
そして聞く。
「お前、エイリ星人なのか?」
オルは少し考える。
「多分……そうだったと思うですぞ」
エデンとジエルが顔を見合わせる。
「……」
ジエルが小声で言う。
「襲ってこないエイリ星人、初めてだな」
エデンもうなずく。
「倒すのは気が引けるなぁ」
ジエルが腕を組む。
「でも危険じゃねぇって確証はないだろ」
エデンが言う。
「じゃあ、ECOで管理すればいいんじゃない?」
ジエルが考える。
「……それならいいか、監視もできるしな」
エデンがオルを手に乗せる。
オルが嬉しそうに言う。
「助けてくれてありがとうですぞ!」
ジエルが歩き出す。
「じゃあ行くか」
エデンもうなずく。朝の街の中を、二人は歩き出した。
新たな存在――オルを連れて。




