予測通り
暗い路地裏。
一人の男が、足早に歩いていた。
その時だった。
――スッ……
霧が広がる。
「え……?」
男が振り向く。そこに立っていた。
黒い霧に包まれた、不気味な雰囲気を醸し出す死神。
「ひっ……!」
死神がゆっくりと歩き出す。
霧によって視界が歪む。
逃げようとした瞬間――
死神の腕が振り上がる。
その時。
上空から影が落ちた。
「――そこまでだ!!」
ドゴォォォン!!!
凄まじい衝撃と共に、死神の体が地面に叩きつけられる。
地面が砕け、コンクリートが割れる。
死神の体の上に立っていたのは――
エデン。
「リミットフォース……」
ゆっくりと拳を引く。
その背後から足音が近づく。
「やっぱりここに来たね」
アグレスが腕を組みながら言う。
リナは周囲を警戒しながら被害者の前に立ち、安否を確認する。
「もう大丈夫、下がってて!」
カイトは死神を睨みつける。
「完全にパターン通りだな」
そして最後に、静かに歩いてくるドロイ。
「標的が人気の無い路地に入った後に、襲撃する」
ドロイの目が死神を捉える。
「すべて予測通りです」
エデンがリミットフォースを発動したまま、腕を振り上げる。
「もう一発....」
エデンが腕を死神に振り下ろす前に死神が腕でエデンを薙ぎ払おうとする。エデンはそれをよけ、引き下がる。
死神がゆっくりと立ち上がり、それと同時に、霧がさらに濃くなり、戦闘態勢に入る死神。
エデンたちも構える。
アグレスが銃を向け、カイトが死神を睨む。
「ここで終わりだ」
戦闘が始まる数十分前。
アモリス中央公園。
「恐らく死神は指示を受けて動いています」
ドロイはそうエデン達にそう伝える。
「確かに、指示を受けて行動してたなら、あのワンパターンの攻撃にも説明がつく」
カイトは言う。
すると、リナが疑問をこぼす。
「じゃあ、死神に指示を出してるのは誰?」
エデンはハッと気付く。
「ドクターグレイ?」
「彼の使った手術室から謎のエネルギー反応がありました。まだ確定とは言えませんが、可能性はかなり高まったと言えるでしょう」
「そして、彼が手術を施した患者にはもう一つの共通点があることが分かりました」
ドロイは紙をポケットから取り出す。その紙には今までの死神事件の被害者の手術部位が記載されていた。
その部位は──
心臓。
その場が凍りつく。
「おそらく、ドクターグレイは心臓に何かしらを埋め込んで、それを回収しているんでしょう。だから俺達が最初に死神に会った時、俺にとどめを刺さなかった」
ドロイは自身の見解を語る。それを聞いていたエデンは焦った表情で言う。
「やっぱり、もう一回病院に戻ってよく調べようよ」
しかし、アグレスがそれを制止する。
「エデン君。それはダメだ、おそらくドクターグレイはもう逃げている。私達が病院に行ってドクターグレイに話を聞いた時、ちょうど死神が街中に現れただろう?おそらくあれは時間稼ぎのためだ」
アグレスに制止され、エデン達は困った顔をする。一方でドロイはドクターグレイの居場所についてはそこまで深刻に考えていなかった。
「安心してください。皆さん。ドクターグレイの場所は分かります。それよりも今は死神の次の標的を守ることを優先するべきです」
「次の標的?」
「はい、死神が次に標的にするなら、この人物です」
ドロイはカルテの写しを取り出して見せた。名前は安室 正道
「この人物はドクターグレイの心臓手術を2週間前に受けています」
「今日手術を受けてた人はいいの?」
リナは疑問をこぼす。
「まだ大丈夫です。死神の標的になっているのはドクターグレイの手術を受けて、2週間たっている人物です。先に狙われるならこっちでしょう」
ドロイは公園の時計を見る。
「七時半........いける」
続けて提案をする。
「皆さん。今から会いに行きましょう」
「安室正道さんに」
そして現在に戻り──
霧の中で、エデンが静かに死神を見つめる。
「来い、死神」




