再会
翌日。
エデンは昨日と同じ場所に向かった。
既にそこにはアグレスが立っていた。手には資料の入ったファイルを持っている。
「おはよう、エデン君」
「おはようございます」
二人は軽く挨拶を交わすと、アグレスは自分の車から資料を取り出し、ベンチに腰掛ける。
「じゃあ、まず事件の詳細から説明するね」
エデンは真剣な表情で資料を見る。アグレスはそこから写真を一枚取り出した。
「これが被害者の状況だ」
写真には警察の検視写真が写っていた。胸部に大きな傷がある。
「被害者は全員、心臓を何かでえぐられている状態で見つかっている」
エデンの眉が動く。
アグレスは続けた。
「ただし問題があって」
「この傷」
写真を指さす。
「分かると思うけど、大きすぎるんだ」
「ナイフや刃物のサイズじゃない。人間が使う凶器では説明がつかない」
エデンは静かに言った。
「……なるほど」
アグレスは次の資料を見せる。
「事件が最初に起きたのは先月」
「そこから今までに五件。全部同じ手口」
エデンが聞く。
「報道は?」
アグレスは首を振る。
「してないよ。犯人を刺激しないようにね」
「今は警察がパトロールを増やして対応している」
エデンは腕を組んで考える。
「もしエイリ星人なら」
「こんな回りくどいことするかな……」
その時、ケイの声が頭の中で響く。
『断定は早い』
『高い知能持つ進化個体の可能性もある』
エデンは小さく息を吐く。そしてアグレスを見る。
「一つ言っていいですか?」
「もちろん」
エデンは真面目に言った。
「もし本当にエイリ星人が関わっているなら」
「ECOの隊員にも協力を要請できます」
アグレスの表情が少し明るくなる。
「それは助かる」
エデンは続けた。
「ただ、今の情報だけだと」
「まだ人間の事件の可能性もあります」
アグレスは難しそうな顔をして、手に持った資料を見ながら頷く。
「確かに」
エデンは資料の写真を見る。
「だから」
「もっとエイリ星人と関係のある証拠が必要です」
アグレスは呟く。
「現場に残っていた正体不明のエネルギー反応が何か分かればねぇ」
エデンの目が鋭くなる。
「エネルギー反応……」
アグレスは続けた。
「警察の機材では正体が分からなくて」
「でも普通じゃないのは確かだよ」
エデンは立ち上がった。
「じゃあ……それを見に行きましょう」
アグレスも立ち上がる。
「OK、ついてきて」
「一番新しい現場に案内するよ」
二人は車に乗り込み、街を走る。
そして数分後――
車は人通りの少ない裏路地で止まった。
「ここだよ」
アグレスが助手席のエデンに言う。
そこには黄色いテープが張られている。アグレスはそのテープを取り、エデン達はゆっくり歩いて現場に入る。
そして地面を見た瞬間――
ケイの声が鋭く響いた。
『エデン』
(なに?)
ケイは低く言う。
『間違いない。ここには確かに』
少し間を置き、
『異常なエネルギーが残っている』
エデンの表情が変わった。床にしゃがみ込み、地面に残る痕跡を見つめる。
「何かあるのか……」
アグレスが聞く。
「分かるのかい?」
エデンは首を横に振った。
「反応は感じますでも……」
「これが何のエネルギーなのかは分からないです」
ケイも頭の中で言う。
『残滓はある』
『だが種類の特定はできない』
エデンは立ち上がり、少し困ったように頭をかいた。
「やっぱり」
「判定する機械とかがないと厳しいですね」
アグレスは腕を組む。
「警察でも調べたけど」
「結局正体不明だった」
エデンは小さくため息をついた。
「ECOの機材があれば……」
その時だった。
「……エデンさん?」
後ろから声がした。エデンが振り向く。そこには三人の隊員が立っていた。エデンの目が少し大きくなる。
「……え」
「ドロイ?」
落ち着いた雰囲気の青年が軽く会釈する。
「久しぶりですね」
「エデン君」
その隣には二人。
一人は背の高い少年で、静かにこちらを見ている。
もう一人は活発そうな少女だった。
エデンは言う。
「カイトと、リナ?」
三人は入隊試験の時に一緒に戦ったメンバーだった。
アグレスが小声で聞く。
「知り合い?」
エデンは頷く。
「ECOの入隊試験で一緒に戦ったんです」
エデンは三人を見る。
「皆は入隊試験合格したの?」
そう聞くと三人は頷く。
「というか君たち、ここは規制されてる場所だよ。なんで入ってきたの?」
アグレスは三人に注意をすると、リナは困った顔をする。
「そ、そうなんですか?テープとかもなかったから、入ってきちゃいました」
「え」
アグレスは思い出した。黄色テープを取った後、その黄色テープを張りなおさなかったことを。
「ご、ごめん。私がテープ取ってたんだった」
そう言い、謝るアグレスにリナは「大丈夫ですよ」と言う。
その後、ドロイはエデンに聞く。
「今は、何をしているんですか?」
「死神事件の捜査中なんだ」
エデンが答える。
リナの表情が少し変わる。
「死神事件?……」
カイトは短く言う。
「……噂は聞いたことある」
それだけ言って、また静かに現場を見る。
ドロイがエデンに聞く。
「それで、ここでは何を調べているのですか?」
エデンは説明した。
「現場に正体不明のエネルギー反応が残ってるらしくて、それを確認しに来たんだ」
リナが首をかしげる。
「調べたの?」
エデンは少し困った顔になる。
「それが、判定する機械がなくて」
「何のエネルギーか分からない」
少し沈黙が流れる。
その時――
ドロイが静かに言った。
「それなら、私が調べましょう」
エデンが聞く。
「え?」
ドロイは落ち着いた様子で続ける。
「簡易ですが」
「エネルギー解析機能があります」
リナが少し笑う。
「ドロイ、そういうの得意なんだよね」
カイトは一言だけ言う。
「……任せる」
ドロイは地面にしゃがみ込んだ。
腕に付けた装置のようなものを操作する。
小さな光が点灯した。
「では」
「解析を開始します」
エデンとアグレスはその様子を見守る。
数秒の沈黙。
そして――
ドロイの表情が、わずかに変わった。
「……これは」
エデンが聞く。
「分かった?」
ドロイは静かに答える。
「通常のエネルギーではありません」
「エイリ星人のものとも一致しない」
「「え?」」
エデンとアグレスは驚き、ドロイを見る。
二人の間の空気がわずかに張りつめた。




