休養
エデンの口から出た名前に、区長室の空気がわずかに張り詰めた。
「エイリワスっていうエイリ星人です」
ホワイトは静かに目を細める。
「……エイリワス?」
ジエルが腕を組んだまま続ける。
「たぶん、アモリス支部襲撃事件の首謀者」
エデンも頷いた。
「俺たち、直接会ったんです」
ホワイトの表情が少し驚きに変わる。
「直接……?」
亜爆も静かに補足する。
「そのエイリ星人は進化の研究をしているらしくて」
「自分をエイリ星人の王と名乗っていたそうです。」
その言葉を聞いた瞬間――
ホワイトの目が大きく開かれた。
「……王?」
一瞬、沈黙。
そしてホワイトはゆっくりと言った。
「なるほど……」
「そういうことか」
エデンが少し不思議そうに聞く。
「何か知ってるんですか?」
ホワイトは少し考えるようにしてから言った。
「君たちは、エイリ星人の王が一人だけだと思っているかもしれない」
ジエルが眉を上げる。
「違うのか?」
ホワイトは静かに首を振った。
「違う、少なくともエイリワスだけではない」
三人が少し驚く。
亜爆が尋ねる。
「他にも王がいるのですか?」
ホワイトはゆっくり頷いた。
「私は、直接知っているわけではない父から聞いた話だ」
窓の外を見ながら言う。
「今から、およそ30年前」
区長室の空気が少し重くなる。
「ECOは」
「あるエイリ星人と戦った」
「その存在は」
少し間を置く。
「エイリ星人の王」
エデンが小さく呟く。
「もう一人の王……」
ホワイトはゆっくりと言った。
「その名はエイリヲル」
ジエルが少し驚く。
「聞いたことねぇ名前だな」
ホワイトは頷く。
「知らないのも当然だろうね。エイリヲルの存在はECOの極秘記録に近い」
ホワイトは続ける。
「ECOの隊員たちが大きな犠牲を払いながら、エイリヲルを退けた」
エデンが聞く。
「倒したんですか?」
ホワイトはゆっくり首を振る。
「いや、退けただけで完全に倒したわけではないんだ」
ジエルが小さく舌打ちする。
「厄介だな」
ホワイトは真剣な目で三人を見る。
「もし、君たちの言うエイリワスが」
「本当に王なら」
少し低い声で言う。
「エイリ星人の王が再び動き出している」
部屋の空気が重くなる。
エデンの頭の中でケイが静かに呟いた。
『……興味深い』
エデンが心の中で聞く。
(何が?)
ケイは冷静に言う。
『王が複数存在する種族』
『そして30年前のエイリヲル撃退』
『情報が繋がり始めている』
エデンは少し緊張する。
(つまり?)
ケイは短く言った。
『君たちが巻き込まれている問題は』
『想像以上に大きい』
区長室の空気は重く静かだった。
エイリワス。
エイリヲル。
エイリ星人の王。
次々に出てくる話に、エデンたちもすぐには言葉が出なかった。
ホワイトはそんな三人の様子を見て、少し表情を和らげた。
「……すまないね」
穏やかな声で言う。
「急にこんな話をしてしまって」
ジエルが椅子にもたれながら言う。
「まぁ」
「スケールでかすぎて逆に実感わかねぇな.....」
亜爆は静かに考えている。
エデンも少し整理しきれていない様子だった。
ホワイトは机から少し離れ、三人を見た。
「先日のアモリス支部襲撃事件」
「君たちはかなり激しい戦いをしたと聞いている」
エデンたちは黙って聞く。
ホワイトは穏やかに続けた。
「だから、今日はもうこれ以上話すつもりはない」
ジエルが少し意外そうにする。
「あれ、もう終わりか?」
ホワイトは微笑んだ。
「君たちも、疲れているだろう」
少し優しい口調になる。
「数日間」
「休養を取ることを勧める」
エデンが少し驚く。
「休み……ですか?」
ホワイトは頷く。
「心も体も整えることは大切だ」
「それに」
少し意味深に言う。
「もし未来が本当に君たちに関係しているのなら」
「これから」
「もっと大変なことが待っているかもしれない」
ジエルが立ち上がる。
「まぁ」
「休めるなら休むけどな」
亜爆も静かに言う。
「そうしますか」
エデンも小さく頷いた。
「ありがとうございます」
ホワイトは軽く頭を下げる。
「今日は来てくれてありがとう」
「休みの申請はこちらで済ませておく」
三人は区長室を後にした。
廊下を歩きながら、
ジエルが大きく伸びをする。
「はー」
「なんかすげぇ話聞いた気がする」
亜爆は冷静に言う。
「興味深い情報でしたね」
エデンは少し黙って歩いていた。
その時、
頭の中でケイが静かに言う。
『休養か』
エデンは心の中で答える。
(うん)
(ちょっと休めるみたい)
ケイは短く言った。
『悪くない』
『戦いの後の休息は重要だ』
エデンは少し笑う。
(ケイも休む?)
少し間。
ケイは静かに答えた。
『私は君の中にいる。常に一緒だ』
エデンは小さく笑った。
その時――
遠くの空を見上げながら、
ジエルがぽつりと言う。
「けどよ、もし区長の言う未来が本当なら」
エデンと亜爆が見る。
ジエルは少し真面目な顔で言った。
「俺ら、とんでもないことに巻き込まれてんじゃね?」
三人はそのまま、
ECO支部へと戻っていった。
――数日間の休養が、始まろうとしていた。




