区長と未来視
ECO支部の前。
エデン、ジエル、亜爆の三人は
職員に案内されて外に出ていた。
職員が言う。
「市役所までは少し距離がありますので」
通りに止まっている車を指さす。
「タクシーで向かいましょう」
ジエルがタクシーを見て少し驚く。
「お、ちゃんとした移動手段なんだな」
エデンが少し笑う。
「歩きじゃないんだ」
三人はタクシーに乗り込み、
アモリス地区の中心へ向かった。
しばらくして――
大きな建物の前に到着する。
アモリス市役所だった。
職員が言う。
「こちらです」
三人は建物の中に入り、エレベーターで上階へ向かう。廊下を進み、一つの扉の前で止まった。
プレートには区長室と書かれている。
職員が扉をノックする。
「区長、三名をお連れしました」
中から落ち着いた声が返る。
「どうぞ」
職員が扉を開ける。
三人が中に入ると、大きな机の向こうに座っていた人物が立ち上がった。白い髪に整った服装。穏やかな雰囲気の男。
アモリス地区の区長――
ヘイロー・ホワイトだった。
ホワイトは三人に微笑みかける。
「よく来てくれたね」
「エデン君、ジエル君、亜爆君」
そして軽く頭を下げる。
「先日のアモリス支部襲撃事件で、君たちは進化個体の撃破に大きく貢献してくれたそうだね」
穏やかな声で続ける。
「この地区の代表として心から感謝しよう」
区長からの感謝を受けて、エデンは少し戸惑う。
「いえ……」
ジエルが腕を組む。
「なんで俺らだけなんだ?」
ホワイトが少し首を傾げる。
ジエルが続ける。
「支部の隊員みんな戦ってたぞ」
「襲撃を止めたのも俺らだけじゃねぇ」
エデンも頷く。
「はい。みんな頑張ってました」
亜爆も静かに言う。
「私たちだけが称賛されるのは少し不自然じゃないですか?」
ホワイトは一瞬驚いたように目を瞬かせ、
そして小さく笑った。
「……なるほど」
少し申し訳なさそうに言う。
「そういうことを言いたいわけではなかったんだ」
「すまないね」
軽く頭を下げる。
「もちろん支部の皆さん全員がこの地区を守ってくれた」
「それは理解している」
そして少し表情が変わる。穏やかさはそのままだがどこか真剣な空気になる。
「実は君たち三人を呼んだのには別の理由がある」
ジエルが眉を上げる。
「別の理由?」
ホワイトは机の前に立ったまま言った。
「少し変わった話になる。信じてもらえないかもしれないが」
そして静かに続ける。
「私の家系」
「ヘイロー家には」
「昔からある不思議な力がある」
エデンたちは顔を見合わせる。
ホワイトはゆっくり言った。
「それは」
「未来視だ」
ジエルが目を細める。
「未来視?」
ホワイトは頷く。
「そう、私には未来が見える。しかし、自由に見られるわけではない。いつ見えるのか。何の未来が見えるのかは自分では分からない」
静かな声で続ける。
「ある日突然頭の中に未来の光景が浮かぶ」
エデンが少し驚く。
「未来の光景……」
ホワイトは説明する。
「ただ未来を見るだけではない。その未来の状況とそれを変えるための条件をやんわりと知ることが出来る」
ジエルが腕を組む。
「変えるための条件?見えるのはいい未来ってわけじゃねえってことか?」
ホワイトは頷く。
「そうだ」
「未来視では必ず悪い未来が見える」
少し間を置く。
「今回の未来も悪い未来だった」
部屋の空気が少し重くなる。ホワイトは三人を見た。
「その未来には.....」
エデンが息を飲む。ホワイトの声は静かだった。
「おそらく君たち三人が関わっている」
部屋に静寂が落ちた。




