赫月 亜爆
「なぁ亜爆」
「はい?」
「お前、ランクいくつなんだ?」
ジエルは亜爆に対して質問する
ECOの隊員にはそれぞれランクがある。
DからSまで存在し、さらにその中でも数字がつく。
亜爆は少し考えるようにして答えた。
「Dランク」
ジエルがニヤッと笑う。
「おっ、同じじゃん」
しかし次の言葉でその表情は固まった。
「D-5です」
一瞬沈黙。
ジエルが腕を組み、わざとらしく胸を張る。
「……ふっ」
「俺はD-1だ」
そしてドヤ顔で言った。
「つまり俺の方が上だな」
しかし亜爆は特に反応を示さなかった。
「そうですねー」
あっさり流される。
ジエルの眉がピクッと動く。
「……」
「おい」
「もうちょっと悔しがれよ」
エデンが苦笑する。
亜爆は落ち着いたままだ。
ジエルは頭をかいた。
「なんでどいつもこいつも落ち着いてんだよ!」
その様子を見ていた天記が、ふと口を開いた。
「ちなみに僕はB-5だよ」
その言葉にエデンの目が大きく開く。
「Bランク!?」
ECOのランクはDから始まり、C、B、A、そしてSへと上がっていく。
つまり――
かなりの上位隊員だ。
ジエルがニヤニヤしながら言う。
「すげぇだろぉ」
「天記さんは強いんだぞ」
天記は困ったように笑った。
「いやいや、そんな大したものじゃないよ」
そのとき、亜爆がポケットからタバコを取り出した。
しかしジエルがすぐに言う。
「ここで吸うんじゃねぇぞ」
亜爆は素直に戻した。
「失礼失礼」
そしてエデンの方を見る。
「そういえば、能力を言ってなかった」
亜爆は続けた。
「そっちの能力は既に知ってるから」
「私の能力の説明を」
「私の能力は――」
「爆撃手」
ジエルが眉を上げる。
「ボンバー?」
亜爆は手のひらを軽く見せた。
「爆弾を生成する能力です」
「それを使って攻撃します」
エデンが驚く。
「爆弾を作れるの?」
「はい。ただし制限があって」
亜爆は淡々と説明した。
「現状、同時に作れるのは二つまで」
ジエルが腕を組む。
「二つか……」
しかしエデンは違う感想だった。
(いや……)
(十分強い能力じゃないか)
そのとき、頭の奥で声が響く。
『……うむ』
ケイの声だ。
『爆発は単純だが強力な破壊手段だ』
『扱い次第では非常に危険な能力だな』
エデンは心の中でうなずいた。
(やっぱりそう思うよな)
目の前では、亜爆が静かに立っていた。
その落ち着き方は、Dランクの新人とは思えないほどだった。
数日後
ジエル・レートはソファに寝転がりながら天井を見ていた。
「暇だ……」
向かいの椅子ではエデンが隊員証を眺めている。
新しく届いたそれにははっきりと刻まれていた。
ECO隊員 エミット・エデン
ランク:D-9
「なぁエデン」
「ん?」
「その隊員証、まだ見てんのかよ」
「いや……なんか実感がなくてさ」
エデンは少し笑う。
「少し前まで普通の生活してたのに、いきなりECOの隊員だって言われても」
「まぁな」
ジエルは起き上がり、腕を組む。
「でもよ、ECOはこの国で600人ぐらいしかいない組織だぞ?」
「その中に入ってんだから大したもんだろ」
エデンは少し驚いた顔をする。
「ジエルに褒められるとは思わなかった」
「褒めてねぇよ!」
ジエルがツッコむ。
「ただ俺の部下みたいなもんだって言ってんだよ!」
「ランクは俺の方が上だしな!」
そこへ静かな笑い声が入る。
「別に部下ではないと思うけどね」
振り向くと天記が立っていた。
まだ少し顔色は悪いが、歩ける程度には回復している。
「天記さん」
ジエルがすぐに姿勢を正す。
「ほんとに大丈夫なんすか?」
「うん、大丈夫だよ」
天記は軽く笑った。
「ちょっと無理しただけだから」
すると、部屋の隅から煙の匂いがした。
「……」
三人の視線がそちらに向く。
赫月亜爆だった。
窓を開けて煙草をくわえている。
ジエルが立ち上がる。
「おい!」
亜爆が振り向く。
「ここ支部だぞ!」
「あ......すみません」
亜爆はすぐに煙草を消した。
「つい癖で」
その様子にジエルは少し拍子抜けする。
「……けっこう素直なんだよな」
「注意されたらやめますよ。そりゃ」
亜爆は落ち着いた声で言った。
エデンが少し笑う。
「噂と全然違うな」
ジエルがニヤニヤする。
「Sランクに手出したってやつな」
亜爆は淡々と続ける。
「別に、こちらから喧嘩を売ったわけではないし。」
「向こうが試してきたというか」
「まあ色々あって殴ったというか...」
ジエルが目を丸くする。
「それで生きてんの?」
「運が良かっただけですよ」
さらっと言う。
エデンは亜爆を見つめる。
普通の男にしか見えない。
しかしその静かな雰囲気の奥に
何かが潜んでいるような気がした。




