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エデン  作者: ko-da
間章 

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27/90

新隊員

ECOアモリス支部――訓練室。


エデンは壁にもたれながら、隊員証を指先でいじっていた。

隣ではジエル・レートが椅子を逆向きにして座り、腕を組んでいる。


「……なあ、エデン」


「ん?」


ジエルは少しニヤッとした。


「今日、新しい隊員が来るの知ってるよな」


「赫月亜爆さん、だよね」


エデンは昨日聞いた名前を思い出す。


「確か隣の地区のウバクから転入してくるって……」


エデンは思い出した。


「たしかヤバイ噂があるんだっけ?」


そう聞くとジエルは身を乗り出して話した


「ECOのSランク隊員に手ぇ出したことがあるって話だ」


エデンは思わず目を丸くした。


「え!?Sランクって……最高ランクの?」


「そうだよ、このライサムに三人しかいねぇSランクだ」


ジエルは肩をすくめた。


「普通そんなことしたら消されてもおかしくねぇ」


「じゃ、じゃあすごく危ない人ってこと?」


「さあな」


ジエルはつまらなそうに言った。


「俺も噂しか知らねぇ」


その時。


訓練室の扉がゆっくり開いた。


ギィ……


入ってきたのは――


一人の男だった。


年は二十代前半ほど。

黒い髪に、少し眠そうな目。


軍人というより、どこか気だるそうな雰囲気をしている。


口にはタバコが咥えられていた。


「……あー、ここか」


男は辺りを見回しながら言った。


そしてポケットからライターを取り出す。


カチッ


火がついた。


その瞬間。


ジエルが叫んだ。


「おい!!」


男の手が止まる。


「……え?」


「ここで吸うんじゃねぇよ!」


訓練室の空気が一瞬止まる。


男は数秒ジエルを見つめたあと――


「……ああ」


と言ってタバコを口から外した。


ライターの火を消す。


「悪い」


そしてポケットにしまった。


その様子にジエルは少し拍子抜けした顔になる。


エデンはおそるおそる口を開いた。


「あの……」


男の視線が向く。


「あなたが……赫月亜爆さんですか?」


男は軽く頷いた。


「そう」


「赫月 亜爆」


「今日からここに来ました」


声は落ち着いている。


少し冷めたような口調だった。


エデンは思い切って聞いた。


「えっと……一ついいですか?」


「なんだ」


「さっきジエルが言ってたんですけど……」


エデンは少し言いづらそうにする。


「Sランク隊員に手を出したって噂……」


亜爆は黙った。


ジエルも腕を組んだまま見ている。


数秒の沈黙。


そして亜爆は――


小さく肩をすくめた。


「……否定はしないです」


あまりにもあっさりした答えだった。


エデンは驚く。


「えっ……」


ジエルの口角が少し上がる。


「へぇ」


亜爆は天井を見上げながら言った。


「まあ……色々あっただけなんで」


「気にするほどのことじゃ....」


そう言うとポケットからタバコを取り出し――


少し考えて、またしまった。


「……怒られるしな」


ジエルが鼻で笑った。


「分かってんなら最初から出すな」


亜爆は小さく息を吐いた。


「ここ喫煙室ないんだよ」


「誰がここで喫煙すんだよ、俺らまだ学生だぞ!」


エデンは二人を見ながら、ふと思った。


(この人……)


噂で聞いたような

危険な人物には見えない。


ただ――


どこか。


とても冷めた目をしていた。


まるで。


何かをもう諦めている人のような目だった。


訓練室の空気が少し落ち着いた頃だった。


扉がゆっくりと開く。


「……あれ、もうみんな集まってる?」


入ってきたのは――

天記 憶流だった。


その姿を見た瞬間、エデンとジエルが同時に声を上げる。


「天記さん!?」


「おい、大丈夫なのかよ!」


天記は腕に巻かれた包帯を軽く押さえながら、困ったように笑った。


「大丈夫だよ....」


「もう歩けるから.....」


だが顔色はまだ悪く、立ち方も少し頼りない。


エデンはすぐに近づいた。


「でも、まだ休んでた方が……」


「そうだぞ」


ジエルも腕を組む。


「この前、あんな吹き飛ばされ方して――」


天記は小さく笑う。


「はは……」


「隊員が増えると聞いてね。顔くらいは出さないと」


そして視線をゆっくりと亜爆へ向ける。


「あなたが……赫月 亜爆さんですね」


壁にもたれていた男が顔を上げた。


「ええ」


「赫月亜爆です」


落ち着いた声だった。


少し眠そうだが、礼儀は崩れていない。


天記は微笑む。


「アモリス支部へようこそ」


「歓迎するよ」


しかしそのまま、少し真剣な表情になる。


「……一つ聞いてもいいかな」


亜爆は静かに視線を向けた。


「構いません」


天記はゆっくりと言った。


「この部隊で、本当に良かったの?」


エデンとジエルが少し驚く。


天記は続けた。


「ここは……見ての通り」


「僕を除けば、まだ教育課程中の隊員ばかりだ」


エデン

ジエル

そしてこれから配属される新人。


「君ほどの隊員なら、もっと前線の部隊に配属されてもおかしくない」


「それなのに、どうしてこの部隊に?」


静かな空気が流れる。


亜爆は少しだけ天井を見上げた。


そして落ち着いた声で答える。


「理由なら単純です」


「私はまだ」


一拍置く。


「戦闘に関する教育課程を終えていません」


エデンが目を丸くした。


「え?」


ジエルも眉をひそめる。


「は?」


亜爆は淡々と続ける。


「ですので、ここに配属されました」


「それだけですよ」


ジエルは呆れたように言った。


「いや待て」


「お前、Sランクに手ぇ出したとかいう噂あるのに」


「教育終わってねぇのかよ」


亜爆は少し肩をすくめる。


「.......」


「色々事情があって..」


天記はその言葉を聞き、少し考えるような表情になった。


だがすぐに優しく笑う。


「そうでしたか」


「なら丁度いい」


三人を見回す。


「ここは教育部隊のようなものだから」


「ゆっくり慣れていってね」


亜爆は軽く頷いた。


「ありがとうございます」


その時、ジエルがぼそっと言う。


「でもよ」


三人の視線がジエルに集まる。


ジエルは亜爆をじっと見ていた。


「教育終わってない奴が」


「Sランクに手ぇ出すか普通?」


沈黙。


亜爆は少しだけ目を細め――


そして、穏やかに言った。


「さて...」


「それは……どうかね」


言い方は丁寧だったが


どこか。


意味を隠しているようだった。

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