ランク
エデンの視界に、白い天井が映った。
かすかな機械音。消毒液の匂い。
医療室だと気づくまでに、少し時間がかかった。
「……起きたか」
横から聞こえた声。
振り向くと、椅子に腰掛けているジエル・レートがいた。
腕にはまだ包帯が巻かれている。
「ジエル……」
エデンは体を起こそうとする。
「無理すんな」
ぶっきらぼうに言いながらも、ジエルはベッドの背もたれを起こした。
「……天記さんは?」
エデンの第一声はそれだった。
ジエルは少しだけ視線を逸らす。
「生きてるよ」
短く言う。
「重傷だけどな。今は治療中だ」
それを聞いて、エデンは大きく息を吐いた。
「よかった……」
ジエルは腕を組みながら言う。
「お前な」
「普通、目覚めたら自分の心配するだろ」
エデンは苦笑する。
「俺は大丈夫そうだし」
「それより二人が無事なら」
ジエルは少しだけ鼻で笑う。
「……ほんと変なやつだなお前」
少しの沈黙。
そしてジエルが言った。
「お前、丸一日寝てたぞ」
「え?」
「昨日の夜、帰ってきてからずっと」
エデンは目を丸くする。
そのとき。
コンコン。
医療室のドアがノックされた。
白衣の職員が入ってくる。
「目が覚めたんですね。よかった」
そして思い出したように言った。
「そういえば、少し遅れましたがこれを」
差し出されたのは、小さなカードだった。
ECOの紋章。
「隊員証です」
エデンは受け取る。
そこには番号が刻まれていた。
ECOアモリス支部所属
隊員番号AM-0124
D-9
エミット・エデン
「D……9?」
ジエルが横から覗き込む。
そしてニヤッと笑った。
「おっ」
「新人ランクだな」
エデンが首を傾げる。
「ランク?」
ジエルは自分のカードを見せた。
そこにはこう書かれていた。
D-1
ジエル・レート
「ECOの隊員ランクは」
「D、C、B、A、Sの五段階。DよりC、CよりBの方が高い。分かるだろ」
指を折りながら説明する。
「で、同じランクでも番号がある」
「10から1まで」
エデンが言う。
「じゃあ……」
ジエルが胸を張る。
「数字が小さい方が上」
「つまり俺はDランクの中で一番強い」
そしてニヤニヤしながらエデンを見る。
「お前は一番下一歩手前だ」
「D-9」
「新人だな」
完全に煽っている。
エデンは苦笑した。
「……そっか」
エデンはカードを見つめる。
D-9。
だが。
不思議と嫌な気持ちはしなかった。
むしろ。
「よし」
エデンはカードを握る。
「頑張らないとな」
ジエルは少し驚いた顔をする。
普通は落ち込むところだ。
だがエデンは笑っている。
「やっぱり……変なやつ」
ジエルは小さく呟いた。
そのとき。
職員がふと思い出したように言う。
「ああ、そうだ」
「もう一つ連絡があります」
エデンとジエルが顔を向ける。
「明日、新しい隊員がアモリス支部に転入してきます」
「転入?」
ジエルが眉をひそめる。
「新人ですか?」
職員は首を横に振る。
「いえ」
「他支部からの移動です」
そして名前を告げた。
「赫月 亜爆」
その名前を聞いた瞬間。
ジエルの表情が少しだけ変わった。
「……あいつか....」
エデンが聞く。
「知ってるの?」
ジエルは腕を組む。
「噂だけな」
少しだけ笑う。
「結構ヤバいやつらしい」
医療室の窓の外。
夕焼けが広がっている。
「ヤバイやつ,,,,,,か」
エデンはそれを見ながらそう言った。




