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エデン  作者: ko-da
第2部 5章 恐怖と剣編

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早朝訓練

翌日。

朝のECOアモリス支部には、まだ少しだけ静けさが残っていた。

窓から差し込む朝日が、寮の廊下を淡く照らしている。

隊員たちが活動を始めるには、まだ少し早い時間だった。

フルトは自分の部屋で、のんびりと過ごしていた。

ベッドに腰を下ろし、特に何をするでもなくぼんやりしている。

昨日の出来事を思い返せば、三日後にはブウタ地区で任務がある。

そのために血刃から鍛えると言われた。

しかし、昨日は「今日の所は休め」と言われたのだ。

だから今日は、まだ少し余裕があると思っていた。

「……朝はゆっくりできると思ったんだけどな」

フルトは小さく呟く。

その時だった。

コンコン。

部屋の扉がノックされた。

「ん?」

フルトは顔を上げる。こんな朝から誰だろう。

シオンだろうか。

それとも、何か連絡でもあったのだろうか。

「誰だろう、こんな朝から」

フルトはベッドから立ち上がる。

寝間着のまま扉へ向かい、何の疑いもなく扉を開けた。

「はい――」

「鍛錬を始めるぞ」

「…………」

目の前にいたのは血刃だった。

フルトは固まった。

朝早くから突然現れた老人を見つめる。

昨日と変わらないECOの制服。

腰には刀。

そして、眠気など微塵も感じさせない鋭い目。

「へ?」

間の抜けた声が、フルトの口から漏れた。

血刃はそんなフルトを気にすることなく、部屋の中を覗く。

「何をしておる。早く来い」


「え、あの……」

フルトは状況を理解できていなかった。

昨日、血刃は確かに言っていた。

鍛錬は明日から。

それは覚えている。

しかし、まさか朝一番から迎えに来るとは思っていなかった。

フルトは扉の外へ視線を向ける。

そこには三人の姿があった。

一人は、眠そうに目を擦っているシオン。

「……眠い……」

まだ完全に目が覚めていないらしい。

その隣では、エデンが身体を伸ばしていた。

腕を回し、肩をほぐしながら準備運動をしている。

「おはよう、フルト」


「お、おはようございます……」

そして、その横には緋山もいた。

こちらは黙々とストレッチをしている。

足を伸ばしながら、フルトを見ると小さく頷いた。

「おはよう!」


「お、おはよう」

フルトは三人を見てから、もう一度血刃を見る。

「……どういうことですか?」


「昨日言ったじゃろう」

血刃は当然のように答える。

「鍛錬は明日からじゃって」


「いや、そうですけど……」


「今はその明日じゃ」


「そうですけど!」

フルトは思わず声を上げた。

血刃は不思議そうに首を傾げる。

どうやら、本当に何も問題がないと思っているらしい。

「ほれ、準備せい」


「ま、待ってください! まだ着替えてもいないですし!」


「着替えればよかろう」


「今からですか!?」


「今からじゃ」

あまりにも話が早かった。フルトは玄関から急いで部屋までいった。着換えを急いで済ませ、玄関まで戻って行く。

戻ってきたフルトの腕を血刃は掴んだ。

「え?」


「行くぞ」


「ちょ、ちょっと待ってください!」

血刃はそのまま歩き始めた。


「え、えええ!?」

フルトは引っ張られる。

「まだ心の準備が――!」


「鍛錬に心の準備などいらん」


「いや、いると思います!」


「いらん」


「いいい、いると思いますって!」

フルトの声が、朝の寮に響く。

シオンは眠そうな目で、その様子を眺めていた。

「……朝から元気だね」


「元気というか、連れていかれてるね」

エデンが苦笑する。

緋山もフルトの後ろ姿を見ながら、少しだけ心配そうにしている。

「大丈夫かな……」


「まあ、血刃さんも悪い人じゃなさそうだし」

エデンはそう言って歩き始める。

「俺たちも行こう」


「はい」

三人も後を追う。

一方、フルトは血刃に引っ張られながら、必死に足を動かしていた。

「ちょっと、本当に待ってください!」


「待たん」


「どうしてですか!」


「お前が逃げそうだからじゃ」


「逃げてませんよ!」


「昨日は最初行かんと言っとったじゃろ」


「それはそうですけど!」

そんなやり取りを続けながら、一行は寮を出る。

そして、そのままECOアモリス支部の訓練室へ向かっていった。

やがて訓練室の扉が見えてくる。

フルトはそれを見て、顔を引きつらせた。

「……もう着いた」


「当然じゃ」

血刃は扉を開ける。

広い訓練室が目の前に広がった。

フルトはその入口で立ち止まる。

昨日までは、ただの訓練室だった。

けれど今は違う。

これからここで、血刃に鍛えられる。

しかも三日後には、実際の任務が待っている。

フルトはごくりと息を呑んだ。

「……怖い」

思わず口から漏れた。

その言葉を聞いた血刃は振り返る。

「そうか」

血刃は訓練室の中央へ歩いていった。

「さあ、始めるぞ」

エデンたちも訓練室へ入る。

シオンはまだ眠そうだったが、ようやく目を覚まし始めている。

緋山はすでに身体をほぐし終えていた。

エデンも拳を握り、準備を整える。

そしてフルトは――

逃げ出したい気持ちを抱えながらも、訓練室の中へ一歩踏み込んだ。

三日後の任務に向けた、最初の鍛錬が始まろうとしていた。

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