新たな力
エイリガフが迫る。
巨大な腕が振り下ろされる。
その瞬間。
エデンは決断した。
(拡張する)
ただ筋力を上げても足りない。
あの質量を止めるには――
防御そのものを書き換えるしかない。
『理解した』
ケイの声が低く響く。
(防御を上げる。あいつの攻撃を受け止められるレベルまで)
『……代償は大きいぞ』
(いい)
一瞬。
心臓の鼓動が止まったように感じる。
次の瞬間。
黒い光がエデンの身体から噴き出す。
ラベジニウムのエネルギー。
それが形を成す。
肩。
腕。
胸。
脚。
漆黒の鎧が生成されていく。
まるで夜を纏う騎士。
『能力の名はリミットナイト。』
エイリガフの拳が直撃する。
轟音。
地面が割れる。
だが。
エデンは――
吹き飛ばされなかった。
腕を交差させ、防御の姿勢を取っている。
衝撃が黒鎧を震わせる。
足元が沈む。
それでも、立っている。
ジエルが目を見開く。
「……なんだ、それ」
エイリガフの赤い眼が揺らぐ。
――「ボウギョトッカ....」
再び拳が振るわれる。
二撃。
三撃。
連撃。
だがエデンは防ぎ続ける。
黒鎧が軋む。
火花が散る。
ジエルが駆け出そうとする。
「加勢する!」
「来るな!」
エデンが叫ぶ。
「天記さんの状態を確認してくれ!!」
その一言で、ジエルの足が止まる。
冷静さを取り戻す。
歯を食いしばり、天記の元へ走る。
エデンは一人で受ける。
受け続ける。
重い。
骨に響く衝撃。
黒鎧の表面にひびが入る。
(まだ……いける)
だが。
消耗が激しい。
リミットナイトは“限界を防御方向へ拡張”している。
身体の負担は尋常ではない。
呼吸が荒くなる。
視界が暗くなる。
『限界が近い』
ケイが告げる。
『リミットナイトとリミットフォース、同時使用は不可能だ』
(分かった……!)
『仕留めるなら一撃だ』
選択。
防ぎ続ければ、いずれ砕かれる。
攻めなければ、勝てない。
エイリガフが巨大な腕を振り上げる。
今までで最大の一撃。
エデンは、鎧を解除する。
黒い装甲が霧散する。
無防備。
ジエルが叫ぶ。
「何やってんだ!!エデン!!」
エイリガフの拳が迫る。
その刹那。
リミットフォース、最大解放。
世界が止まる。
筋肉。
神経。
感覚。
限界を超える。
(今だ)
エイリガフの腕が振り下ろされる軌道。
わずかな隙。
踏み込む。
拳に、全てを込める。
一撃必殺。
──夜を裂く音が、次の瞬間響こうとしていた。




