エイリガフ
巨大な腕が振り上げられる。
狙いはジエル。
発電機を全開にしているとはいえ、直撃すれば終わる。
「ジエル!!」
エデンが叫ぶ。
「待て、エイリ星人!!」
一瞬。
巨大な腕が止まる。
赤い眼がエデンを向く。
そして、低く濁った声が響く。
――「ワガナハ、エイリガフ」
空気が震える。
名を持つ。
自我を持つ。
エデンは理解する。
このエイリ星人は他とは違う自我を持つ個体だと
その一瞬の隙。
「今だ!」
バンッ!!
天記の銃撃。
銃弾が関節へ命中。
同時にジエルが跳ぶ。
「らぁぁあ!!」
電気をまとった回し蹴り。
全出力。
雷光が夜を裂く。
直撃。
衝撃波が広がる。
だが。
煙が晴れる。
エイリガフは、立っていた。
外殻に焦げ跡。
だが、損傷は軽微。
――「....ヨワイ」
その言葉に、冷たいものが背を走る。
ジエルが歯を食いしばる。
「効いてねぇ……!?」
天記の顔色が変わる。
計算が狂う。
火力不足。
三人では足りない。
明確に。
「……撤退、支援要請を」
天記は通信機に手を伸ばす。
次の瞬間。
視界が歪む。
巨大な影。
「まずい..」
気づいた時には遅い。
ドォン!!
エイリガフの腕が、天記を横殴りに叩き飛ばす。
銃が宙を舞う。
通信機が地面に落ち、砕ける。
天記の身体がコンクリートに叩きつけられる。
鈍い音。
動かない。
「……っ、天記さん!!」
エデンの声が裂ける。
ジエルの電流が一瞬乱れる。
「てめぇ……!!」
だがエイリガフは冷静だ。
――「シキケイトウノハカイ、セイコウ」
意図的。
最も厄介な存在から潰した。
通信機から火花が散る。
沈黙。
援助は来ない。
夜は静かだ。
廃工場地帯に、三人だけ。
いや――
実質、二人。
ジエルは限界が近い。
エデンの肋骨は悲鳴を上げている。
天記は重症。
エイリガフがゆっくりと前へ出る。
圧倒的質量。
圧倒的余裕。
――「オワリダ」
その言葉が、死刑宣告のように響く。
エデンの中で何かが揺れる。
恐怖。
怒り。
焦燥。
『エデン』
ケイの声が、静かに響く。
『......どうする』
視界の端。
倒れている天記。
立ち上がろうとするジエル。
迫るエイリガフ。
このままでは、全滅。
エデンは息を吸う。
そして――
決断する。
夜のベヘモトで、空気が変わる。




