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エデン  作者: ko-da
第2部 4章 才と勇気編

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自分の力

グラスは、人を襲おうとしているエイリ星人を見据えた。次の瞬間――

「うおおおっ!」

拳を振り抜く。鈍い衝撃が腕に伝わり、エイリ星人の身体が大きく吹き飛んだ。地面を転がり、建物の壁際まで飛ばされる。

「……!」

追い詰められていた人々が、呆然とグラスを見る。

「た、助かった……」


「今のうちに!」

グラスはすぐに周囲を見回した。

「全員、あっちの店に逃げてください!」

指差した先には、ドロイが向かった店がある。そこならドロイがいる。ECOの隊員であるドロイがいる場所なら、自分一人で守るよりも安全だ。グラスはそう判断した。

「早く!」

声に押されるように、人々が一斉に走り出す。

「ありがとうございます!」


「助けてくれてありがとう!」

次々と声をかけられながら、人々は店の方向へ逃げていく。

最後の一人が走り去ったことを確認して、グラスは小さく息を吐いた。そして――眼鏡の位置を直す。

先ほどまで震えていた手は、もう止まっていた。視線の先。倒れていたエイリ星人が、ゆっくりと立ち上がる。


グラスは拳を握った。

「かかってこい……」


エイリ星人が低い声を上げる。そして、一気にグラスへ向かって走り出した。腕が振り上げられる。鋭い爪が迫る。


(動け)

グラスは足を踏みしめた。

(立ち向かえ)

恐怖が消えたわけではない。それでも、今度は逃げない。

(傷ついてもいい)

エイリ星人の腕が振り下ろされる。


「――っ!」

グラスは腕を上げ、その攻撃を受け止めた。衝撃で身体が僅かに後ろへ押される。それでも耐える。

(守れ)

次の瞬間――

エイリ星人の爪がグラスの腕をかすめた。


「ぐっ……!」

鋭い痛みに、グラスの顔が歪む。反射的に腕を引きそうになる。けれど――

「……まだだ!」

グラスは踏みとどまった。痛みや怖さがグラスを襲う。それでも、目の前の敵から視線を逸らさない。

エイリ星人が再び腕を振り上げる。グラスはその腕を両手で掴む。力を込める。

エイリ星人は抵抗するが、グラスはその腕を離さない。

そのまま身体を捻り――

「はあっ!」

エイリ星人を地面へ叩きつけた。


「グアッ!」

地面に倒れたエイリ星人へ、グラスはすぐに飛びかかった。馬乗りになる。拳を握る。

「これ以上……!」

拳を振り下ろす。

「人を傷つけさせない!」

もう一度。

「守るんだ……!」

さらに拳を振るう。

これまでなら、自分ではなく分身に任せていた。けれど今は違う。自分の拳で。自分の足で。自分自身が立ち向かっている。

「オレは……!」


その瞬間、エイリ星人が大きく身体を捻った。

「――っ!」

強烈な力で押し返される。グラスの身体が浮き、地面へ転がった。

「ぐっ……!」


エイリ星人が起き上がる。こちらを睨みつける。

グラスも立ち上がった。腕には痛みが残っている。呼吸も乱れている。それでも――

眼鏡を直す。そして、もう一度エイリ星人を見据えた。今度は、足が動かなかった自分ではない。自分の足で立っている。

「……まだ、終わってない」

グラスが再び構えたその時。視界の端に、何かが映った。

「……?」

グラスがそちらへ顔を向ける。

そこにいたのは――自分と同じ姿をした、もう一人のグラスだった。先ほど悲鳴の聞こえた方向へ向かわせた分身。グラスは一瞬、驚いた。そしてすぐに、その意味に気づく。

「もしかして、あっちのは倒したのか?」

分身は静かに頷いた。

「……そうか」

ならば、残っているのは目の前の一体だけ。グラスは拳を握った。

「なら、今度はこっちだ」

分身と並び立つ。二人のグラスが、同じエイリ星人を見据える。

先ほどまで一人で戦っていた時とは違う。今度は、自分の能力だけに任せない。共に戦う。

「行くぞ!」

分身が先に飛び出した。エイリ星人へ一直線に迫る。その身体へ飛びかかり、両腕を広げる。

「グルァッ!」

エイリ星人が腕を振るう。分身が視界を塞ぐように立ちはだかった。その隙に――

鋭い爪が分身を捉える。

「――!」

分身の身体が揺らぎ、そのまま消滅した。エイリ星人が前を見る。そこにグラスはいない。

「……?」

次の瞬間。

「こっちだ」

背後から声が響いた。


「――!」

グラスの拳が、エイリ星人の背中を捉えた。

「たあっ!」


エイリ星人の身体が前へよろめく。だが、すぐに振り返る。爪を振り上げ、グラスへ反撃する。

「分身(クローン)!」

グラスの目の前に、もう一人の自分が現れた。振り下ろされた攻撃を、分身が受け止める。その瞬間、分身の身体が消滅した。そして――

「今だ!」

グラスが踏み込んだ。拳を振り抜く。エイリ星人の身体が大きく吹き飛んだ。地面を転がり、勢いのままさらに距離が開いていく。

グラスはエイリ星人をすぐに追いかけた。足を止めない。走りながら、ラベジニウムを発動させる。

「分身(クローン)!」

隣に分身が現れる。そのまま二人でエイリ星人へ迫る。エイリ星人が起き上がろうとした瞬間――

分身が先に飛び込んだ。

「今だ!」

分身が両腕でエイリ星人の身体を掴む。エイリ星人が激しく抵抗する。

「グルッ!」

それでも分身は離さない。その一瞬で、グラスはさらに加速した。地面を強く蹴る。身体が宙へ浮く。

「これで――!」

グラスは空中で身体を捻った。そして、エイリ星人へ向かって一気に脚を振り抜く。


「終わりだ!」


強烈な蹴りがエイリ星人を捉えた。その衝撃で、エイリ星人の身体が大きく吹き飛ぶ。地面を転がり、やがて動きを止める。そして――

身体が崩れていった。そのまま、街の中からエイリ星人の姿が消える。

「……」

グラスは着地し、荒い呼吸を整えた。静かになった街を見渡す。もう、敵の姿はない。やがてグラスは、自分の拳を見つめた。さっきまで震えていた。怖かった。何度も足が止まりそうになった。それでも――

「……やった」

小さく呟く。今回は、分身だけに任せたわけじゃない。自分自身が前に出た。自分の力で、人を守った。グラスは眼鏡を直す。その表情には、ほんの少しだけ自信が宿っていた。

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