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エデン  作者: ko-da
第2部 3章 罪と力編

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捜索開始

ナロクは、エデンたちの少し後ろを歩いていた。

先ほどまでの出来事が、頭から離れなかった。

街を歩いているだけだった。お年寄りに挨拶をして、子供たちに声をかけられて、何事もなく一日が過ぎていく。ほんの少し前まで、そんな平穏な時間だった。

それなのに――突然、事件が起きた。

能力によって傷つけられたという男性。そして、その犯人はおそらくECOの隊員ではない。能力犯罪者。ナロクは拳を握った。

(なんでなんだ?)

歩きながら、何度も同じ疑問が頭を巡る。能力を持っている。それだけで、普通の人間にはない力を持っている。だったら、その力を誰かを傷つけるために使う必要なんてない。むしろ――

(力があるなら……人を助けられる)

ナロクは前を歩くエデンたちを見る。エデンは周囲を警戒しながら歩いている。亜爆(あばく)は時折周囲を確認し、緋山(ひやま)にも注意を向けている。

誰かを傷つけるためではない。街にいる人たちを守るために、彼らは力を使っている。ナロクにとって、それが当たり前だった。

だからこそ、分からない。同じように能力を持っている人間が、どうして誰かを傷つけるのか。

(力って……そんなに怖いものなのか?)

ナロク自身、現在能力を習得出来ていない。数日前に亜爆に特訓を頼んだのも、一刻も早く自分の力を使いこなしたかったからだ。けれど――

(もし俺が……力を間違えて使ったら?)

ナロクは足を止めかけた。その瞬間、前を歩いていたエデンが振り返る。

「ナロク?」


「……!」

ナロクは顔を上げる。


「どうしたの?」


「いや……」

ナロクは少し迷った。けれど、すぐに首を横に振る。

「何でもありません!」


「そう?」

エデンは少し不思議そうにしたものの、再び前を向いた。

ナロクも歩き出す。その背中を見つめながら、ナロクは思った。

(俺は……何のために力を使うんだ?)

まだ、はっきりとした答えは分からなかった。力を持つということは、それをどう使うのかを選ばなければならないということ。そして、自分はこれからその選択を何度もすることになるだろうと、そう心の中で思ったナロクは拳を強く握りしめた。

(とにかく俺は……誰かのために力を使いたい)

その決意だけを胸に刻み、ナロクはエデンたちの後を追った。


通信機からアグレスの声が聞こえてくる。その声は普段の落ち着いたものではなかった。

『被害者がまた増えた!』

その連絡を聞いた瞬間、四人の足が止まった。

街中を歩き回っていたエデンたちの間に、先ほどまでとは明らかに違う緊張が走る。

「……また?」

エデンが通信機を握り直す。


『今度は二人。場所は中央通りから少し外れた路地。さっきの事件と同じような傷を負ってる』


「分かりました。すぐ向かいます!」

エデンは返事をすると、すぐに走り出した。

「行こう!」


「はい!」

緋山が続き、ナロクも遅れずに走る。

亜爆は最後尾につきながら、周囲を警戒していた。

犯人は神出鬼没。目撃証言によれば、突然地面に円が現れ、その円から現れる。そして攻撃した直後、再び円を使って姿を消す。もしそれが本当なら、普通に街を歩いて探しているだけでは見つからない。こちらが探している間にも、犯人は別の場所へ現れる。まるで街そのものを自由に移動しているようだった。

「亜爆さん!」

ナロクが走りながら声をかける。

「なんでしょう?」


「この犯人……捕まえられるんでしょうか!」


「分かりません」

亜爆は即答した。

「ですが、被害者の証言が正しければ、円でワープするはずです。簡単には捕まらないでしょう」


「円……」

ナロクが呟く。

頭の中に、最初の被害者が語っていた光景が浮かんだ。

地面に突然現れた円。そこから出てきた人間。そして、別の場所に現れた円。

「……円でワープするだけなのか?」


エデンは前を見たまま言う。

「能力の全貌が分からなくても、被害を止めることが先だ」


「はい!」

四人は路地へと入った。そこには、すでに何人かの警察官が集まっていた。その中心にアグレスがいる。

「エデン君!」

アグレスがこちらに気づく。


「被害者は?」

エデンが駆け寄る。


「こっち」

アグレスが路地の奥を指差した。

そこには二人の男性が座り込んでいた。どちらも腕を押さえている。

幸い、命に関わるような状態ではなさそうだった。しかし、二人ともひどく怯えている。

「突然出てきたんだ……」


「何もしてないのに……」

被害者の言葉を聞きながら、エデンは周囲を見渡した。

路地には建物が並んでいる。逃げ道はいくつもある。そして――

「……円は残ってないか」

緋山が地面を見た。


「犯人は?」

エデンはアグレスに聞く。

「逃げられてる....」


「皆、探しに行こう」

その言葉を聞いたエデンは犯人による被害を食い止めるために、緋山達と共にまた犯人の捜索をしに行く。

街道を走り回り、路地裏まで隅々まで捜索したが、犯人を見つけることはかなわなかった。

「どこにもいない....」

亜爆がそう呟いたその瞬間。


――通信機が鳴った。


『エデン君! 聞こえる!?』

アグレスの声だった。


「はい!聞こえてます!」


『今、別の場所で円が出たって通報があった!』


「場所は!?」


『中央通りの東側! 商店街の近く!』


エデンはすぐに振り返った。

「行こう!」


四人が一斉に走り出す。

その背後で、ナロクは拳を握っていた。

「……捕まえる」

その目には、初めて明確な戦意が宿っていた。

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