↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エデン  作者: ko-da
第2部 2章 休暇編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
197/248

穏やかな時間

その後、しばらくして。

窓の外から差し込んでいた日差しも、少しずつ傾き始めていた。

昼食を終えてから、シオンと緋山(ひやま)はリュートやフェイルと話をしていた。エデンが買ってきたルーも加わり、フェイルがもう一度温め直したカレーを食べながら、二人は穏やかな時間を過ごしていた。

やがて、シオンが時計を見る。

「……そろそろ帰らないと」


「もうそんな時間?」

緋山(ひやま)も時計を見る。

思っていたよりも時間が経っていた。

「寮に戻るの、遅くなっちゃいますね」


「そうだね」

シオンが立ち上がる。

「今日はありがとうございました」


フェイルも立ち上がり、二人の方へ近づいた。

「こちらこそ。来てくれて嬉しかったわ」


「楽しかったです」


「私もです!」

緋山は深く頭を下げる。

「ご飯まで食べさせてもらって、本当にありがとうございました!」


「そんなに畏まらなくてもいいのよ」

フェイルは笑いながら言った。

「またいつでも遊びに来てちょうだい」


「……また来てもいいんですか?」

シオンが尋ねる。


「もちろんよ」

フェイルは即答した。

「エデンの友達なんだから、遠慮しなくていいわ」


その言葉に、シオンは少し目を丸くした。

そして、静かに頭を下げる。

「……ありがとうございます」


「私もまた来たいです!」

緋山が元気よく言う。

その後ろから、リュートが杖をつきながら近づいてきた。

「帰るなら気をつけてな」


「はい」


「二人とも、またエデンをよろしく頼む」


「……え?」

シオンが少し驚く。

リュートは穏やかに笑っていた。

「俺たちが知らないところで、あいつは無茶するだろうからな」


「父さん」

エデンが少し困ったような顔をする。

「俺、そんなに無茶してないって」


「そういうところだ」


「どういうところだよ」

リュートは笑い、シオンと緋山を見る。

「もしあいつが無茶してたら、ちゃんと止めてやってくれ」


「……分かりました」

シオンは真剣な表情で頷いた。

「任せてください」


「私も止めます!」

緋山も胸を張る。

エデンは二人を見て、少しだけ笑った。

「なんで二人ともそんな真面目に答えてるんだよ」


「先輩仲間だから」

シオンが答える。シオンはエデンを見る。

「今日、少しだけ分かった気がする」


「何が?」


「先輩って、どういうものなのか」


エデンは首を傾げる。

「……よく分かんないけど、まあ頑張って」


「うん」

シオンは小さく笑った。

「それじゃあ、失礼します」

二人は玄関へ向かう。

フェイルが玄関まで見送りに来る。

「今日はありがとうね」


「こちらこそ、ありがとうございました」


「また来てね」


「はい!」

緋山が靴を履く。

シオンも靴を履き終え、玄関の扉へ手をかけた。その瞬間、シオンは一度だけ振り返った。そこにはエデンと、その両親が立っている。穏やかな家の光景。戦いの中で生きている自分たちにとって、こういう場所は少しだけ特別に感じられた。

「……エデン」


「ん?」


「今日はありがとう」


「こっちこそ」

エデンは軽く手を上げる。

「また支部でね」


「うん」

扉が開く。

二人は外へ出た。

扉がゆっくりと閉じていく。最後に見えたのは、エデンがこちらへ手を振っている姿だった。そして、扉が閉まる。二人は並んで歩き始めた。しばらくの間、どちらも何も言わなかった。住宅街には、休日らしい穏やかな空気が流れている。遠くから車の走る音が聞こえる。風が吹き、街路樹の葉が揺れる。

やがて、緋山が口を開いた。

「……シオン先輩」


「何?」


「今日、来てよかったですね」


シオンは少し考える。

「……うん」


「エデン先輩のこと、色々分かった気がします」


「私も」

二人は歩きながら、今日聞いた話を思い返していた。エデンが幼い頃から人を助けていたこと。家族との関係。

緋山はふと足を止める。

「……私」


シオンも立ち止まる。

「どうしたの?」


「やっぱり、エデン先輩を選んでよかったです」


「……そう」


「はい」

緋山は前を向く。

「私、ジエルさんに助けてもらったことがあるんです」

シオンは黙って聞いていた。

「だから、最初はジエルさんの後輩になりたかった」

緋山は少し寂しそうに笑う。

「でも、今日エデン先輩の家に行って……」

一度言葉を止める。

「エデン先輩も、きっと同じように誰かを守ってきた人なんだなって思いました」


「……うん」


「だから私、エデン先輩のことをもっと知りたいです」

シオンは緋山を見る。そして、少しだけ笑った。

「じゃあ、ぼくも頑張らないと」


「え?」


「ぼくも先輩だから」

シオンは前を向く。

「もっと頼れるようになりたい」

エリア・ストラスでの出来事。あのときのフルトの姿を思い出す。シオンは拳を軽く握った。

「次は、ちゃんと守れるようになりたい」


「……はい!」

緋山も笑った。

二人は再び歩き始める。その背中は、まだ小さい。まだまだ経験も足りない。戦場で判断を誤ることもあるだろう。それでも。今日という一日を通して、二人はほんの少しだけ前へ進んでいた。

そして、その日の夕方。

アモリス支部へ戻る道の途中で、緋山はふと空を見上げた。

「……ジエルさん」

小さく呟く。

「どこにいるんでしょうね」

シオンも空を見る。答えは分からない。ECOの記録では、ジエル・レートは死亡と判断されている。けれど、エデンは信じている。どこかで生きていると。そして緋山も、いつの間にかその考えを否定できなくなっていた。


「……生きてるといいね」

シオンが言う。


「はい」

緋山は頷く。

「きっと、生きてますよ」


二人はそう言って、再び歩き出した。

休日はまだ終わっていない。

けれど二人の中では、もう次の任務へ向けた準備が始まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。