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エデン  作者: ko-da
第2部 1章 新人隊員編

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連携

エリア・ストラスに入った瞬間、空気が変わった。装甲車を降りた一行は、大山(おおやま)を先頭にしてゆっくりと進んでいく。エリア・ストラスは、これまでエデンが訪れたエリアと比べても、妙に静かだった。道路の両脇には建物が並んでいるものの、人の姿はない。風が吹くたびに、道端に溜まった砂埃が僅かに舞い上がる。ここにはエイリ星人がいる。それを全員が理解しているからこそ、誰も不用意に騒ぐことはなかった。

そんな中、少し後ろを歩いていたエデンの周囲だけは、比較的穏やかな空気が流れていた。胸ポケットから顔を出したオルと、緋山がエデンに話しかけている。

「オルって、小さくて可愛いね!」

緋山(ひやま)はオルを覗き込みながら、楽しそうに言った。

オルは胸を張るように身体を反らす。

「オルはかわいいですぞ?」


「うん!」


「やはりそうですか!」


「自分で言うんだ……」

エデンは苦笑した。緊張感のある場所だというのに、この二人と一匹が話していると、どうにも空気が柔らかくなる。

その少し後ろでは、ナロクとフルトが歩いていた。ナロクは前を歩くオルを見ながら、ぽつりと口を開く。

「なあ、フルト」


「な、何?」


「オルってエイリ星人なんだよな」


「う、うん……危険じゃないとは聞いてるけど」

フルトはオルをちらりと見る。小さな身体。エデンの胸ポケットに収まり、普通に会話をしている。見た目だけなら、とてもエイリ星人には見えない。

しかし、エデン達がそう呼んでいる以上、普通の生物ではないことだけは分かる。

「..........少し警戒しちゃうね」


「警戒しておくのに越したことはないな」

ナロクはそう言いながらも、それ以上オルについて口を挟むことはなかった。

そして、その時だった。エデンの表情が変わった。先ほどまで緩んでいた目つきが、一瞬で鋭くなる。足が止まった。

「……止まって」


その声に、緋山も立ち止まる。

「エデンさん?」


エデンは答えなかった。前方を見つめている。微かな音。建物の陰。そして、複数の気配。次の瞬間。建物の影から、異形の姿が次々と現れた。エイリ星人。一体ではない。二体、三体……さらにその後ろからも別の個体が姿を現す。

緋山の表情が強張った。

「……っ」

エデンはすぐに緋山の前へ出る。

「下がって」

短い言葉だった。それだけで、先ほどまでの穏やかな雰囲気は完全に消えた。

エデンは構える。そして、エイリ星人が一斉に飛びかかった。

「来る!」

エデンが地面を蹴った。

一体目の攻撃を身体を捻ってかわし、その勢いのまま拳を叩き込む。エイリ星人の身体が吹き飛ぶ。

その横から別の個体が迫る。しかし、その前にドロイが入り込んだ。

「グラスさん、警戒してください」


「え?」

ドロイがグラスへ声をかける。

グラスは一瞬だけ戸惑ったような表情を見せた。だが、すぐに眼鏡を押し上げる。

「……能力発動」

そして、ラベジニウムの力を発動した。

「分身(クローン)」

その瞬間。グラスの隣に、もう一人のグラスが現れた。姿も服装も、何もかも同じ。まるで鏡から本人が抜け出してきたかのようだった。

エデンが目を見開く。

「あれがグラスの能力……」

分身はすぐさまエイリ星人へ向かって走り出した。本体のグラスは建物の陰へ身を隠す。分身が囮になる。

その意図を理解したドロイも、すぐに動いた。

「行きます」

エイリ星人が分身へ攻撃を繰り出す。分身はそれをかわし、反撃する。その隙にドロイが横から入り込み、鋼鉄の拳を叩き込んだ。鈍い衝撃音。エイリ星人が地面を転がる。さらに分身が追撃し、ドロイが最後の一撃を加える。一体が倒れた。

「上手い……」

エデンは戦いながら、その連携を見ていた。

新人とはいえ、グラスは自分の能力を理解している。ドロイとの連携も悪くない。


一方、亜爆(あばく)はナロクのところへ爆弾を一つ放った。

「これを相手に投げてください」


「俺が?」


「ええ」

亜爆は淡々と爆弾を生成する。

ナロクは受け取った爆弾を見る。

「……了解しました!」

ナロクが勢いよく投げる。爆弾はエイリ星人の身体へ命中した。

「今です!」

亜爆が合図を出すと、爆弾が爆発する。エイリ星人が大きくよろめいた。そこへ、さらに亜爆が爆弾を投げ込む。二度目の爆発が起こり、エイリ星人の姿が煙の向こうへ消えた。

ナロクは驚いたように目を見開く。

「すごい火力だ!」


「まだ油断しないでください」


「はい!」

亜爆は冷静だった。煙の向こうからエイリ星人が出てくる可能性を警戒している。しかし、しばらくしても動きはなかった。


その頃。

シオンはフルトの方を向いていた。

「フルト」


「は、はい!」


「あっちのを倒して」

シオンが指差した先には、まだこちらへ向かってくるエイリ星人がいた。フルトの顔が引きつる。

「え、えっと……あ……」

足が動かない。頭では動かなければいけないと分かっている。しかし、目の前に迫ってくる異形を前にして、身体が言うことを聞かなかった。エイリ星人が腕を振り上げる。

「……っ!」

フルトがようやく身を引こうとした、その瞬間。地面が大きく隆起した。

「大地防壁(テラウォール)」

大山が能力を発動する。地面から巨大な土の壁がせり上がり、エイリ星人の攻撃を受け止めた。轟音が響く。

フルトは尻餅をついた。

目の前には、自分を守るようにそびえ立つ土壁。大山が振り返る。

「大丈夫か?ぼさっとしてると死ぬぞ」


「……す、すみません」

フルトは俯いた。

その横で、シオンも拳を握りしめている。

「……ぼくのせいで」


「え?」


「ぼくが、ちゃんと指示してなかったから……」

シオンは自分を責めるように呟いた。

大山はそれを聞きながら、土壁の向こうにいるエイリ星人を見据える。

「俺がやります!」

エデンはそのエイリ星人に距離をつめ、何もさせずに撃破する。エイリ星人の身体が消滅していく。

エリア・ストラスの静かな街に、エイリ星人の咆哮が響き渡る。

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