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エデン  作者: ko-da
第2部 1章 新人隊員編

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グラスとフルト

一方、フルトは少し離れたところで、誰を選ぶべきか迷っているようだった。教室の中には、すでに後輩と先輩の組み合わせが少しずつ出来始めている。エデンと緋山。亜爆とナロク。

残るのは、グラス、シオン、ドロイ、フルトの四人。

フルトは周囲を見回したあと、隣にいるグラスへ小さな声で話しかけた。

「……先に……決めてもらっていいよ」

グラスは少し驚いたようにフルトを見る。

「オレが先でいいんですか?」


「うん……」

フルトは遠慮がちに頷いた。グラスは少し考える。教室にいる先輩たちを一人ずつ見ていく。そして、ある人物のところで視線を止めた。

「それなら……オレは.......」

グラスはシオンの方へ歩いていく。

「よろしくお願いします。ドロイさん」

そう言いながら、グラスは丁寧に頭を下げた。

しかし――

グラスが頭を下げた先にいたのは、ドロイではなかった。シオンだった。シオンは突然目の前で頭を下げられ、少し困惑した表情を浮かべる。

「……?」

ドロイは数秒ほど黙っていた。そして、グラスの横から静かに声をかける。

「……グラスさん」


「はい?」


「俺はこっちです」

ドロイが自分の位置を指差す。グラスは固まった。

ゆっくりと首を動かし、自分が頭を下げていた相手を見る。そして、隣にいるドロイを見る。

「…………」


「…………」

シオンも何も言わない。数秒間、教室に妙な沈黙が流れた。

「……す、すみません!」

グラスは慌ててドロイの方へ向き直る。

「よろしくお願いします、ドロイさん!」

今度こそ、ドロイの目の前で深々と頭を下げた。ドロイは少しだけ目を丸くしたあと、穏やかに頷いた。

「はい。よろしくお願いします」

その様子を見ていたエデンが、思わず口元を緩める。

「グラスって、結構うっかりするタイプなのか?」


「……要領悪くてすみません」

グラスは眼鏡を直しながら、少し気まずそうに答えた。シオンはそんなグラスを見て、ぽつりと言う。

「……面白い人」


こうして、グラスの担当はドロイに決まった。最後に残ったのは、フルトだった。フルトは教室の中を見回していた。エデンには緋山。亜爆にはナロク。ドロイにはグラス。そして、まだ担当の決まっていないシオンがいる。フルトはしばらく悩んだあと、小さく息を吐いた。

「じゃあ……僕はシオンさんで……」


その言葉を聞いたシオンが、フルトを見る。

「……ぼく?」


「は.....はい」

フルトは頷いた。だが、すぐに何かに気付いたように慌てて両手を振った。

「ああ! いや、別に消去法で選んだとか、そういうわけじゃなくて!」


「……?」

シオンは首を傾げる。

フルトはさらに焦ったように言葉を続けた。

「皆さん全員いい人そうだなと思って、ずっと悩んでただけで……!」


「……うん」


「その……僕、優柔不断なんですよ」

そこまで言って、フルトは気まずそうに俯いた。

シオンはしばらくフルトを見つめていた。やがて、ほんの少しだけ表情を緩める。

「別に気にしてない」


「……本当ですか?」


「うん」


「よかった……」

フルトは胸を撫で下ろした。

その様子を見ていたエデンは、どこか微笑ましい気持ちになっていた。


こうして、四人の担当が決まった。

エデンと緋山天狐(ひやまてんこ)。亜爆(あばく)とナロク。ドロイとグラス。そしてシオンとフルト。大山は全員を見渡す。

「よし。これで担当は決定だ」

教室の中に、少しだけ新鮮な空気が流れた。


四ヶ月前。エイリワスとの戦いによって、多くのものが失われた。ジエルも、その一人だった。けれど今、ECOには新しい隊員たちが入ってきた。新しい力。新しい関係。そして、これから始まる新しい戦い。エデンは目の前に並ぶ後輩たちを見ながら、静かに思った。

(……ここから、また始まるんだ)

胸ポケットからオルが少し顔を出す。

「なんだか賑やかになったですぞ」


「そうだな」

エデンは小さく笑った。


大山は四人の新人を見渡す。先ほどまでの自己紹介を終え、教室には少し落ち着いた空気が戻っていた。しかし、大山はまだ話を終えていなかった。

「……さて」

大山は教卓に置かれていた資料を手に取る。

「早速だが、新人にも経験を積んでもらわないといけない」

その言葉を聞いた瞬間、緋山(ひやま)が姿勢を正した。ナロクも真剣な表情になる。グラスは眼鏡を直し、フルトは少し緊張したように大山を見る。大山は資料をめくりながら続けた。

「5日後、アモリス地区にあるエリア・ストラスへの調査任務が入っている」


「エリア・ストラス?……」

エデンが呟く。聞き覚えのない場所だった。大山は教室にいる全員へ視線を向ける。

「エイリ星人を探していたら討伐するっていう任務だ」

「今回は、お前達八人と俺が行くことになっている」

エデン、亜爆、ドロイ、シオン。そして、緋山、ナロク、グラス、フルト。合わせて八人。そこに教育担当の大山が加わる。新人たちにとっては、初めての本格的な任務になる。

大山は話を続ける。

「エリアに入る以上、エイリ星人と遭遇する可能性は考えておけ」

その言葉に、教室の空気が少しだけ引き締まった。新人達の顔に少し不安が浮かぶ。大山はそんな新人たちへ、最後に告げる。

「それまでに鍛えておけよ」


「はい!」

真っ先に返事をしたのは緋山だった。ナロクもすぐに続く。

「承知しました!」

グラスは頷き、フルトも小さく頷いた。シオンは静かに答える。

「分かった」

大山は満足そうに頷いた。

「よし。今日はここまでだ」

椅子が動き、教室の中が少しずつ騒がしくなる。

5日後に、新たな八人による、最初の任務が始まる。

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