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エデン  作者: ko-da
10章 エイリワス決戦編

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エイリワス決戦④

エリア・オズは既に戦場と化していた。

五体の進化個体。そのどれもが、これまでの進化個体とは一線を画している。血刃は刀を握り締めながら、何度も襲い来る攻撃を受け流していた。エイリゴルの六本の腕が振るわれる。その一撃一撃は砲撃にも匹敵するほどの威力を持っており、刀で受け流すだけでも腕に激痛が走った。

「ぐっ……!」

わずかに体勢を崩した瞬間、エイリゲルの無数の眼球がこちらを見つめる。

「させるか!」

ライフルを持つ青年隊員が即座にエイリゲルへ照準を合わせる。

「拡大(エンラージ)!」


放たれた弾丸が一時的に巨大化し、エイリゲルの胸部を吹き飛ばした。胸部に大穴が開く。しかしグチュグチュと不気味な音を立てながら、肉が蠢き始める。ものの数秒で穴は完全に塞がってしまった。

「そんな馬鹿な!」

青年隊員の表情が歪む。

エイリゲルは何事もなかったかのように無数の眼球をこちらへ向けていた。

「再生が速すぎる……!」

その時だった。エイリベルが大きく翼を広げる。黒い翼から無数の黒い羽根が放たれた。

「まずい!」

盾を背負った大男が即座に盾を前に構える。次の瞬間だった。

黒い羽根が着弾した瞬間、大爆発を起こす。


「ぐぁぁぁ!!」

盾によって大部分の威力は防いだものの、爆発の衝撃までは防ぎきれない。大男の身体は吹き飛ばされ、建物の残骸へと叩き付けられた。


「くっ……!」

大量の血を吐きながら、それでも立ち上がろうとする。だが、既に右腕は動かなくなっていた。

一方、女性隊員の前にはエイリゴルとエイリゼクの二体が立っていた。

「物体収納(オブジェストレージ)!」

手元に収納していた煙幕弾を取り出し、地面へ投げつける。大量の煙が周囲を覆い隠した。

「これで――」

その瞬間。

「無意味だ」

煙の中からエイリゴルの声が響く。

「なっ――」

煙幕ごと巨大な拳が振り下ろされた。地面が陥没するほどの一撃。女性隊員は間一髪で後方へ飛び退くが、その衝撃だけで骨が軋む。さらに次の瞬間。

「速い!?」

エイリゼクが姿を消した。見えない。そう認識した時には既に遅かった。女性隊員の腹部から大量の血が吹き出す。

「かっ……!」

いつの間にか、その背後へ回っていたエイリゼクが腕を振り抜いていた。

あまりにも速い。もはや反応することすら不可能だった。


戦況は一方的だった。

誰もが理解していた。勝てない。この五体は、今までの進化個体とは格が違う。


そして数分後。

エリア・オズには静寂が訪れていた。

女性隊員は血を流しながら倒れ込んでいる。

大男も全身に火傷を負い、動くことすら出来ない。

青年隊員も右腕を失い、意識は朦朧としていた。

一人は既に命を落としている。

血刃もまた、全身から血を流しながら刀を支えに立っていた。

「はぁ……はぁ……」

呼吸をするだけで全身に激痛が走る。それでも刀だけは手放さない。五体の進化個体はそんな血刃を一瞥すると、興味を失ったように背を向けた。

「何じゃと……」


(わしらを殺す気はない?)

(違う……)

五体の進化個体が向かっている先を見る。そこにあるのは――ブウタ地区の市街地。

「まさか……」

血刃の顔から血の気が引いていく。

(市街地に行く気か!?)


「まずい!!」

血刃は刀へとエネルギーを流し込む。

「はぁぁぁ!!」

刀を振り抜くと同時に巨大な斬撃が放たれる。

だが、確かに命中したはずの攻撃に五体は一切振り向かない。傷一つ付いていなかった。

「くそっ……!」

そのまま五体の進化個体は市街地へ向かって歩き始める。


そして、その空間が歪んだ。

エイリワスが別次元から姿を現す。

変形した黒い翼を広げながら、五体を見下ろしていた。

「そうだ……」

「全てを壊しに行け……」

「私の研究の成果を実感しようではないか」

狂気を孕んだ笑みを浮かべる。五体は何も言わない。ただ、その命令に従うように歩き続ける。

「やめろ……」

血刃は刀を地面へと突き刺し、それを杖代わりにしながら歩き始める。

足は既に限界だった。それでも歩みを止めない。

「やめろ……くそ……」

守れなかった。仲間も。そして今、市民までも。そんなことは絶対に認められない。


その頃――。

ブウタ地区、市街地。

避難は進められているものの、未だ逃げ遅れている者たちも少なくない。そんな市街地の中央に、一人の女性が立っていた。

漆黒の長髪を風になびかせ、その両腕と両脚には機械仕掛けの装甲が装着されている。神宮寺希(じんぐうじ のぞみ)。神宮寺は通信機を耳へ当てる。

「今到着しました。無事ですか?」

通信の先から聞こえてきたのは血刃の掠れた声だった。

『一人死んだ』


『わし含めて四人は重症を受けたが、生きとるはずじゃ』

その言葉を聞いた神宮寺は目を見開いた。一人が戦死。それが何を意味するのか理解している。血刃たちがどれだけの実力者であるかも知っている。そんな彼らが、たった数分で壊滅させられたのだ。神宮寺は静かに拳を握り締める。

「すみません……」

「私がもっと早く来ていれば……」

僅かに悔しさを滲ませる。しかし、今は後悔している場合ではない。

「とにかく、血刃さんは他の二人を連れて退避してください」


『じゃが――』


「これは命令です」

「あなたたちまで失うわけにはいきません」

神宮寺は静かに続ける。

「あの進化個体は……」

「私が討伐します」

その言葉に、一切の迷いはなかった。通信を切る。そして、ゆっくりと顔を上げた。遠くから感じる五つの異常な気配。それが徐々にこちらへ近付いてきている。

神宮寺の両腕の装甲が変形し始める。内部の機構が駆動音を響かせながら展開していく。両脚の装甲からは蒸気が噴き出し、出力が上昇していく。彼女の身体を支える全ての装備が戦闘態勢へと移行していく。神宮寺は静かに拳を握った。

「隊長として」

「これ以上の被害は出させません」

目の前には五体の進化個体。そのさらに後方にはエイリワスの存在がある。一対五。それでも神宮寺希の瞳に恐怖はない。ただ、守るという強い意志だけが宿っていた。

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