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エデン  作者: ko-da
10章 エイリワス決戦編

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決戦開始

当日。

エイリワスが予告した日付が、ついに訪れた。朝からアモリス支部には重苦しい空気が漂っていた。廊下を歩く隊員たちの足取りはいつもより速く、誰も無駄話をしていない。


避難してきた住民たちは広いロビーや会議室へ案内され、不安そうな表情で外の様子を窺っている。幼い子どもが母親の服をぎゅっと握りしめる姿もあれば、年配の男性が「きっと隊員たちが守ってくれる」と自分に言い聞かせるように呟く姿もあった。


その全員を守るために、ECOは動いている。

エデン、ジエル、亜爆(あばく)、そして流鹿(るか)も支部の出撃待機室に集まっていた。

誰も軽口を叩かない。それぞれが装備を確認し、能力を使うための準備を終えている。流鹿は壁へ寄りかかりながら、本部から送られてきた最新の情報端末を閉じた。

「本部からや」

静かな声だった。

「エイリワスの部下がアモリス地区を襲撃するっちゅう情報は入っとる」

「せやけど、それが罠の可能性も考えられる」

エデンたちは黙って耳を傾ける。

流鹿は続けた。

「もし全部の戦力をアモリスに集めたら、他の地区が手薄になる」

「せやから、本部は各支部にも十分な戦力を残す判断をした」


ジエルは腕を組み、小さく息を吐く。

「エイリワスなら、それくらいやりそうだな」

「人間がどう動くか読んでるだろうしな」


亜爆も頷く。

「こちらが兵力を集中させることも計算済みでしょうね」

「だからこその分散配置ですか」


流鹿は「せや」と短く答えた。

「既にアモリス地区の住民は全員支部へ避難しとる」

「まずは市民を守ることが最優先や」


その時だった。

突然、支部全体へ甲高い警報音が鳴り響く。赤い警告灯が一斉に点滅し始めた。天井のスピーカーから機械音声が流れる。


『緊急警報! 緊急警報!』


『アモリス地区南東部より、クロウ島で確認された進化個体を確認!』


『その他、大量のエイリ星人を確認!』


『全隊員は直ちに戦闘配置についてください』


部屋の空気が一瞬で張り詰める。ジエルは静かに立ち上がった。

「……来やがったな」

そう呟くと、首に掛けていた青いはちまきを手に取る。ゆっくりと額へ巻き直し、固く結ぶ。ジエルの瞳には、もう迷いはない。

流鹿も立ち上がる。

「……行くで」

その一言で全員が動き出した。支部正面ホールでは、既に隊員たちが整列している。支部長・風黒幕人(かざぐろまくと)が最前列に立ち、全員を見渡した。

「迎撃部隊は外へ出撃し、出現したエイリ星人を討伐してください」


「私たち防衛部隊は支部へ残り、避難している住民を守ります」


「決して一体たりとも支部へ近づけてはいけません」


その声に隊員たちが力強く返事をする。

「了解!」

迎撃部隊。時輪。エデン。ジエル。亜爆。盤上流鹿。そして複数の精鋭隊員たち。

一方、防衛部隊は風黒幕人を中心に支部へ残り、避難している市民を守る任務へ就く。

全員が自分の役割を理解していた。

しかし。

戦いはアモリスだけでは終わらなかった。本部から新たな通信が届く。

『緊急報告』


『ウバク地区にて進化個体を確認』


『ブウタ地区でも交戦開始』


『ナイツ地区、アステ地区、イーノス地区でもエイリ星人が多数出現』


『ノマロード地区でも進化個体を確認』

報告が次々と続く。

まるでライサム全土へ同時攻撃を仕掛けているようだった。

「本気やな……」


流鹿が低く呟く。

「エイリワスは最初から全国同時襲撃を狙っとったんか」


エデンは無意識に拳を握る。

その報告を聞いた瞬間、脳裏にはクロウ島での戦いが蘇っていた。

エイリヤカ。鋭い刃。削られていくリミットナイト。リミットリフレクスで攻撃が見えているのに身体が追いつかない絶望。自然と肩へ力が入る。

「……」


その表情を流鹿は見逃さなかった。

「そんな不安そうな顔せんでええ」

流鹿は笑いながらエデンの肩を軽く叩く。

「エデン君」


「今のきみはもうクロウ島の時とは違う」


その時。エデンの胸ポケットから、小さな顔がひょこっと覗いた。

「そうですぞ!」

オルだった。

「エデンは成長したんですぞ!」

「ランクも上がったんですぞ!」


「ランク....」

オルに言われ、エデンは隊員証を取り出す。そこには新しい文字が刻まれていた。ランク C-7少し前までDランクだった自分。確実に前へ進んでいる。頭の中で、ケイが静かに語りかける。

『この三日間、きみは成長した』

『少なくとも、クロウ島の時のようにはならないだろう』

その落ち着いた声が、不思議と胸の奥へ響いた。

エデンはゆっくりと目を閉じる。そして深く息を吸い込み、大きく吐いた。恐怖は消えない。不安もある。それでも──

「……よし」


拳を強く握る。


「行こう」


前を向く。


風黒幕人がゆっくりと歩き始める。迎撃部隊もその背中に続いた。支部の自動扉が開く。

その先では、黒煙が空へ立ち上り、無数の咆哮が街中へ響いていた。


人類とエイリ星人。


決戦の火蓋が、今まさに切って落とされようとしていた。

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