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エデン  作者: ko-da
9章 ECO特訓編

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複数の核と能力

ジエルはゆっくりと息を吐いた。思い出した記憶はあまりにも重い。六年前の出来事は、彼の人生を大きく変えていた。そして、その全てが現在へ繋がっている。病室にいる誰も口を開かない。ただ、ジエルの次の言葉を待っていた。

「エイリワスは……核を複数持ってる」

静かな声だった。だが、その一言が病室の空気をさらに張り詰めさせる。

「俺の記憶じゃあ、兄貴があいつの核を壊して消滅させた」

ジエルの脳裏に、ゲートが最後に剣を振り下ろした光景が浮かぶ。頭部の奥にあった核。確かに破壊した。それなのに。

「どこからともなく、また出てきやがった」


「核を複数……?」

エデンが思わず聞き返す。その顔には驚きが浮かんでいた。

「じゃあ、何度倒しても復活するってこと?」


「分かんねぇ」

ジエルは首を横に振る。

「核が何個あるのかも知らねぇ」

左手で顔を覆い、小さく息を吐く。

「でも、とにかく――」

「一回倒しただけじゃ足りないかもしれねぇ」


その言葉に、エデン達は黙り込んだ。今までのエイリ星人は、核を破壊すれば終わりだった。しかし、エイリワスだけは違う。核を破壊しても蘇る。もし核が十個あるなら、十回倒さなければならないのか。もし百個なら。考えるだけで絶望的だった。

「いやいや……待ってや」

流鹿が珍しく真面目な表情で口を開く。

「核を複数持っとるエイリ星人なんて聞いたことないで」

「本部の資料にもそんな個体はおらん」

「つまり、エイリワスだけの特殊能力か、進化の結果ってことやろか……」

亜爆も腕を組む。

「進化を研究している本人が、既に異常な進化を遂げているということですか」

「笑えない話ですね」

病室に再び沈黙が落ちる。エデンは拳を握った。

「そんな相手、どうやって倒すんだ……」


「分からねぇ」

ジエルは即答した。

「でも、倒さなきゃいけねぇ」

その目には、迷いはなかった。

「兄貴の仇だ」

「それに、あいつは三日後にここを襲うって言った」

「止めるしかねぇ」

ジエルはそこで一度言葉を切る。そして、思い出したように口を開いた。

「それに……エイリワスにはもう一つ能力があった」


「もう一つ?」

天記が驚いたように顔を上げる。

「まだあるのかい?」

ジエルは苦い顔を浮かべる。

「ああ」

「六年前、あいつは手を振り下ろしただけで地震を起こした」


「地震……?」

エデンの声が震える。

「待って、それって……」


「ああ」

ジエルは窓の外へ視線を向ける。

「山を崩してた」

「たった一回、腕を振っただけでな」

その言葉を聞いた瞬間。流鹿の表情が変わった。

「……おいおい」

「それ、冗談やないやろ?」

「もし本当にそんな能力なら、アモリス地区ごと消し飛ばせるで」


病室の空気が凍りつく。複数の核。進化の研究。そして、地震を起こす能力。さらに、ゲートから奪ったラベジニウム――次元(ディメンション)を持っている可能性まである。エイリワスという存在は、一体どこまで底が見えないのか。ジエルはベッドから立ち上がった。左腕を見つめる。そこには六年前に埋め込まれた進化の種が眠っている。

「三日後、あいつは来る」

「だったら、俺たちも覚悟を決めるしかねぇ」

その言葉に、誰も反論しなかった。夕日が沈み始める。迫り来る決戦まで、残された時間は――あと三日だった。


エデンは頭を抱える。

「なんか……能力多すぎない?」


「俺もそう思う」

ジエルは腕を組みながら答える。その時だった。

黙って話を聞いていた亜爆が、小さく顎へ手を当てる。

「……少し気になることがありますね」

全員の視線が亜爆へ向く。

「何や?」

流鹿が聞く。

亜爆はゆっくりと言葉を選びながら話し始めた。

「そんなに強い力があるなら、もっと使っていてもおかしくないと思うんです」


「地震の能力のことか?」


「ええ」

亜爆は頷く。

「ジエルさんの話を聞く限り、一度手を振っただけで山を崩せるほどの能力です」

「なら、今まで一度も使っていないのは不自然です」

病室が静まり返る。確かにそうだった。もし地震を自在に起こせるなら、わざわざ進化個体を送り込む必要もない。アモリス支部など、一瞬で瓦礫の山にできるはずだ。

流鹿が口を開く。

「……能力に条件がある?」

「あるいは、使えない理由があるのかもしれへんな」

エデンは頷いた。

「もしそうなら、その理由ってなんだろう」

「使うと負担が大きいとか?」

「それとも――」

エデンはそこで言葉を止める。

「核に能力が対応してるとか?」


「!!」

その言葉に、流鹿が目を細めた。

「なるほどな……」

「核を複数持っとる」

「能力も複数ある」

「なら、核そのものが能力を管理しとる可能性はある」

ジエルも考え込む。

「……もしそうなら」

「兄貴が壊した核がそれの可能性もあるな」

その仮説に、全員が黙り込んだ。もしそうなら辻褄が合う。六年前以降、エイリワスは地震を使っていない。使えないのか。使いたくても使えないのか。

「どちらにせよ……」

流鹿が真剣な顔になる。

「エイリワスはまだ隠しとることが多すぎる」

「三日後までに少しでも情報を集めんとあかんな」

ジエルは静かに左腕へ視線を落とした。進化の種。兄のラベジニウム。複数の核。そして、使われていない能力。六年前の出来事は終わっていなかった。

むしろ――今ようやく、その全貌が見え始めていた。

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