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エデン  作者: ko-da
9章 ECO特訓編

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ラベジニウムに詳しい人物

訓練場には、さっきまでの緊張が少しずつ解け始めていた。三人とも息を整え、それぞれが今の模擬戦を頭の中で振り返っている。


エデンはリミットストリングの新たな応用を見せた。亜爆は爆弾による空間支配と時間差攻撃で流鹿を翻弄した。そしてジエルは、能力そのものは高く評価されたものの、黒い電気の暴発という大きな課題を残した。


流鹿は三人を見回しながら、大きく頷いた。

「取り敢えず、次は発展や」

三人の視線が自然と流鹿へ集まる。

「今出た問題とか、自分が思っとる課題を克服する。そこからが本番や」

エデンは静かに耳を傾ける。確かに能力は見せた。しかし、それだけでは意味がない。弱点を放置したままでは、いずれ必ずそこを突かれる。それはクロウ島でも嫌というほど思い知らされた。

流鹿はゆっくりと視線を動かした。まずエデンを見る。

「エデン君はリミットストリングを覚えたばっかりや。もっと自在に操れるようになれば、かなり厄介な能力になる」

次に亜爆を見る。

「亜爆君は近距離やな。あそこをどう乗り切るか。爆弾だけに頼らん選択肢を一つ増やせば、もっと戦いづらい相手になる」

亜爆は真剣な表情で頷いた。

流鹿は最後にジエルへ視線を向ける。その瞬間だけ、表情が少し引き締まる。

「……せやけど」

「他の二人はええ」

「まずはジエル君の課題を克服しよか」

ジエルはベンチから立ち上がりかけたが、まだ身体に力が入りきらず、ゆっくりと姿勢を整える。黒い電気。その存在が頭から離れない。ジエルは拳を見つめながら、小さく呟いた。

「俺は……一体どうすればいいんだ」

その声には、今までのような強気さはなかった。

「よく分かってねぇんだ」

能力なのに、自分で制御できない出そうと思って出したわけでもない。止めようと思って止められたわけでもない。そんなものをどう扱えばいいのかは、当の本人にも見当がつかなかった。訓練場に静けさが流れる。流鹿は腕を組み、少しだけ考え込んだ。視線は床へ落ち、何かを思案するように数秒間黙り込む。エデン達も口を挟まず、その答えを待った。やがて流鹿が顔を上げる。

「じゃあ……」

一拍置いて、口元にいつもの笑みを浮かべた。

「あの人に聞きにいこか」


「……あの人?」

エデンが首を傾げる。流鹿は当然のように答えた。

「ラベジニウムに一番詳しい人間。」

その一言だけで、場の空気が少し変わる。流鹿は続けた。

「ラベジニウムを最初に発見した……研究者」

その言葉を聞いた瞬間。エデンの目が大きく見開かれた。

「……!」

頭の中に、一人の男の声が蘇る。

――ラベジニウムという物質を最初に発見したのは、この国ライサムのある研究者だ。

――私はよく知らない。違法研究をして捕まったんじゃなかったかな?

白石研究所。正確には、月下香が白石礼と名乗っていた頃に聞かされた話。あの時は何気なく聞き流した話だった。だが今、その人物が再び話題に上がった。エデンは流鹿を見る。

「その人のこと……知ってるんですか?」


「知っとるで」

流鹿はあっさり答えた。隣ではジエルと亜爆が顔を見合わせる。

「ラベジニウムを最初に見つけた人なんていたのか?」


「私は初めて聞きました」

二人とも初耳らしい。エデンだけが、その話を知っていた。もっとも、知っていると言っても断片的な情報だけだ。

「その研究者……」

エデンはゆっくりと言葉を続ける。

「違法研究によって捕まってるんですよね?」


「せや」

流鹿は頷く。

「かなり昔にな。」

エデンはさらに疑問を口にした。

「でも……」


「捕まってる人から、どうやって話を聞くんですか?」

普通なら面会など簡単にできるはずがない。まして相手は違法研究で収監された人物だ。機密情報も多いだろう。そう簡単に会わせてもらえるとは思えなかった。しかし流鹿は、その疑問をまるで想定していたように笑う。

「もちろん」


「会いに行くんや」

その言葉はあまりにも自然だった。

「え?」

ジエルが思わず聞き返す。流鹿は人差し指を立てる。

「アモリス刑務所」

その施設名が告げられた瞬間。エデン達三人は同時に息を呑んだ。

流鹿は三人の驚いた顔を見て、小さく笑う。

「安心しい。ちゃんと面会許可は取る」

「その研究者には、ECOも時々話を聞きに行っとる」

「ラベジニウムについて、あの人以上に知っとる人間はおらへんからな」

エデンは静かに息を飲む。ラベジニウムの発見者。違法研究者。そして、今なおECOが知識を借りるほどの人物。その人物なら、本当にジエルの黒い電気について何か知っているのかもしれない。ジエルも拳を見つめたまま、小さく呟く。

「……答え、分かんのか?」

流鹿は笑みを消し、真っ直ぐジエルを見る。

「どうなるかは分からん」

「せやけど、聞く価値は十分ある」

「今の君の状態は放っといたら危ない」

「だったら、知っとる人間に聞くそれが一番早い。」

その言葉には、Sランク隊員らしい迷いのない判断があった。エデン達も、それ以上反対する理由はなかった。ラベジニウムの謎。ジエルの黒い電気。そして過剰適応(オーバーダプト)

その全ての手掛かりが、一人の研究者のもとへ繋がろうとしていた。

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