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エデン  作者: ko-da
9章 ECO特訓編

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訓練開始

アモリス支部の訓練場。

その中央に、エデン、ジエル、亜爆の三人が並んでいた。

少し離れた位置に立つのは、盤上流鹿。腕を組み、三人を順番に眺めている。相変わらずどこか気の抜けたような雰囲気はあるのに、訓練場に立った途端、その存在感だけがひときわ濃くなる。普段の軽口の奥にある実力が、空気そのものを圧しているようだった。

流鹿は一度、肩を鳴らしてから口を開く。

「ほな、さっそく特訓始めるで」

その一言だけで、三人の背筋が自然と伸びた。

いよいよ始まる。Sランク隊員による直々の訓練。ECOに入ってから何度も訓練はしてきたが、今日ばかりは重みが違う。相手はクロウ島で進化個体エイリヤカと渡り合い、生き延びただけではなく能力の正体まで見抜いた男だ。ここで得られるものが大きいことは、誰の目にも明らかだった。流鹿は三人の前をゆっくり歩きながら、顎に手を当てる。

「そうやなぁ……」

少し考えるように視線を巡らせ、それから足を止めた。

「各々の得意なことを伸ばした方がええやろ」

エデンたちは黙ってその言葉を待つ。流鹿は指を立てた。

「せっかく三人とも能力の色が全然ちゃうんや。全員に同じことやらせてもしゃーない」

「せやから今回は、能力使っての戦い方に絞って訓練する」

その言葉に、エデンは小さく目を見開いた。能力の使い方。単純な体力作りや基礎戦闘ではない。もっと踏み込んだ、自分たちの戦い方そのものを鍛える訓練だ。ジエルは腕を組みながら口を尖らせる。

「能力の使い方って言ってもなぁ……俺、電気溜めて殴るくらいしかやってねぇぞ」


「そこやそこ」

流鹿は待ってましたと言わんばかりにジエルを指差した。

「そういういつもの戦い方の癖を洗い出すのが今日の目的や」

「自分が何を得意としてて、逆に何が足りへんのか。それをちゃんと把握せんと、伸ばせるもんも伸びへん」

流鹿はそう言いながら、今度はエデンの方を見る。

「エデン君はリミットの拡張能力を複数持っとる。リミットフォース、リミットナイト、リミットリフレクス……んで、最近新しいもんも使えるようになった」

次に亜爆へ視線を向ける。

「亜爆君は生成系。爆弾っちゅう分かりやすい火力がある」

最後にジエルへ。

「ジエル君は近接寄りの電撃使い。スピードも火力もある。しかも黒い電気――過剰適応(オーバーダプト)の兆候まで出とる」

流鹿はそこで一度言葉を切った。三人とも、自分の名前が呼ばれるたびに少しずつ表情を引き締めていく。

「要するにや」

流鹿は軽く笑う。

「素材は全員ええ。せやけど、まだ粗い」

その言葉は厳しいようでいて、不思議と不快ではなかった。見下しているのではなく、純粋に“伸びしろがある”と言われているのが分かるからだ。流鹿は訓練場の中央まで歩くと、くるりと振り返る。

「まずは一人ずつ見る」


「他の二人は見学やない。ちゃんと見て、考えて、盗めるとこ盗むこと。自分には関係ないと思ったら損やで」

エデンは「はい」と素直に返し、亜爆も小さく頷く。ジエルも「分かったよ」と少し面倒そうに言いながら、ちゃんと流鹿の言葉を聞いていた。流鹿はそんな三人を見て、満足そうに頷いた。

「よし。んじゃ、最初は――」

その視線がゆっくりと動く。エデン、ジエル、亜爆。誰から始めるのか、三人とも少しだけ緊張した面持ちになる。だが流鹿は、その反応を楽しむように少し口元を緩めた。

「……エデン君からや」


「俺ですか?」

突然名を呼ばれ、エデンは目を瞬かせる。

「せや。能力の使い方も増えとるらしいし、今の伸び幅が一番分かりやすそうやからな」

流鹿はそう言いながら、訓練場の中央を顎で示した。

「前出て」

エデンは一瞬だけジエルと亜爆を見た。二人とも「頑張れ」とでも言いたげな視線を返してくる。エデンは小さく息を吸い、訓練場の真ん中へ歩き出した。広い空間の中央に立つと、周囲の静けさが妙に耳につく。その向かいに、流鹿が立つ。

「そんな気張らんでええよ」

流鹿は笑う。

「今からやるんは、勝負やなくて確認や」


「君が今、何をどこまで出来るんか。それを見せてもらうだけや」

そう言われても、相手がSランク隊員だと思うとどうしても身体が強張る。エデンは無意識に右手を握り込んだ。掌のインターフェースが、かすかに熱を持つ。流鹿は数歩下がり、片手を軽く上げた。

「とりあえず、今の君が使えるもん全部使って、俺に一発入れてみ」

さらっと言われた内容に、エデンは一瞬固まる。

「……え?」


「遠慮いらん。リミットフォースでもナイトでも、何でもありや」

流鹿は肩を回しながら、まるで散歩にでも出る前のような気軽さで言う。

「もちろん、当たるとは思わんけど」

最後の一言が余計だった。エデンは少しむっとした顔になる。

「……やりますよ」


「お、ええ返事や」

流鹿は嬉しそうに笑った。

「その代わり、こっちも遠慮せぇへんからな」

空気が変わる。それまでの軽いやり取りが、すっと剥がれ落ちた。流鹿の立ち姿は変わっていない。腕をだらりと下ろし、力んでいるようにも見えない。だが、そこに立っているだけで隙が消えていた。気を抜いた瞬間に踏み込まれる、そう直感させる圧がある。エデンは唾を飲み込み、ゆっくりと構えを取った。右手のインターフェースが淡く光り始める。胸の奥で心臓が強く脈打つ。

リミットフォース。リミットナイト。リミットリフレクス。そして、新たに得たリミットストリング。今の自分にある全てを使って、Sランク隊員に挑む。訓練場の端で見ているジエルと亜爆も、自然と息を詰めていた。流鹿はそんなエデンを見据えたまま、静かに言う。

「来い、エデン君」


「今の君がどこまでやれるか――見せてみぃ」

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