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エデン  作者: ko-da
7章 クロウ島編

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洋棋崩壊

白黒の盤面が砕け散る。無数のマスが光となって崩壊し、空間そのものがひび割れていく。流鹿の身体が宙へ投げ出された。

「ぐっ……!」

次の瞬間。世界が元へ戻る。クロウ島のホテル前。砕けた道路。斬り裂かれた建物。煙。海風。現実の景色が戻ってきた。流鹿は片膝をつき、荒く息を吐く。ガントレットは一部が砕け、肩から血が流れていた。

「はぁ……っ……」

流鹿はゆっくり顔を上げた。前方。エイリヤカが立っている。赤い外骨格。武士のような姿。刀を失ってなお、圧倒的な威圧感を放っていた。だが。エイリヤカは流鹿を見ていなかった。周囲を静かに見渡している。その様子に、流鹿は眉をひそめる。

(……なんや?)

違和感。戦闘の最中とは思えない視線だった。エイリヤカは、まるで何かを探しているようだった。そして。数秒後。ゆっくりと後ろを向く。

「……?」

流鹿の表情が変わる。エイリヤカが向いた先。そこには、もう誰もいなかった。エデン。亜爆。ドロイ。

気絶したジエルを連れ、既に避難している。ホテル周辺には一般人も残っていない。静かな破壊跡だけが広がっていた。エイリヤカはそれを確認すると、歩き出した。

「おい」

流鹿が立ち上がる。

「どこ行くんや!」

その声にも、エイリヤカは振り向かない。ただ。低く呟いた。

「――それでは」

瞬間。姿が消えた。

「!?」

移動音すらない。風も起きない。ただ、“そこから消失した”。流鹿は舌打ちする。流鹿が周囲を警戒する。砕けた道路。崩れたホテルの壁。静まり返った空間。エイリヤカの姿は、もうどこにも見えない。だが次の瞬間。

どこからともなく声が響いた。

「――本日は……これにて」

低く。静かな声。まるで舞台の幕引きを告げるようだった。流鹿が顔を上げる。

「……チッ」

エイリヤカの気配は遠ざかっていく。追おうにも、位置が掴めない。“移動を省略する能力”。あれを使われれば、追跡は困難だった。海風だけが吹き抜ける。流鹿は砕けたガントレットを見下ろした。

「なんちゅう化け物や……」

その表情から、余裕は完全に消えていた。白黒洋棋(チェスボード)を破壊された。あの能力空間を真正面から突破されたのは、かなり異常だった。しかも、まだ本気だったかも分からない。流鹿は視線を遠くへ向ける。エデン達が逃げた方向。

「無事やとええけどな……」

小さく呟く。そして、ゆっくり立ち上がった。壊れた街並みの中。クロウ島には、不穏な空気だけが残されていた。

「てか……本部への報告は、どうしたらええんや」

流鹿は頭を掻きながら呟く。周囲は酷い有様だった。道路は裂け。ホテルの壁は崩れ。地面には巨大な斬撃跡がいくつも残っている。どう見ても、大規模戦闘の痕跡だった。しかも相手は進化個体。それだけでも厄介なのに――

「能力二つ持ちとか、聞いてへんぞ……」

流鹿は深くため息を吐く。移動を省略する能力。そして飛ぶ斬撃。どちらも単体で十分危険だ。それを同時に扱っていた。さらに、あの硬さ。尋常ではない耐久力。

白黒洋棋(チェスボード)破壊されるとか、洒落ならんて……」

普通の進化個体ではない。それだけは確実だった。流鹿はポケットから端末を取り出し、端末を起動した。

「こちら盤上流鹿」

真剣な声。先程までの軽い雰囲気は消えている。

「クロウ島にて進化個体を確認」

一拍置く。

「危険度は最低でもA以上や」

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