剪定
「拙者の名は――エイリヤカ」
低い声が響く。その言葉に、エデン達の空気が変わった。名前を持つエイリ星人。進化個体。
エイリヤカは赤い刀をゆっくり構えた。まるで本物の武士のような動き。無駄がない。静かすぎる。
「これより――」
刀身が僅かに光る。
「剪定、執り行う……」
その瞬間。エイリヤカの姿が消えた。
「!?」
エデン達の視界から、完全に。移動した痕跡すら見えない。風も、足音も、何も無かった。そして──
「――ッ!?」
エデンの目の前。いつの間にか、エイリヤカが立っていた。刀が既に振られている。エデンは咄嗟にリミットリフレクスを発動した。世界が僅かに遅く見える。だが。
(速い……!!)
見えている。だが避けきれない。刀の振りが異常に速い。間に合わない。エデンは即座に判断を変える。
「リミットナイト!!」
首元へ黒い鎧が纏わりつく。次の瞬間。刀が首へ直撃する。黒い鎧が斬撃を防いだがそのままエデンの身体が吹き飛ぶ。
「がぁっ!!」
まるで車に跳ね飛ばされたような勢い。ホテルの壁へ激突した。壁がひび割れる。
「エデンさん!!」
亜爆が叫ぶ。ジエルも目を見開いた。煙の中。エデンはゆっくり起き上がる。首が痛む。呼吸が浅い。そして――気付く。
「……え?」
首元。リミットナイトの黒い鎧。そこが、削れていた。切断まではされていない。だが。明確に抉れている。エデンの背筋が凍った。
(嘘だろ……)
今まで。リミットナイトを正面から破壊できた攻撃は無かった。エイリ星人の攻撃。斬撃。全て防げていた。なのに。
「削られた……?」
エデンは愕然とする。その間にも、エイリヤカは止まらない。姿が消え、今度は亜爆の目の前にいた。
「っ!!」
亜爆の本能が「避けないと死ぬ」と叫ぶ。全力で横へ飛ぶ。直後。斬撃が地面を抉った。道路が裂ける。コンクリートが吹き飛ぶ。
「は?……」
亜爆の額に汗が流れる。威力がおかしい。亜爆は即座に爆弾を生成。
「くっ!!」
爆撃。爆炎が広がる。その隙に、一気に距離を取る。煙の中に赤い目が見えた。
「……ッ」
エイリヤカは無傷だった。
「怒雷刃!!」
すかさずジエルが雷の刃を投げる。バチバチと雷を纏った斬撃が一直線に飛び、直撃した。煙が晴れた先。エイリヤカは立っていた。ほぼ無傷。
「マジかよ……!」
ジエルの顔が歪む。エイリワスとは違う。あちらは攻撃が“当たらなかった”。だが、エイリヤカは違う。攻撃は当たっている。その上で、硬い。圧倒的だった。
一方、ドロイは即座に動いていた。鉄鋼製作。鉄の刀を生成する。
「援護します!」
投擲しようとした。だが。その瞬間。ドロイの右腕が落ちた。あまりにも自然だった。まるで最初から切れていたかのように。血が飛ぶ。だが、それだけではない。切断面から、細かな機械部品やコードまで飛び散った。金属片が地面へ散らばる。バチッと火花が走る音まで聞こえた。
「ドロイさん!!」
エデンが叫ぶ。亜爆とジエルも顔色を変える。ドロイは苦痛に表情を歪めながらも、すぐ後ろへ下がった。
「大丈夫です……!」
息を荒げながら答える。切断された右肩部分からは、血と機械油のような液体が混ざって流れていた。内部のフレームまで見えている。
「ある程度なら損傷しても……!」
そのまま左手を前へ出す。巨大な鉄壁が生成される。分厚い鉄の壁。エイリヤカとの間を完全に遮断した。ドロイは荒い呼吸を整えながら警戒する。
(どこから来る……)
速すぎる。視認が難しい。すると。スパンと静かな音がし、鉄壁が、斜めに切断される。まるで紙のように。その向こう側にエイリヤカが既に立っていた。ドロイがそれを認識した時には、もう既に──赤い刀が、ドロイの身体を貫いていた。
「ッ!!」
金属が軋む音。血飛沫。そして内部部品が砕け散る。
ドロイの身体から、壊れた機械音が漏れた。




