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エデン  作者: ko-da
7章 クロウ島編

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束の間の平穏

クロウ島へ上陸したエデン達は、そのまま観光エリアを歩いていた。空は青く、潮風が心地いい。海辺には観光客の姿が多く見え、白い建物や新しく作られたホテルが並んでいる。島全体が、発展途中のリゾート地という雰囲気だった。

「結局、アグレスさんに信じてもらえなかったね」

エデンが苦笑しながら言う。怪盗シェイド。確かに戦った。だが、結果だけ見れば、実際に盗みをしていたのは別グループだった。警察側からすれば、エデン達の話は少し信じにくい。ジエルは頭の後ろで腕を組みながら歩いていた。

「忙しそうだったしな、まぁいいんじゃね?」

そこまで気にしていない様子だった。

「あいつらが盗んだわけじゃないっぽいしな」

亜爆も笑う。

「それより今はバカンスを楽しみましょうよ」

その言葉通り、クロウ島はかなり綺麗だった。海は透き通っている。白い砂浜。遠くでは観光客達が泳いでいた。

「うわ……すごい」

エデンは素直に感動していた。戦いばかりの日常では、こういう景色を見る機会は少ない。エデン達はそのまま海辺で時間を過ごした。泳いだり。店を見たり。軽食を食べたり。久しぶりに、比較的平和な時間だった。


そして。気付けば、空は夕焼けに染まり始めていた。海もオレンジ色に輝いている。波が静かに揺れていた。エデン達は海辺に並び、その景色を眺めていた。


「海っていいよな……」

ジエルがぽつりと言う。その声はいつもより静かだった。エデンは少しだけ横を見る。ジエルの顔には、僅かに悲しさが混じっていた。レインダ村。ジエルの故郷。海に面した村。そして――エイリワスによって壊された場所。ジエルは故郷の景色を思い出していた。ジエルはそれ以上何も言わなかった。


すると。エデンがふとドロイを見る。

「そう言えばドロイさんって、機械ですけど海に入っても大丈夫なんですか?」

その瞬間。

「あ」

エデンの顔が固まる。思い出した。ドロイは、自分の身体が機械であることを隠していた。

「あっ……」

隣ではジエルと亜爆が固まっている。

「機械?」


「え?」

二人同時にドロイを見る。エデンは慌てた。

「ご、ごめんドロイさん!」

完全に口を滑らせた。だが。ドロイは特に怒った様子もなく、小さく笑った。

「謝らなくても大丈夫です」

穏やかな声だった。

「今は考えが変わりましたから」

夕焼けの海を見ながら続ける。

「無理に隠す必要もないと思ってます」

その言葉に、エデンは少し安心した。そしてドロイは、先程の質問へ普通に答える。

「ちなみに俺は海に入っても大丈夫です」

さらっと言う。

「防水加工がなされてますので」


「すげぇ!」

ジエルが食いついた。

「じゃあサイボーグってことか!?」

ドロイは少し考える。

「まぁ、分類的にはそうですね」


「ビームとか出んのか?」


「今はそういう機能はありませんが」

ドロイは真面目な顔で言った。

「いつかは搭載したいと思ってます」


「考えてはいるんですか!?」

亜爆がツッコむ。少し笑いが起きた。だが、その後。亜爆が少し真面目な顔で聞いた。

「……ドロイさんはどうして、サイボーグになったんですか?」

その言葉に、ドロイは少しだけ黙る。波の音が聞こえる。夕日が海面へ反射していた。そしてドロイは静かに口を開く。


「宇宙風邪って、皆さん知ってますか?」


エデン達は顔を見合わせる。


「エイリ星人が地球へ来たことで、ごく一部で発症するようになった病気です」

ドロイは海を見つめたまま続ける。

「原因は、エイリ星人の持つエネルギー」

静かな声。

「人間の体の器官を、少しずつ使い物にならなくする病気です」

エデン達の表情が変わる。聞いているだけで重い病気だと分かった。

「俺は、それにかかりました」

風が吹く。ドロイの髪が少し揺れた。

「宇宙風邪で苦しんでいた所に、ある科学者が俺へ手術を施してくれて」

そして、小さく笑う。

「どうにか生きることができたんです」

夕焼けの海は、静かに揺れていた。

「さぁ、ホテルに行きましょうか。チェックインを済ませましょう」

ドロイがそう言って歩き出す。夕暮れの海から離れ、エデン達は観光エリアを抜けていった。クロウ島の夜景が少しずつ灯り始めている。道路沿いには洒落た店やレストランが並び、観光客達の笑い声も聞こえていた。

「なんか本当に旅行って感じだ」

エデンが周囲を見回しながら言う。


ジエルは肩を回した。

「事件さえなけりゃもっと平和だったんだけどな」


「まぁ、比較的平和でしたよ今回は」

亜爆が苦笑する。


ドロイは小さく頷いた。

「“比較的”ですね」

そして。しばらく歩いた先で、巨大な建物が見えてきた。ホテルクロウズ。黒と金を基調とした高級ホテルだった。入口には大きな噴水。ガラス張りの正面。豪華な照明。まるで映画に出てくるようなホテルだった。

「でっか……」

エデンが思わず呟く。

中へ入ると、さらに圧倒された。広いロビー。高級そうなソファ。天井には巨大なシャンデリア。静かな音楽まで流れている。受付のスタッフも洗練された動きだった。エデン達は少し緊張しながらチェックインを済ませる。その後、それぞれ部屋の鍵を受け取った。

「それじゃ、今日は休みましょう」

ドロイが言う。全員疲れていた。豪華客船での事件。長時間の移動。ようやく落ち着ける。

「おやすみなさい」

亜爆が手を振る。


「また明日な」

ジエルも欠伸をしながら部屋へ向かっていく。エデンも自分の部屋へ入った。広い。柔らかいベッド。大きな窓。夜景が綺麗に見える。

「すご……」

思わず感動する。荷物を置き、ベッドへ倒れ込む。身体が沈み込むほど柔らかかった。

「疲れたな……」

小さく呟く。だが、不思議と嫌な疲れではない。久しぶりに、少しだけ普通の時間を過ごせた気がした。


瞼が重くなる。眠気が押し寄せてくる。エデンはそのまま眠りについた。

――だが。暗闇の中。

ケイだけは起きていた。

『……』

静かに何かを感じ取っている。違和感。嫌な気配。夜の街で、何かが蠢いている。

『……エデン』

眠るエデンへ呼びかけることはしなかった。まだ確証がない。

だが――。

確実に、“何か”がいる。


――――――

その頃。クロウ島の夜道。数人の警察官が巡回していた。観光地とはいえ、夜は警備が必要だ。特に最近は怪盗騒ぎもある。

「異常なし、か……」

警察官の一人が辺りを見回す。その時だった。路地の奥。何かが動いた。

「……?」

黒い影。人影のようにも見える。警察官達は顔を見合わせた。

「おい、止まれ!」

ライトを向ける。だが、影は動かない。静かすぎる。不気味だった。警察官達はゆっくり近づいていく。そして。その瞬間。その影が消えた。

「――え?」

警察官の身体が止まる。次の瞬間。警察官の制服が裂け、血が飛んだ。

「が……っ!?」

警察官達が一斉に倒れる。地面へ赤が広がる。何が起きたのか、誰も理解できなかった。そこには。深い斬撃の跡だけが残っている。静かな夜道。そして。暗闇の中から、低い声が響いた。

「弱い……」

冷たい声だった。

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