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エデン  作者: ko-da
7章 クロウ島編

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犯人

ドロイは一人、廊下の端に立っていた。豪華客船の明るい照明の下。静かに船内図を見つめている。周囲では乗客達が行き交っていたが、ドロイの意識は完全に別の場所へ向いていた。

(やはり、おかしい……)

指で船内図をなぞる。先程見かけたワゴンサービス。あれが引っかかっていた。

(ワゴンサービスが向かっていた方向には、スタッフルームも厨房もない)

つまり――。

「……」

ドロイの目が細くなる。

そこで。

「ドロイさん!」

遠くからエデン達がやってきた。二人とも少し慌てている。

「アグレスさんどこにいる?」

エデンが聞く。ドロイはすぐに答えた。

「アグレスさんなら、おそらく被害者の部屋にいると思いますよ」

そして続けようとした。

「それと……エデンさん」

その瞬間だった。

「盗まれたぁ!!」

遠くの部屋から叫び声。さらに。

「こっちもだ!」


「財布がない!」


「アクセサリーまで……!」

次々に声が響く。船内の空気が一気に騒然となった。

「!?」

エデン達は驚く。被害者が増えている。しかも大量に。ジエルが舌打ちする。

「クソッ!」

エデンはすぐに走り出した。

「アグレスさんの所へ!」


「おう!」

二人はそのまま廊下を駆け抜ける。

一方、ドロイはその場で静かに目を閉じた。

(やはり……そういうことか)

そして、ゆっくり歩き出した。


――――――

被害者の部屋。

そこにはアグレスと、最初に騒いでいた男がいた。男は苛立った様子で座っている。

「どうしたんだ二人とも、そんなに慌てて」

アグレスが振り返る。

「不審人物でも見つけたのかい?」

エデンは息を整えながら言った。

「不審な人物はいました」

シェイドの顔が頭をよぎる。だが。

「でも、犯人じゃない」


「……?」

アグレスが眉をひそめる。男は苛立ったように吐き捨てた。

「くそ……怪盗はいなかったのか……」

肩を落とす。

「悔しいが仕方ない……財布は諦め――」


「でも」

エデンが男を見る。真っ直ぐに。

「犯人の協力者は分かったかもしれません」

空気が変わった。アグレスの視線が鋭くなる。男も一瞬固まった。エデンは男に静かに聞く。

「あなたに聞きます。なんで盗まれた時、怪盗がいるって言ったんですか?」


「……!」

男の顔が僅かに強張る。そしてすぐ怒鳴った。

「き、君は私を疑ってるのか!?」

声が裏返っている。エデンは真剣な顔のまま動かない。沈黙。男は焦ったように言った。

「……よ、予告状で知ったんだ!」

その瞬間。アグレスが気付く。

「予告状が来てることは、警察しか知らないはずだ」

静寂。男の額から汗が流れる。

「そ、それは……!」

必死に言葉を探す。

「私は盗まれたんだぞ! どこに盗む隙がある!」

弁明。だが、その声には余裕がなかった。

すると。

「こうやってですよ」

静かな声が聞こえた。全員が振り返る。そこにはドロイがいた。片手で、ワゴンサービスを、もう一方の手で人を押さえている。

「……!」

男の顔が青ざめる。ドロイはゆっくりクロスを持ち上げた。すると――下段。そこには大量の財布。アクセサリー。腕時計。その他、金目の物が隠されていた。

「なっ……!」

アグレスの目が見開かれる。周囲の警察官達も騒然となった。男は完全にうろたえていた。

「な……なんで……!」

ドロイは静かに説明する。

「おそらく、最初に“盗まれた”と騒いで客を動揺させたのでしょう」

船内が混乱すれば、人々の注意は別へ向く。その隙に盗む。そしてワゴンサービスに隠す。

男の顔から、完全に血の気が消えていた。

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