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エデン  作者: ko-da
7章 クロウ島編

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犯人は誰だ

「悲惨な運命を背負う、一人の人間さ」

その言葉はどこか芝居じみていた。だが、妙に感情がこもっているようにも聞こえる。しかし。ジエルはそんな空気を一切気にしなかった。

「能力者ってことだな……」

低い声。身体から、バチバチと電気が漏れ始める。

「だったら――」

瞬間。発電機ジェネレーター。ジエルの身体能力が一気に跳ね上がる。床を蹴る。シアターの床が鳴るほどの勢い。一瞬で距離を詰め、シェイドへ突っ込む。電気エネルギーを溜め込み、さらに加速。

「オラァ!!」

勢いそのまま、拳を叩き込む。だが。

「おっと」

シェイドは避けた。最小限の動き。まるで攻撃の軌道を最初から読んでいたように。さらに。ジエルの腕を軽く流す。

「チッ!」

拳が空を切る。エデンは目を見開く。

「ジエル!? 相手はエイリ星人じゃ――」

するとジエルが振り返らずに言う。

「知らねぇのか、エデン」

その声には迷いがなかった。

「能力を勝手に使う能力犯罪者は、ECOが能力を使って制圧しても問題にならねぇ」

電気がさらに漏れ出す。

「それに、こいつは怪盗だろ?」

ギラついた目でシェイドを見る。

「ECOに関係してるわけねぇ」

そのまま再び踏み込む。一方、シェイドはそんなジエルを見ながら、どこか悲劇役者のように呟いた。

「やはり私は……」

静かに目を伏せる。

「運命からは逃れられないのか」

そして薄く笑った。

「この世の、はみ出し者という運命から」

エデンはリミットフォースを僅かに発動。身体能力を強化し、一気にステージへ飛び込む。

「ッ!」

拳を振るう。だが。金属音が鳴り、エデンの攻撃は止められる。

「!?」

シェイドの服に付いていた金の装飾品。ネックレスや飾りの一部が、まるで液体のように形を変え、板状になっていた。それがエデンの拳を受け止めている。

「な……」

エデンは目を見開く。金属が変形した。しかも一瞬で。

(どういう能力なんだ……?)

頭の中で考える。すると、ケイが静かに言った。

『先程の金の硬貨による投擲』


『そして今の現象』

短く結論を出す。

『おそらく、“金”を操る能力だ』


「金を……?」

エデンが驚く。その間にも戦闘は続いていた。ジエルが再び高速で踏み込む。電撃を使った攻撃、拳や蹴りを与えるが、シェイドは全て捌いていく。

「遅い」

シェイドが呟く。指先が動く。次の瞬間。大量の金貨が宙へ舞い、それらが高速回転しながらエデン達の方に飛んできた。

「!?」

まるで弾丸のような速度。エデンは咄嗟にリミットナイトを発動し、腕で防御する。

「ぐっ……!」

衝撃が重い。ジエルも舌打ちしながら避ける。

「クソッ!」

金貨が壁や床へ突き刺さる。普通の投擲ではない。威力が異常だった。しかも。軌道が読みにくい。壁や床へ当たりながら、不規則に跳ね返ってくる。

「ははっ」

シェイドはどこか楽しそうに笑う。

「追う者と追われる者」

ステージの中央へ立つ。

「その境界は、案外曖昧なものだよ」

エデンは息を整えながら、シェイドを見る。

「……強い……」

自然と、その言葉が漏れた。エデンは息を整えながら、シェイドを見据えた。このままでは押し切れない。相手は強い。だが、まだ余裕があるようにも見える。

(だったら……)

エデンはリミットフォースの出力をさらに上げた。身体の奥から力が湧き上がる。筋肉が熱を持つ。視界が鋭くなる。もちろん無茶はできない。相手は一般人。エイリ星人ではない。だが――

(少し強めに行っても、大丈夫なはず……!)

床を蹴る。一気に距離を詰めるエデン。

「っ!」

シェイドの指が動いた。複数の金貨が高速で飛来する。

「はぁッ!!」

拳を使い、飛んできたコインを次々叩き、破壊する。金属音が連続する。

「……!」

その瞬間。初めてシェイドの表情に焦りが浮かんだ。エデンがここまで対応してくるとは思っていなかったのだろう。そして――

「後ろががら空きなんだよ!!」

ジエル。高速で背後へ回り込んでいた。シェイドが振り向く。咄嗟に腕を交差し、防御態勢。だが。ジエルの身体から膨大な電気が溢れていた。発電機(ジェネレーター)。限界近くまでエネルギーを溜め込んでいる。

「吹っ飛べぇ!!」

強烈な蹴り。シェイドのガードごと叩き込まれる。

「――ッ!」

衝撃。シェイドの身体が吹き飛んだ。客席側へ一直線。座席を何列も破壊しながら転がっていく。ジエルはそのまま追撃しようと踏み込む。だが。その時だった。


弾力膜バウンダー


静かな少女の声。

ジエルの前方に半透明の膜が出現した。

「!?」

次の瞬間。ジエルの攻撃が弾かれる。

「うおっ!?」

まるで巨大なゴムにぶつかったような感覚。逆方向へ吹き飛ばされる。

「ジエル!」

エデンが叫ぶ。着地したジエルはすぐ前を見る。そこに立っていたのは――白髪の少女。白を基調とした服。銀色のブローチ。静かな目。

「ルノ……」

シェイドが少し驚いたように言う。

「どうして来た」

ルノは静かに答える。

「心配になって……」

その言葉。その時のシェイドの表情を見て、ジエルは少しだけ違和感を覚えた。

(……なんだ?)

今の顔。怪盗仲間を見る目というより――。もっと別の。守る相手を見るような顔だった。一方、エデンはルノを警戒していた。

「今のは……また違う能力?」弾力膜バウンダー。明らかにラベジニウムの能力。

(……二人とも能力者なのか)

予想以上に厄介だった。シェイドはゆっくり立ち上がる。服には多少ダメージが入っていた。だが、まだ動ける。

「それでは……」

少しだけ焦ったように笑う。

「私達は、おさらばしよう」

そのままルノの方へ歩く。エデンが止めようと一歩踏み出す。だが。シェイドがこちらを振り返った。

「一つ、いいことを教えてあげよう」

その目が細くなる。

「おそらくだが――予告状を知る人間は、警察以外にはいない……」


「……?」

エデンが眉をひそめる。そして次の瞬間。シェイドとルノは、シアター奥の通路へ消えていった。

「待て!!」

ジエルが追いかける。

だが、既に姿はない。静まり返るシアター。壊れた座席。床に散らばる金貨。ジエルは舌打ちした。

「……予告状は警察以外知らない?」

苛立ちながら言う。

「そんなん当たり前だろ……」

確かにそうだ。怪盗の予告状が一般客へ公開されていたら、そもそも旅行は中止になっている。乗客だって避難しているはず。

「怪盗がいることだって、誰も知らねぇだろうよ」

その瞬間。エデンの表情が変わった。

「……!」

頭の中で、何かが繋がる。エデンはゆっくり口を開く。

「ジエル……」

その声は真剣だった。

「もしかしたら犯人は、あの怪盗じゃないかもしれない……」

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